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第23話 アン・ジェームス

ブックマークが増えると密かに嬉しい。

毎週土曜日15時に投下継続してます。

 

 俺たちは学校長の部屋に呼び出されていた。


 学校長のアン・ジェームスは年齢は不明だがいかにも魔法使いという様な風貌をしていた。

 頭には三角帽子を被り黒いガウンを羽織っている。

 青紫色のアイシャドウに真っ赤な口紅、目元と口元には隠しきれない皺が刻まれている。


 俺たちが部屋に入った時は、老眼鏡をかけて何かの書類を読んでいた。

 顎を引き老眼鏡の上から覗き込む様に俺たちの姿を確認すると

「来たね、こっちに来い」

 と、老眼鏡を外しながら手招きした。


 机の前に並んで立つと、アン先生は『ニカっ』と笑い

「エリザベッタ、派手に暴れたらしいね?」


「はい、すいません」

 とエリザベッタが言うと


「別に怒ってる訳じゃないよ。この学校じゃ魔術がすごい奴が正義だ」


「は、はあ」

 エリザベッタは苦笑している


「あんたはブルって使い物にならなかったらしいね」

 アン先生は俺を見てそう言った。


「別にブルってた訳じゃない、ただちょっと気分が悪くて……」


「ふん、おなじことだよ。情けないねぇ」

 アン先生は俺を睨みつけながらそう言った。


「ぐぬぬ」

 俺は返す言葉が無かった。


「2人をあの教室に置いておく訳にはいかないね」


「え、俺たちはクビですか?」


「焦るんじゃないよ。話は最後まで聞くもんだ」

 アン先生は話しを続けた。

「ヘリオスは妖術に適性が有ったはずだね? だけどほとんど使えていないと聞いてるが本当かい?」


「はい、何かイメージが湧かなくて。ほかに使える術者もいないし」


「魔術はイメージが大事なのはその通りさ。あとは物理法則を知ること、そしてそれを超越する創造性を持つことだ」


「はあ」


「なんだい、気のない返事だね。例えばこんなのはどうだい?」

 そう言って何やらブツブツ呪文の様なものを唱え始める。

 するとアン先生の手から紫色のオーラが放出され、凝縮されていく。

 集まったオーラは人型に形成され、やがて中から銀色のフサフサの尻尾と耳を持った狐の獣人が誕生した。


「な、かわいい!!」

 エリザベッタが興奮していると、狐の獣人は歩き出し俺たちの横を通り過ぎていく。

 そして本棚まで行くと一冊の本を手に取り、戻ってきてアン先生に手渡した。


「よしよし、良い子だね」

 そう言って頭を撫でると、煙になって消えた。


「すごい! アン先生、妖術が使えるの?」

 エリザベッタが嬉しそうに問いかけると


「さあ、それはどうかね? 次はこんなのはどうだい?」

 アン先生はまたブツブツと呪文を唱えると、今度は薄い水色のオーラが出現した。

 またオーラが収縮していくと、今度は手のひらサイズの可愛い精霊が生まれた。


 精霊は俺たちの周りを飛び回ると、ひんやりした空気が流れ、やがて凍った空気がキラキラと光って部屋が凍りついていく。


 またブツブツと呪文を唱えると、オレンジ色のオーラが凝縮して炎に包まれた狼が生まれた。

 狼がひと吠えすると、氷は砕け元の部屋に戻った。


 それから精霊も狼も煙の様に消えたのだった。


 俺もエリザベッタも目玉が落ちるんじゃないかと言うくらい驚いた。


「せ、先生は一体いくつの魔法に適性があるの?」

 エリザベッタは身を乗り出して聞くと


「私の適性は一つだけだよ。これは魔力を変換したんだよ」

 アン先生はそう答えた。


「魔力を変換?」

 俺がおうむ返しに聞く


「そうさヘリオス。これが本当の魔術さ」


「適性がない属性魔法も使えるってこと?」


「ああ、もちろんだ」


「俺にも使えるのかい?」


「訓練をすれば出来る。習ってみたいかい?」


「もちろん!」

「是非!」

 俺とエリザベッタの声が部屋に響いた。


 アン先生はニヤけながらこう言った。

「ふふふ、そうかい。でも条件がある」


 俺はこの時のアン先生の顔を忘れられない。

 なんともうまく表現が出来ないが、とても嬉しそうだった。


「条件ってなんですか?」

 エリザベッタが聞くと


「王選の儀に出る事」

 俺たちに真剣な眼差しを向けた。


「王選の儀?俺たちでも出れるんですか?」


「ああ、出れるよ。王選の儀は出自や家柄で差別はしない。この国を支える王を選ぶんだから当然だ」


「まあ、王様になるとは限らないし、別に良いかな? エリザベッタはどうだい?」


「わたしも問題ないかな。むしろ出てみたいかも?」


「そうかい。じゃあ決まりだよ。2人は明日から私の授業を受ける事、いいね?」




 こうして、俺たちはアン先生の生徒になったんだ。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「すごい展開ね。それでアン先生に魔術を教えてもらう事になったのね」


「そうだにゃ。魔術の深淵に近づくことができたにゃあ」


「その……魔力変換というのはミカエルも出来るの?」


「ああ、この体になって試したことは無いけど、たぶん。ちょっとやってみようか」


 俺はそう言って魔力を練り始める。

「ウーラン ソム ハー トーギィ トリ スティグ オーメン ソム ルーラー ポクフェーラン

 ダン ヒーリギャ ナブ エルミ モット」

 ゆっくりと噛み締める様に呪文を唱えると乳白色のオーラが俺の体を包み込み、次第に凝縮して一本の剣を作り出した。


 俺が手を大きく振ると剣は街道沿いの岩に真っ直ぐに飛んで行き、バターを切るみたいに真っ二つになった。


「す、すごい。もしかして聖術?」


「コープって奴が使ってた『エクスカリバー』って聖術だにゃ」


「……私も使える様になるかな?」


「そうだにゃ、同じじゃなくてもいいから魔力を凝縮して形成したものを投げられると良いと思うにゃあ」


 そんな話をしていると、大きい街が見えてきた。

 街道沿いの右側の丘に赤茶色のレンガの屋根が並んで見える。

 太陽は台地の山脈に隠れ、オレンジ色の夕焼けが放射状に空に広がりを見せ、街に夜の訪れを知らせていた。


 俺たちは予定通り、交易都市ハンデルに宿をとった。



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