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5 手術はまだ終わらない

毎日二話更新。こちら一回目です。

 熱は下がった。痛みもずいぶん弱まった。眠れるのだから段違いだ。……しかし、弱まっただけで無くなったわけではない。手術したばかりだったというのはもちろんある。だけど理由はもう一つあった。


 皮が足りていないのである。切断手術で悪くなった部分を除去したわけだが。その時に無事な皮をのこしてそれで傷口を覆ったのだという。だけど、すべての部分を包めたわけではなかった。むき出しの部分が痛みを主張していたのだ。


 足りないのなら、別の部分から持ってくればいい。医者の先生から説明された方法は、腹から少しばかり切り取って傷口に移植するというものだった。火傷などの治療でよく聞く方法だ。


 移植手術まではしばらくかかった。傷の状態が移植可能になるまで待たなければならなかった。前よりは楽ではあったが、やはり痛みは継続していた。皮膚移植が待ち遠しかった。


 この前後になって、食事が再開された。約二週間ほど食事を取れていなかったこともあり、最初は重湯からスタートだった。その後はおかゆ、消化の良いものという流れ。……病院の食事は味が薄い。あと苦手な酢の物が出てきて辛かった。食べられるだけありがたいというべきなのだが。


 そうこうしているうちに、皮膚移植も無事に終わった。腹の皮をとったのだが、こちらはかなりの速さで傷がふさがったことを覚えている。足の方が重傷すぎてそっちの記憶が強すぎるというのもあるのかもしれないが。


 その後の痛みはかなり改善された。先端部が鈍く痛むがその程度。事故当時や皮膚移植前に比べれば無いも同然だった。……体調が上向いてくると、新たな問題が出てくる。


 暇、である。一応、スマホがあるからネットは見れる。弟に実家からニンテンドーDSを持ってきてもらって遊ぶこともできた。だが一日中、ウェブ小説やらゲームやら見たり遊んだりはしていられない。それはそれで辛い。


 だが安静にしていなければ怪我は治らない。入院中、最初は痛みが私を苛んだ。そして退院までは暇が敵となった。退院の日を一日千秋の思いで待ちわびることになる。


 傷がだいぶ安定した頃、車椅子の使用が許可された。自分でトイレに行くことができる。看護師さんのお世話になる必要はなくなった。まことに喜ばしい事である。ついでに、病棟内を移動するのもできるようになった。


 調子に乗って移動して、腕にやたらと疲れをため込んだ。車椅子の車輪を動かす筋肉は、普段使わない部分だ。上腕の下側を使用する。鍛えられていないので、疲れるのが早かった。


 ……思い返してふと気づく。他の入院患者とまったく交流していない事に。重傷だったので、長い間個室にいた。大部屋に移動するのはまだ先だ。個室にいる限り話をする機会はない。


 車椅子に乗れるようになったのだから、ほかの場所ではどうか。ナースセンター前にはテレビがあって、幾人かの患者が見ている事があった。……が、テレビ自体は個室の中にもあったし、そもそも私はそれを見る習慣がない。話題にもならない。


 年齢の違いもあるが、話題もない。積極的に人と交流する性格でもない。……我ながら、病院で引きこもりやらなくてもいいではないかと思う。話す相手がいれば、暇つぶしがもう少しできただろうに。


 今となっては後の祭り。それからしばらく日数が経過し、いよいよ抜糸の日がやってきた。傷口を縫い留めていた医療用の糸を抜き取る日だ。今までは麻酔を使っていたが、今回は糸を抜くだけという事もありそれはなし。


 外科の診察室で、バシバシと処置された。正直若干痛かった。これまで比べればたいしたことないが、痛いものは痛い。ともあれ皮膚は無事に移植された。皮を取った腹の部分もぴったりくっついた。めでたし……と行けばよかったのだが。


 先端部に鈍痛があると、書いた。どうもその部分が良くなかった。そこが化膿していたのだ。早速それを取り除く処置が行われた。そしてお医者さんがおっしゃるには。


「ボールペンが楽に入るぐらいの穴が開いてるよ。ふさがるまでしばらくかかるね」


 深さは大体五センチ程度との事。退院が遠のく事実に、がっかりと肩を落とした。これを読んだ皆々様は、入院などしたら体調の違和感についてはしっかりとお医者様に伝えることをお勧めする。


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― 新着の感想 ―
[一言] >>延々と看護師に話し続ける老人 話すというか看護師さーん!!って呼び続ける老人俺の時もいた。マジで延々と一日中呼ぶ(違う部屋なのに聞こえる)。万国共通なんだろうな。
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