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第21話 魔術戦実習2

 

 1対4の変則魔術戦が始まった。


 いくらエリザベッタが優秀だからと言って、相手もこの学校に入学する程の実力者。

 ましてやロビンは次期王として期待された逸材だ。

 コープは聖術使いの支援タイプ。ガメゴッキは単純な性格だが、火術を最上位まで使えるメインアタッカー。クンフィスカはロビンの腰巾着の様に振る舞っているが、水術の精錬は学校でもトップレベルだ。

 パーティバランスもよく、普通に戦えば勝ち目は無い。


「本当に1人でいいのかしら? といってもその木偶の坊は役に立たなそうだけど」

 そう言ってロビンは笑った。


 俺は咽きは治ったものの、今だに負の感情に当てられて寒気がして動けないでいた。

 世界は平衡感覚を失って、今にも崩壊しそうだった。


 エリザベッタはそんな俺を横目に準備運動をしながら

「ええ、あなた達なんて私1人で十分よ」

 と言った。


「……そう、安心しなさい。ここではどんな傷でもすぐに治るわ。でも痛覚がある事を後悔させてあげる」

 引き攣った笑みを浮かべながらロビンは凄んで見せた。

 何か禍々しいものに取り憑かれている。そう言われたら信じてしまうような邪悪さを感じた。


 エリザベッタは杖を構える。


 先生が開始を告げると、ロビンチームの一斉攻撃が始まった。


 先制はガメゴッキが「火の鳥」を放つ。

 自動追尾型の火術の最上位魔法だ。 

 巨大な火の鳥はエリザベッタ目掛けて大きく翼を羽ばたかせ飛んでいく。


 エリザベッタがクンと杖を動かすと、岩が大量に生成され火の鳥めがけて飛んでいった。

 火の鳥は岩をもろともせずエリザベッタに向かい飛んでくるが、大量の岩石が火の鳥を阻み、そのまま包み込んでしまった。

 コープとクンフィスカも動く!

 コープは聖術で聖剣を生成して突撃してくる。

『聖剣エクスカリバー』と名付けられた聖術はどんな物でも一回だけ真っ二つに出来るチート性能の魔法だ。

 当たれば確実にやられる。

 クンフィスカは遠距離から『ウォーターガン』を放つ。

 土術への効果は絶大で、並の土壁なら貫通してしまう。


 まずエリザベッタは複数の壁を生成してウォーターガンをいなす!

 複数の壁に誘導された泥水混じりの水流はコープに進路を誘導され、顔面に直撃した。

 部屋の端まで押し流され、全身泥水だらけになった色男は苦虫を噛み潰したよう様な顔をしてた。


 一方ロビンは何もしてなかった訳ではなかった。

 最上位魔術である自律型土魔導兵、通称『ゴーレム』を生成していた。

 ゴーレムは3メートルくらいの巨体と長い手を持っており、全体的に黒い金属の様な物質で出来ていた。

 自律型の魔術兵は新たな生命を生み出すか如くであり、術式の中に命令を組み込むのだが、命令が複雑なほど魔力の消費が大きい。

 下手な魔術師が使えば、脳への負担と魔力の枯渇で絶命する事もありうるのだ。

 ロビンがゴーレムに組み込んだ命令はおそらく『エリザベッタを殺せ』で間違いない。

 巨体に似合わぬスピードでエリザベッタに襲いかかる。


 エリザベッタは床に手を置いて念じる。

 ゴーレムの足元の床がタイミングよく隆起し、宙に飛ばしてひっくり返す。

 すかさずエリザベッタは剣を精製して、ゴーレムに切りかかる。

 ゴーレムは人ではあり得ない方向に手を動かして、エリザベッタの一撃を防いだが、左手の手首から先が切り落とされた。

 エリザベッタは追撃の体制に入るが、クンフィスカのウオーターガンが飛んで来て剣を吹き飛ばした。


 ゴーレムは体から床に落ちたが、すぐに体勢を立て直す。

 手もあっという間に修復された。

 コープとガメゴッキがゴーレムと並び立つ!

 コープの聖剣はまだ健在だ。ガメゴッキは右手に炎の鞭を持っている。

 クンフィスカは遠距離から隙を窺っている。いつでもウォーターガンでアシストできる様に。


 エリザベッタは囲まれた、もはや絶体絶命の様に見えた。


 前衛3人が襲いかかる。

 エリザベッタは壁を作りつつ後ろに飛び、岩石砲(ストーンキャノン)で迎え撃つ。

 ゴーレムはもろともせず突進してくる。

 ガメゴッキは炎の鞭では防げず距離をとる。

 コープは回避していたがたまらず、聖剣を一度使い防御壁を出して岩石砲(ストーンキャノン)を防いだ。


 2人の足止めに成功したので、一見上手くいった様に見えたが、正面に迫るゴーレムには防戦一方になってしまう。

 エリザベッタは的確にゴーレムの関節や急所を岩石砲(ストーンキャノン)で狙いながら土の壁を作りゴーレムの侵攻を止めていた。

 魔術を生成するスピードや正確性が凄まじく、まるで要塞の様にゴーレムの攻撃を防いでいた。

 ゴーレムは手足が吹っ飛ばせれてもすぐ再生して、胸部の急所への攻撃は防ぎつつ前進を続けた。

 これにはコープやガメゴッキも割り込むことは出来ず、クンフィスカも手出しが出来なかった。


 幾百の応酬の後、ついにゴーレムの一撃がエリザベッタを捉える。

 ゴーレムのパンチは土壁ごとエリザベッタを吹き飛ばした。


 俺にはエリザベッタの口角が僅かに上がった様に見えた。

 彼女は吹き飛ばされながら巨大な岩を作り圧縮していく。

 ドリル状に圧縮され金属光沢を得た岩石が、爆音を発してゴーレムの胸を撃ち抜いた!

 急所の核を破壊されて砂状に崩れ落ちていく。


 やった!!


 俺がそう思った瞬間、エリザベッタの背後に巨大な鎚を持ったロビンの姿が……

 ロビンは何も言わずに鎚を振り抜く。


 エリザベッタは地面に叩きつけられた。


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