第3話 魔物討伐計画
ミカエルが喋る練習をしてるところを想像してたらニヤニヤしてしまいます
数週間ほど経過した。
あれから少しわかった事がある。ホードゥはご主人様に惚れていて、求婚をしているらしい。
ご主人様は魔術学校に行きたいので、求婚を断っている。魔術学校に行く事はお父さんに猛烈に反対され喧嘩中だそうだ。ご主人は母方の叔父さんであるハインを頼って仕事を手伝っている。
この街は国の設立に関わった4人の男爵が地主となって街を切り盛りしてるらしい。四家はそれぞれロースクッド家、ハルホスニ家、アリゲッツ家、アールクラン家といい300年もこの街を統治している。
特にどこが偉いとかではないらしい。
俺はご主人の昼の巡回について行くことが多く、他の家の農夫やハンターと会う事もある。ご主人はどこに行っても人気者だ。そこで情報交換や噂話の盗み聞きをしてる訳だ。
もっとも俺が人の言葉を解ってるとは思っていないが。でもみんな「ミカエルちゃんこんにちわ〜」なんて話しかけてくれる。
三毛猫のオスだという事も有名らしい。
そのうち俺を狙った誘拐犯が来るかもしれない。返り討ちにしてやるがな。
そして、確信は持てないのだが俺の転生前と同じ国にいるような気がする。
文字や言葉が同じだという事もあるが、前世で住んでいた王都のはるか東に天より与えられた湧き水の街があるとかなんとか聞いた事がある。
転生が一体どうゆう仕組みになっているのか見当がつかない。なんせ初めての体験だ。
あと、少しだけ魔術の練習や、喋る練習をしている。
魔術というのは自分の系統以外も詠唱すれば簡単な魔術を使えたりする。相変わらず魔力量は少ないが、もし詠唱できる様になれば何かと便利なはずだ。
俺の属性は前世と変わらず「妖術」がメインで「闇術」も使える。
「妖術」は蜃気楼を作って自分の分身を見せたり、相手の攻撃を反射する防壁を自分の前に作ったりすることが出来る。
「闇術」は主に暗黒物質をいろいろな形状に変える事ができる。俺の魔法爪も闇の剣という魔法の応用だ。
前世の俺は国内でも1〜2位を争う魔力量を持つ魔術師だった。しかし得意な魔術は巨大な火の玉とか全てを凍らせる冷気とかでなく、地味な魔術ばかりだった。
しかし圧倒的魔力量と戦闘の強さで誰にも負ける事がなかった。
そう、死ぬまでは。
この猫の身体は魔力が少ない。体の成長によって少し増えていく気がするが付け焼き刃だ。
しかし魔術を使う必要はあるのだろうか? このままイエネコというのも悪くない気がしてきた。
母猫達の安否は気になるところだが、街に入る方法は限られている。
しばらくはご主人様と一緒にいるのが1番だろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夕方頃にまたホードゥが訪ねてきた。今度は叔父さんもいる。とりあえず「シャアアアア」はしておいた。
街での魔物討伐を行うらしい。街の警備隊長であるご主人様のお父さんと合同で行うらしい。なのでご主人様と叔父さんのハインにも参加してほしいそうだ。
他の同僚達や他の地主所属のハンターにも声をかけるそうだ。本来の仕事ではないので、強制参加ではなく任意の有志で行いたいとの事だ。
「いかがですか?」とホードゥが尋ねる
ハインは「もちろん参加させてもらいます」と二つ返事で了承した。
一方ご主人様は「すまないが不参加でお願いしたい、あまり父と顔を合わせたくないのだよ」と言って断った。
ホードゥは残念そうにしている。ご主人様に良いところを見せたかったんだろう。可哀想に、ご愁傷様、さあ用が済んだら早く帰ってくれたまえ。
「……了解した、決行は3日後の満月の夜。魔物が最も活発になる日だ。街の端から魔物を追い込み中央広場で一挙に討伐する予定だ。出発時には声をかけるので準備のほうはよろしく頼む」そう言ってホードゥは椅子から立ち上がる。
「本当に申し訳ないが、戦力は叔父さんと父がいれば全く問題ないはずだ。私は農地の見回りでもしておくよ」
そう言ってご主人様はホードゥを見送った。
「さてゴハンにしようか」そう言ってご主人様はホードゥの持ってきた鴨肉の燻製を持ち上げた。
賛成だにゃ。俺は西陽があたる暖かい窓辺から起きあがって「ニャ」と短く鳴いた。
今は仲夏で日が長い。そろそろ夏至だろうか。ケラがジジジジと鳴いている。ふうっと心地よい風が部屋を撫でた。
ご主人様が暖かな笑みを浮かべこちらを見ていた。
幸せとはこういう事を言うのだろうか?
作品を読んでいただいてありがとうございます。
・ブックマークへの追加
・画面下の「☆☆☆☆☆」からポイント評価
などをしていただけたら励みになります
よろしくお願いします