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第34話 不適合者

次回ミカエル過去編最終回です。

 


 王都に帰って来た俺たちは、新王の即位式の準備をしていた。

 即位式では、前王のフレデリカ陛下から魔術の譲渡が行われる。


 この国の始まりの王「ポアーン・ダヌ」が残した魔術をフレデリカ陛下から賜る。

 その魔術そのものが王たる証であり、冠の様な物であるそうだ。

 王の魔術は多岐に渡るが、主だって特殊なものは「治癒」に関わる事だ。

 外敵がいなく、内政も安定しているので、政治的な課題は無く、王の仕事いえば『治療、治癒』がメインだった。そしてこの魔術の使用に莫大な魔力を消費する為、世襲でなく巨大な魔力量を持ってる人物を王選の儀で選び、10年という期限付きで王座に付いてもらうというシステムなのだ。


 事件は即位式で起こった。


 即位式は国を挙げての大イベントだ。

 前王となるフレデリカ陛下の退任式も兼ねている為、大々的に行われる、通常ならば。

 しかし今回は王選でヴァーロスの起こした事件があり、大量の死傷者を出した。

 喪に服すという意味で、今回は関係者のみで行われる事になったのだ。


 即位式では俺とフレデリカ陛下が王選の儀で取ってきた大きい赤い魔石に手を置いて、魔術の譲渡が行われる。

 どういう仕組みかわからないけど、魔石にはポアーン・ダヌの魔術を媒介に出来る力がある様だ。


 フレデリカ陛下がまず、魔石に魔力を込める。

 うっすら白いオーラが身体を包み、次第に魔石に吸い込まれていく。

 魔石は淡い優しい光を放ち辺りを照らす。部屋は幻想的な雰囲気に包まれ、まるでエルフの王様や妖精王の祝福を受けている様だった。


 ……本来ならば、俺にオーラが流れ込み、魔術の譲渡が完了するはずだったが、いくら時間が経っても俺に魔術は移らなかった。


 魔力を失い朦朧とするフレデリカ陛下が限界を迎え、即位式は中止になった。

 この事件は小規模の式だった為に、外には漏れずに済んだのだ。


 急遽、評議会メンバーや歴代の王が集められ、会議が行われた。

 この様な事態は300年間起こった事がなく、全くの想定外だったのだ。


 議題となった事はまず、魔石に移された魔術はいつまで掛留しているか分からない。今まではすぐ譲渡が完了していたからだ。

 魔術がいつ霧散してしまうか分からない危機的な状況は今も続いている。


 そして、俺に魔術が譲渡できない理由についてだ。

 考えられる理由は2つあって、魔石に問題があるか、俺に問題があるかだった。


 以上の主だった課題をクリアする為に、早急にエリザベッタに魔石から魔術を移譲するべきだという事で話がまとまったのだ。

 エリザベッタは王選の儀で暫定2位、魔力量も申し分ない。


 儀式は早晩に行われた。評議会のメンバーが魔石を中心に円形に取り囲み、エリザベッタは魔石に対峙する。

 真紅の魔石は光り輝くベールを纏い、神秘的な輝きを見せている。

 エリザベッタが手を近づけると、光の帯が古代ルーン文字に変化してエリザベッタの手を螺旋状に登っていった。

 俺の時はこんな事が起きなかったのに。

 やがて光は全身を包み、エリザベッタの身体に古代ルーン文字を写していく。

 エリザベッタの黒い髪がふわりと、春風にそよぐように舞い上がり、光は落ち着き線香花火の様に消えていった。


 無事にエリザベッタに魔術の譲渡が行われた。

 どうやら俺に問題がある事がほぼ確定的になった様だ。


 その後、俺とエリザベッタ、そして評議会メンバーと話し合いが持たれ、エリザベッタが正式な王として即位する事が確認された。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「それでミカエルには何か問題があったの?」

 シグヴァールは不思議そうに聞いた。


 今日も天気はよく、ジリジリとした日差しが容赦なく降り注ぐ。

 旅路はもうすでにミッドナスマインの地域に入っており、これから少しずつ標高が上がっていく。

 順調に行けばあと2日くらいでミッドナスマインに着くそうだ。


「それが俺にもよく分からにゃい。 エリザベッタが王になった事で皆、不適合であった事には触れなくなったにゃ」


「ふーん。一体何だったんだろうね? なんか悲しい気持ちになりそう」


「実はそうでも無いにゃ。もともと王には何の執着はないにゃん」


「そっか。王が即位後もエリザベッタさんとは一緒にいたの?」


「俺は王の側近としてエリザベッタに使える事になったにゃ。それが俺の望みでもあり、エリザベッタの望みでもあったにゃあ」


「側近ってどんな事をしてるの?」


「王の仕事は、治癒治療が主な仕事というのはしってるにゃ? 王が見れる患者は限られているし、遠いところにいる人は助ける事が出来ないにゃあ。それで護符という名の治癒の魔法陣に魔力を込めたり、魔石を加工して治療のスクロールを作ったり、エリザベッタの魔力を回復させるのが仕事だったにゃ」


「あー、あの修道院で売ってる護符や巻物はヘリオスが作っていたのね?」


「そうだにゃん!!」

 俺は尻尾をあげてシグヴァールの顔を撫でる。

 何故か誇らしい気分だ。


 シグヴァールは俺の背中を撫でながら

「エリザベッタさんを襲った事件ってミカエルは関係あるの?」


 

 

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