05.憧れと現実
「したい事…やりたい事…あるかも」
そう私がそっと呟くと、ガーネットがすぐに反応した。
『なんやて!?なんやなんや、何がやりたいんや!』
人間は何にも縛られずに本当に好きなように生きていけると色々とやりたいことが出てくるものなのだ。
でもまずは…
「メ、メイク!かわいいお洋服!キラキラ女の子!」
カタコトになってしまった。
最近は仕事でメイクも出来ていなかったし、オシャレから無縁の生活を送っていた。
だけど本当は、してみたかった。
キラキラ輝く女の子になりたかった。
だけど大学卒業して社会人になってもうアラサー。
そもそも社会人なので髪を染めるにもメイクにもマナーだとかモラルだとかルールがあって、
そうつまり…制限 があるのだ。
子供の頃は『プ〇キュアになりたい!』『プリンセスになりたい!』『アイドルみたいになりたい!』と、みんなそれぞれの夢を語ってたのに
もう周りはそんな話題なんてせずに、結婚、子育て、。
夢を語る事すら出来なくなっていた。
『ええやんええやん♡ギャルメイクしようや!ギャルメイクならウチは教えれるで!ギャルメイクといえばウチやん?ギャルしか勝たん!』とイキイキとしだした。かなり嬉しそうだ。
「いや…ガーネット、ほんとうにごめん、」
あぁ…この状況ではかなり言い難いけど、言うなら早く言わないと…
『どしたんや?さっそくギャルメイクの練習しようや!新しい服も買いに行ってさ』
ガーネットの綺麗な赤色の髪の触覚ぴょこぴょこと動き、うずうずしている様に見える。
「あのね、私がしたいのはギャルメイクじゃないの、なんか、こう、もっと、なんて言うんだろうね、清楚系?みたいな」
ガーネットは私の髪をまるでプ〇キュアの様に青く染めてくれたみたいだし、ギャルメイクもしてくれていて、言いにくかったけど、こういうメイクは時々で満足だ。
確かにプ〇キュアに小さい頃は憧れていたけど、
私がしたいのは清楚系メイク。清楚系王道アイドル!みたいな感じの。
「清楚なさ!無敵坂46の子達みたいな!王道キラキラアイドルみたいな感じの!」私は人差し指をピンと立てて言う。
そう言うとガーネットはボソボソと何か呟いているが、声が小さく何を言っているか分からない。
「ガ、ガーネット?もしかして、怒ってる?」
そりゃそうだよね、ギャルが好きなのに私が清楚系なんて言うから怒っちゃったんだ。
酷い事を言ってしまった…。
「ごめん、ガーネット!ギャ、ギャルメイクでも…」