01.終わりの始まり
今年、29歳。
今日、新卒で入った会社を辞めた。
理由は1度新しい気持ちになりたかったからだ。
そんな理由で新卒で入った会社を辞めるのか?と思われるかもしれないが、それは私が1番思っている。
だが本当に、1度新しい気持ちになりたいのだ。
周りの友達は
みんな結婚したり、子供が居たり、幸せそうにしている。
だけど私はなんだ?
結婚や子供どころか彼氏も居ない。
私はいつどこで人生の道を間違えたの?なんて嘆いていると『れみちゃんは間違えてなんかないよ!』と周りは言うが、完全に間違えてる。
交際経験が無いわけではないが
『真面目すぎる』という理由で毎回振られる。
真面目ってなんだよ。
真っ当に生きてるだけなんですけど。
「周りはもう、、旦那がいるのに、、子供がいるのに、、私は、、。」
そんなことを考えながら午後10時すぎ、ぼんやりと歩いていると、気がつくと全然知らない道を歩いていた。
人生の道どころかリアルに道を間違えてるじゃねえか。
咄嗟に「どこだよ、ここ!」と大きな声を出してしまって
焦って周りを見渡すが
飲み屋街のようで、ガヤガヤとしていて私の声はかき消された。
「とりあえず地図!スマホ、スマホ、」とカバンの中を漁っていると
『もしも~し、お姉さぁん?』と陽気な声が聞こえた。
急いで顔をガバッと上げると、金髪で目がチカチカするような格好した居酒屋のキャッチだった。
『お姉さん、居酒屋どうすか?安いっすよ』とペラペラと話しかけてくる。
「いや、大丈夫です、」と断っているのに
『いやでも、美味いっすよ!』としつこいキャッチにイライラする。
ついでに言うと
キャッチのお兄さんの胸元に付いてる名札の名前が
元カレと同じ名前なのも無性に腹が立つ。
「いやほんとに大丈夫です、」居酒屋街を走り抜ける。
「走ったの久しぶりかもしれない」
少し走ると知らない街の知らない神社の前まで来ていた。
「はぁ~、走った、走った、つかれた、」と首をぐるりと1周回す。
疲れに効く運動ってこの間テレビでやっていた。
ぐるり、ぐるり、と回していると
夜空にきらきらと光るものが見えた。
「宝石…?」
よく見るとゆっくり下に落ちてきている。
真下まで近ずいて手を伸ばすと
すーーっと落ちてきて上手く手のひらにポトンと乗っかった。
綺麗な赤色をした1粒の宝石だ。
「な…なにこれ?赤いし、ガーネット?」と呟くと
「ガーネットとか気安く名前呼ばんといて!あ、声出してもうたやんか、」と甲高い声が聞こえた。
『ふぇ!?何、何何何、!?どこから!?』とキョロキョロしながら慌てていると
「ここやわ!どこ見とんねん!え、アンタめっちゃ可愛いなあ」と手の中の宝石が小刻みに震え始めた。
『え、宝石?宝石が喋ってる?どういう事なの!?』と動揺していると
『いやもう、そんなことはええから、とりあえずうちと一緒に行こや?とりあえず行こ!』と宝石が光り始めた。
「いや、え、、、は???行くってどこに行くの?」と尋ねると
『ん~、、、えっと、』とゴモゴモし、宝石の光も弱くなる。
数秒経って、
『あ、そう!ウチ、今、めちゃくちゃ困ってるねん。助けて欲しいねん。つらい。やばい。無理。まじやばい!』
と手の中で宝石がコロコロと転がり始めた。
『着いてきてくれやな困るねん!うち、、、ほんまに、、あれや、殺されてまう!ほんまお願いやん!一生のお願いや!殺される!』と手の中で宝石が駄々を捏ね始める。
「こ、殺される!?殺されるなんて大変!!どこに行けばいいの?一緒に行くよ!」
困っている人を見たら、助けないと!と感じて焦ってしまって、
すぐに何も考えずに行動してしまう。
私の良くない癖のひとつだ。
『ほんまに!来てくれるん!?ありがとう!めちゃくちゃ嬉しいわ、それやったら、着いてきてな、行くでえ~』と
宝石がチカチカと凄い光で光り始めた。
「眩しい!!!前が見えない、、何、、、、あぁぁあっ、!!!」
頭の中で小さく聞こえる。
『おーい!おーい!なあってば!』
体が揺れる。ゆらゆらと、。
ゆらゆら、揺れる、
ゆらゆら、揺らされてる、、
ん、、揺らされてる!?
『起きてや!!!』
パッと目を覚ますと
ガシガシと掴まれて
ベットの上で体を揺さぶられていた。
「わっ!!!何!!え!ここは…どこ…!?!?は!?!?」
慌てて周りを見渡すと
知らない部屋…
見るからにギャルの部屋…
目の前に居るのは赤髪のギャル…
赤髪ギャルが布団の上でニヤニヤしている。
『やっと起きたか~!ここはな、コホン、、、アンタの為に出来た世界やで』