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第31話 ヴァーロスの野望

ちょっと忙しくて短めの投稿になります。

来週も頑張って投稿する予定です。

 

 ムラヤニドの血が剣を伝って床に滴り落ちる。


「……な、にを……」


 ムラヤニドも事態が分かっていないらしく、困惑と混乱が混じり苦悶の表情をしているが、ヴァーロスが剣を引き抜くと大量の血が吹き出して膝から崩れ落ちた。

 吹き出した血が黒い女神像にかかり血の涙を流している様に見える。


 俺たちは何を見ているのか分からず、ただただ唖然としていた。


 ムラヤニドは言葉を搾り出そうとしていたが声が出ず、悲しい表情を浮かべやがて息絶えた。


「一体どうゆうつもりかしら?」

 フレデリカ女王が声を上げる。


「……これは我々にとって必要な儀式」

 ヴァーロスはそう言って女神像に魔力を流し込む。

 女神像の黒い表面に赤いルーン文字が浮かび上がり、歪な音をたて始める。


「この女神像にはレッサードラゴンの卵が封じ込められていて、数ヶ月に渡り魔力を取り込み続けたのだ。諸君、何が生まれると思う?」


『ビギィバギィぃぃ』

 女神像から魔力が溢れ始め、崩壊して行く。

 鈍色の光の中から、緋色の鱗を持つ大きな手が覗く。

 やがて卵の殻を壊して生まれるトカゲの様に、赤龍の全身が現れた。


「フハハハ……どうやら成功した様だな」

 ヴァーロスはそう言いながら赤龍の足元に転がる女神像のかけらの黒い魔石をムラヤニドの死体にねじ込んだ。


「蘇れムラヤニド!!」

 ヴァーロスが魔力を込めると、ムラヤニドは青白い顔をあげむくりと起き上がった。

「お前は赤龍の母だ、赤龍を操って見せよ」


「な、蘇生魔法!?」

 俺が驚いて声を上げると


「あれは死体を魔導兵にしただけさ。やる事がえげつないねぇ」

 アン校長が教えてくれた。


 ムラヤニドが近づくと赤龍は匂いを嗅ぐように首筋に顔を近づけた。

 足元の黒い魔石を拾い上げると、赤龍の口に押し込んだ。

 まるでナッツを食べる様にボリボリと噛み砕くと、大きくのけ反り火の息を空に向かって放った。


「フフ……もっと食べたいのね。可愛い子」

 ムラヤニドはボソボソと言いながら、さらに足元の魔石を食べさせる。

「グルルルゥ……」

 赤龍は喉を鳴らして美味しそうに魔石を飲み込む。

「良い子ね、いっぱい食べて大きくなりなさい」

 ムラヤニドは自分の顔の3倍はある赤龍の顔を撫でて頬擦りしている。


「……狂ってるわ」

 フレデリカ女王が言い捨てるとヴァーロスは

「お褒めの言葉を頂き光栄です陛下。しかし私はこの箱庭を壊すために入念に準備をして来たのです」


「箱庭? 一体何のこと?」


「フフフ、もう知る必要はありませんよ。あなた達は今日死ぬのですから!!」

 ヴァーロスがそう言うとまた地面から骸骨兵が這い出して来る。

 俺たちが薙ぎ払ってる隙に、ヴァーロスとムラヤニドは赤龍の背中に乗り飛び立った。


「追うぞ!!」と俺が言うのと同時に

 フレデリカ女王が「ここは任せて追いなさい!」と叫んだ。


 俺は頷き、魔力を練り大鷲を作ると、エリザベッタが真剣な表情で「私も行く!!」と言った。


 大鷲は勢いよく飛び立ち大きく旋回して俺たちの元に滑空した。

 俺とエリザベッタは上手いこと足に捕まり、赤龍の後を追った。


 さすがに大鷲とはいえ、2人を運ぶとなると速度は遅く、俺たちが街にたどり着いた時はあちらこちらに火の手が上がっていた。

 どうやら、魔力の高い人間を食べて赤龍をより強力にするのが目的らしく、崩壊した家屋と戦闘の跡が散見できる。

 またヴァーロスの骸骨兵が街の人を襲っていて、街は阿鼻叫喚につつまれていた。


 街では冒険者やハンター達が骸骨兵と戦っていたが、梨の礫だ。

 倒れた人々がゾンビとして復活してまた人々を襲い始める。


 早くヴァーロスを止めなければ被害は拡大して行く。

 俺たちは数百メートル先に暴れる赤龍の姿を発見した。


 


 

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