第25話 王選の儀1
魔術の基本設定がようやく登場させれました。
ハンデルの朝は心地いい朝の光と共に訪れた。
シグヴァールも昨日よりもスッキリした顔に見える。
俺たちは今日から鉱山都市ミッドナスマインを目指して街道を南下する予定だ。
大森林を左手に王の台地に沿って街道が整備されている。
ミッドナスマインはこの国で一番の大都市だ。
シグヴァールの生まれた街だと聞いている。
俺もしばらく行って無いが、王選の儀が行われた思い出の地でもある。
宿で朝食を食べ、宿を出る。
もうすでに行商人の馬車や乗り合いの馬車などが街道を走っていて、朝から活気が溢れている。
馬に水を飲ませて、荷物を積んで出発した。
街道をしばらく行き、人の往来が閑散となって来たところで、シグヴァールに昨日の話の続きをねだられた。
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アン・ジェームス先生の授業は基礎魔術から始まった。
魔術、この場合魔法適正と言った方が良いかもしれないが、生まれた時に決まるというのは知っていると思う。
イメージとしては時計の文字盤のように火→土→闇→妖→氷→水→光→聖→火という具合に主に8系統があり、その円の径上のどこに生まれるかで適正が決まると言われている。
つまり俺の場合は闇と妖の間に生まれたという事だ。
この適性は遺伝によることが多く、兄弟などは同じ適正になることが多いという。
昨日見せた魔術変換は、魔力を一度生命エネルギーに戻してから任意の魔力に変えるんだ。
その際使う呪文の様な変換式をルーン文字にして魔石に詰めたのが魔道具というわけだ。
魔術の変換から、基礎的な魔術の威力の高め方や魔法陣の書き方、それから魔術を構成する要素などを叩き込まれた。
必要な自然科学や物理学はもちろん心理学や錬金術まで授業内容は非常に面白かった。
およそ3年間に渡ってアン先生の講義を聞くことが出来たのは本当に幸せだった。
そしてアン先生の推薦を受け、俺たちは王選の儀に挑むことになったんだ。
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「私はお父さんが火術でお母さんが光術と水術のダブルだから、その間の聖術の適性がついたのね?」
シグヴァールは馬の上から綿毛ほどの魔力を放ってる。
だいぶ上手になって来た様だ。
「そうだと思うにゃん。もちろん例外は存在してるけど、火聖光水のどれかの適性の可能性が一番高いはずだにゃん。あと、ハイン叔父さんとシグヴァールのお母さんは同じ適性のはずだにゃん」
「そっか。じゃあ叔父さんの雷術はどうゆう仕組み? 基礎適正に無いと思うんだけど?」
「……多分だけど。水術で雲を作って、その中に光の粒子を高速で動かすことで雷を発生させてると思うにゃん。 自然の雷と同じ環境を擬似的に作ってるんじゃにゃいかな?」
「なるほどね。叔父さんも自然科学の知識があったのね。お母さんが魔道具の職人になったのも魔力変換の知識があったからなのね」
「ところでお母さんが亡くなったのって、シグヴァールが何歳の時だにゃん?」
「私が9歳の時だったと思う。……実はミッドナスマインでスタンピード が起きて、私を庇ってお母さんは……レッドドラゴンに……」
水をあげてない草みたいに元気がなくなってしまった。
「そ、そうだったにゃん。……あのにゃ、王選の儀と関係があるかもしれない。」
「王選の儀と関係?」
シグヴァールはおうむ返しする。
「王選の儀はミッドナスマインで行われたにゃん」
「スタンピード が起きた時と王選の儀が行われた時期が一緒って事?」
「……多分」
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俺たちはミッドナスマインに王選の儀を受けるために来ていた。
ミッドナスマインにある鉱山の一つに、王になる為に必要な魔石を封印してあり、それを早く取ってきた者が次の王となる。
鉱山には現在の王様であるシャーロット・フレデリク陛下が作った転移魔法陣が至る所にあり、参加者はゴールの魔石からの距離が一定となるところに転移してからのスタートとなる。
中には魔獣や様々なトラップなどが仕込まれており、高難易度のダンジョンといったところだ。
参加者には、元クラスメイトのロビン・シベリスクや、担任だったヴァーロス・ハブビルやムラヤニド・ビタールの姿もあった。
その他何人かは魔術学校の生徒であったり、王宮に勤めている魔術の専門家などがいる。
まさにこの国の魔術師の頂点を決める戦いだ。
ルールは単純でどんな手段でも良いので一番に魔石を持ち帰った者が、勝ち。
参加者への攻撃は認められているが、死亡させたら失格である。
また動けないほどのダメージを負った場合も強制的に失格となる。
フレデリク陛下の側近部隊が救出に向かう事になっている。
そして、この試験の最中に魔獣暴走が起きたんだ。
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