第27話 王選の儀3
ロビン・シベリスク、かつてエリザベッタと魔術戦実習で争い醜態を晒した女だ。
異様なまでの嫉妬と固執で、当時の俺は負の感情にあてられてしまった。
魔法陣から出てきたロビンは眼光鋭く、こちらを睨みつけた。
しかし、以前の様な禍々しさは無く、むしろ精悍さを感じるほどだ。
「ここであなたと戦えば良いということかしら?」
ロビンは杖を俺に向ける。
「さあ?」
俺は首を傾げる。
そんなの知ってるわけないだろう。
ジリジリとした闘志がぶつかる。
俺は右足をロビンの方に一歩出し、左手に魔力を溜めた。
その時、暗闇の奥から鳥の鳴き声が聞こえた
「カカカカ、カカカカ……」
と威嚇する様な鳴き声だ。
二本の足でノソノソと、頭を回しながら嘴の赤い大きな鳥が近づいてくる。
見た目は文鳥のように可愛らしいが、全長は2メートルぐらいあり、明らかな敵意をこちらに向けている。
どうやら、魔獣を討伐して、ライバルを拘束するか戦闘不能にしなくてはいけないらしい。
前者だけなら容易いが、後者は難易度が高い。
殺してはいけないルールがあるので、同じ程度の実力者を無力化するのは骨が折れる。
では、先に簡単なミッション、魔鳥の方から始末しようと思うと、ロビンも同じ事を考えていたらしく土槍が発射された。
魔鳥に向けて鋭い金属槍が十数本、風切音を纏って飛んでいった。
ついでに俺の方まで槍が飛んできて、大きくのけぞった。
「あ、あぶねえ……」
魔鳥が左の羽を一振りすると、紫色のルーン文字が空中に浮かび、槍が止まった。
返す刀の様に、右の羽を振ると、光り輝く羽根が俺たちに向かい飛んでくる。
直線的な動きではなく、予想できない軌道を描く。
俺は闇術の壁を創り防御した。
ロビンも土壁で迎撃した。
防御壁に刺さった輝く羽根を観察すると、魔術で作った羽根の様で何かしらの特殊効果が付与されていそうだ。
直撃すると危ない。
ロビンは金属槍を発射し続けながら、走って距離を詰める。
速い!ロビンは身体も相当鍛えてきたようだ。
俺も負けてられない。
俺は聖術を詠唱して身体強化を使い、ロビンと逆サイドに走る。
魔鳥は両方の羽根を羽ばたかせて、さっきより多くの羽を飛ばす。
俺に飛んでくる羽は全て闇の壁で絡め取っていく。
左手で妖術の魔力を練り、『大蜘蛛』を作り出した。
蜘蛛に糸を吐かせ、絡め取る計を巡らす。
ロビンは土術でゴーレムを作り出した。
「行け!! アンドロマケー」
全身がダイヤモンドの様な素材で、両手は鋭い刃物になっている。
ゴーレムは真っ直ぐに魔鳥に向かって突進していく!
以前のゴーレムよりも運動性能も向上しており、油断ならない。
アンドロマケーと呼ばれるゴーレムは錐揉み状に飛び上がって、左手を魔鳥に叩きつける。
魔鳥は羽でそれを払いのける。
ゴーレムは追撃に両手で切り付けるが、羽には傷がつかない。
何かしらの仕掛けがあるのだろうか?
魔鳥も反撃に出る!
嘴でゴーレムを摘むと、輝く羽根をゴーレムに突き刺す。
ゴーレムはダランと力が抜けた様にうなだれる。
どうやら、魔力を吸収する効果が付与されてるみたいだ。
ロビンはすかさず魔鳥の上に巨大な岩石を生成して落とす。
魔鳥に高い魔法防御があったとしても、質量で押し潰すつもりらしい。
魔鳥は一瞬凹んだが、岩を払いのけ大きい声で鳴いた!!
「ギェエエエエエ」
空気が震えてフロア全体が地震でも起きたみたいだった。
「……やかましい!」
バスン!!!
魔鳥の首が落ちた。
俺のエクスカリバーで一撃だった。
ロビンが目を大きく見開いてさせて驚いているが、こちらの方も既に詰みだ。
俺が蜘蛛の糸に結びつけた魔鳥の羽根がロビンの足に刺さったのだ。
左右に2本ずつふくらはぎに刺さった羽根はあっという間に魔力を吸い取った。
ロビンは力無くその場に座り込んでしまった。
俺はロビンが巨大な岩を生成してる時に、蜘蛛を使ってロビンの足元に絡め取った魔鳥の羽を仕込んだのだ。
そして魔鳥が咆哮の雄叫びを上げてる時に、聖術の詠唱をしてエクスカリバーを放ったのだった。
どうやら魔鳥には魔力を固定する妖術の防壁が張ってあり、魔力で生成したものは貫通できない性能だった様だ。
だが聖術のエクスカリバーは『1回だけどんなものも真っ二つにする』というチート性能。
妖術に対してもレジスト効果もあり特効だった。
蜘蛛はロビンの動きを封じるために作った妖術の魔導兵だ。
最初は隙を見て糸を絡めるくらいにしか思って無かったが、魔鳥の羽が魔力を吸収する力があるようだったので利用させてもらった。
こう上手く行くとは思わなかったので、中々良い気分だ。
ロビンを蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにして、俺は先に進む。
今回登場した魔獣は
ブラッディーフィンチ
ガラパゴスにいるらしい吸血鳥がモデルです。
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