12.かわいくメイクしたい!
『れみたそ、おまたーっ♡(おまたせの略)』
ガーネットの準備が出来たようだ。今日もとってもギャルである。
ギャルだなあ~てな感じの香水の匂いもする。香水に詳しくないからわからないが....。
「そしたら行こっか」ガチャリとドアノブを捻り、二人で家を出る。
鍵は最近合鍵を作ってもらったので私も持っている。
最寄りの駅に着いた。
『行くで~!待ってろキタァ!』♪ティローン♪
勢い良くガーネットが改札に引っかかる。ICカード残高が不足しているからだ。
『むうう~なんやねんなほんまにぃ~!』
ICカードのIKUDEにチャージをし改札を通る。
やっと電車に乗り込めた。
揺れる電車内、ああ、この感覚久しぶりだ。
元居た世界で職場に向かうときを思い出す。憂鬱な気持ちになる。
真面目に新卒から長い間あの会社では働いていたけれど、本当に毎日が憂鬱だった。
毎日同じ生活。家と職場の行き来。ただそれだけの生活。電車に揺られる通勤時間が本当に嫌いだ。
『おーい、おーい、れみたそ?おーい!』
「わっ!」ぼーっとしていてガーネットに話しかけられていた事に気が付かなかった。
『大丈夫か?暗い顔してるで、心配なるわ、。』
「ううん、大丈夫、元居た世界で電車を使って職場に向かうときのこと思い出しちゃってさ。」
ガーネットは電車の吊り革を掴む私の手を、吊り革から外して、ガーネットの腕を掴ませてくれた。
『そん時とは違う世界や。私がおる。向かう先ももちろん違う。大丈夫やで。』と
落ち着いた口調で話してくれた。
そうだ。あの時とは違う。そもそも世界が違うんだから。
”違う世界に居る”この事実だけで最近は気楽な気持ちになれる。
『ついたでー!梅田!』 大阪の有名なエリア、梅田。私は来るのは初めてだ。
「ビルだらけだ....すごい」あまりの都会さにびっくりする。
『ここにな、ええ店があんね~ん』とガーネットは自信満々だ。
私は道が分からないのでひたすらガーネットについていく。
キラキラな店ばかりでどれも心打たれる。心がときめくってこういうことなんだろうなあ。
移動中そうやって店をジロジロと見ていると、ガーネットが『ええやろ~?あとで見よな~』と自慢げに言った。なんでガーネットが自慢げなんだろうと笑みがこぼれる。
『ほいほいーここやで、着きましたで~!』どうやらこの店がコスメが沢山売っているお店らしい。
「ニャット、、コスメ?」
『そう!ニャットコスメ!プチプラからデパコスまでなんでも揃っておりまーす!ふふーん』
「プチプラ?デパコス?」
『プチプラ言うのはプチプライスの略で値段が安めのコスメのことや。デパコスはデパートコスメの略でデパートで売られてるような高いコスメのこと!』
「べ、勉強になります!」
全然若い子についていけてない.....。頑張らないと。
『お、れみたそちゃーん、お顔に不安なのが出てまっせ~、メイクしていくうちにゆっくり覚えたらええから焦らんでな、ウチもおるしなんも恥ずかしくないからな。みんな最初は一緒。みんな通る道や。』
ガーネットは本当に優しい。こんな上司が欲しかった....って年下の子に思うのはおかしいか笑
ニャットコスメで、店員さんが”タッチアップ”という私の肌に直接コスメを試させてくれるサービスをしてくれたり、私の肌の色を機械で確認し私の肌に合ったコスメを教えてくれたり、まるでコスメの遊園地みたいで楽しかった。店員さんもコスメ初心者の私に親身になってくれてとても嬉しかった。
こうして、店員さんやガーネットのおかげで私は一通りコスメ一式を揃えることができた。
かなりお金がかかったがガーネットが出してくれた。
『ママからもらったお金だから大丈夫!』と強くガーネットに言われそのまま奢られてしまったが申し訳なさすぎる。どうやらガーネットのお母さん...お母さまはお金持ちらしい。
確かに海外出張行くぐらいだからすごい、その、お金持ちなんだろうな..。
私はごく一般的な家庭で育ったのでお金持ちの方の解像度がかなり低い。
申し訳ないけど、転生してきて無一文なので私は本当に支払えない,,。
「いつか絶対返すからね!」
『ほんまにええから!』とれみたそは言い、二人でニャットコスメをあとにする。