第16話 猫の昔話
これから第2章、ミカエル回想編が始まります。
毎週土曜日15時投稿を目指して執筆中です。
神殿に白装束の侵入者が5人突然現れ、護衛はあっという間にやられてしまった。
幾重にも張られた結界も守備兵も何の役には立たなかった。
一体どうやって侵入したのだろうか?
俺は5人を暗黒の牢獄に幽閉し、無数の闇の針で牢獄ごと貫いた。
次の瞬間白装束達がが目の前に現れ、同時に光の矢を放った。
超至近距離の攻撃を魔法障壁で防ぎ、俺は闇の執事を召喚した。
さらに蜃気楼を使い分身させると、16体の実体のあるサーバントが白装束を1人づつ確実に屠って行く。
残りの一体がなりふり構わず、サーバント達を振り切って俺に向かい突撃して来た。
「光の神槍」巨大な光の槍が俺に向かって放たれる。
俺はあらかじめ強制内省を仕込んでいる。
勝った!!
しかし、強制内省は発動せず俺の体を槍は貫いた。
サーバントも全て消えてしまっている。
負けた……
エリザベッタ……逃げてくれ……
〜〜〜〜〜〜
気がつくと俺はシグヴァールと馬の上にいた。
どうやらまどろみの中、あの悪夢を思い出していたようだ。
「ミカエル大丈夫? うなされてたわよ」
「ああ、大丈夫にゃん」
俺たちは、王都『サクラルーメン』までの旅の途中だ。
まずは交易都市『ハンデル』を目指して街道を進んでいる。
ウルズヘルムの街を出てから3日目になるが、街道沿いには小さな宿屋や素泊まりできるロッジのようなものが点在しているため今の所野宿はしないですんでいる。
ハンデルまでの道のりは1週間の予定らしいので、大体半分くらい進んだと考えて良いだろう。
俺はシグヴァールに魔術の使い方を教えたり、自分の魔力の上限値を探ったりしている。
魔力が切れる前にすでに眠くなるようで、さっきはついウトウトしてしまった。
「そろそろ、次の宿のある街に着くはずよ。今日はお風呂に入りたいわね」
「俺はお風呂より、美味しいご飯が食べたいにゃん」
「そうね、次は街道の宿場街だから、ミカエルにも何か良いものがあると良いわね」
「そう願ってるにゃ」
そんな事を話していたら、街に近づいて来たようだ。
大きく穂をつけた麦畑が街道沿いに現れ、たまに大きなサイロも建っている。
季節は夏の盛りだが、若干日が落ちるのも早くなりつつある。日が暮れる前に街に着きたいものだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜
街道沿いにはいくつもの宿屋や酒場が並び、夕方の街は賑わいを見せていた。
俺たちはなるべく中心街の宿屋に部屋を取り、早めに食事をしに街に出たのだ。
1人と1匹の旅は、どこから見ても若い女性の一人旅に見えるので、要らぬトラブルを避ける為に人気の多い所を選んで行動している。
今日は宿の近くのレストランに入った。ごく普通の家庭料理のお店だ。
シグヴァールは豚のステーキと野菜のスープにパンの定食。俺のために追加で麦のミルク粥を頼んでくれた。お店の人も快く受けてくれてありがたい限りだ。
優しい味で悪くない。普段はお粥なんて食べないと思うが、食べようと思えば何でも食べられる。
だが、心は人間で味覚は猫なので、妙に塩っぱく感じたり、旨みの感じ方が人間の頃とは違うのが難点だ。
宿に帰ると、すぐにシグヴァールはお風呂に入り、今はもうベットに横になっている。
俺もベットに登り懐に潜り込んだ。
「ねえ、ミカエル。良かったら人間だった頃のお話ししてくれない?」
「うーん、別に良いけど何が聞きたいにゃん?」
「魔術学校の話も聞きたいけど、女王陛下のお話しも聞きたいかな。幼馴染だったんでしょ?」
「そうだにゃ、話せば長くにゃるから、どこから話せば良いのか」
「じゃあ、ミカエルの生まれた所と、女王陛下との出会いから教えて?」
「わかったにゃ、じゃあ眠くなるまでの子守唄代わりに話すにゃ」
俺は昔話をする、人間だった頃の話を。
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