1 はじめに
毎日二話更新。こちら一回目です。
人の記憶とは移ろいゆくもの。どれほど強烈な体験であっても、日々を過ごしてい行くうちに思い出さなくなっていく。そうなるとそもそもどのような体験であったかも忘れてしまう。忘れた方がいい記憶もあるが、そうでないものももちろんある。
私は2015年の1月に交通事故にあった。右足にひどい怪我を負い、結果的に切断。義足となった。凄まじい体験だった。痛みと苦しみにまみれた経験だった。そして、人生の大いなる転機となった。
一般の人がどのようにこういった体験を乗り越えるのかは、想像するしかない。新しい楽しみを見つけたり、同じような体験をした人と語り合ったりするのだろうか。私の場合はどちらかといえば前者だった。そして本当の所はもっと別の方法を取った。
こういった記憶を、今は思い出せる。しかし年を取ったらどうだろう? 私ももう40代に入った。いつまでも確かな記憶を保持できるなどと自惚れてはいない。そもそも、昨日の夕食は何だったか思い出すのも困難である。覚えようと意識しないものを思い出すのは難しい。
そんなわけで、当時の事を思い出しながら文章として記録しておくことにした。ついでにこれを公開して、すこしでも知名度の足しにできないかという助平心も出してみた。
素晴らしい話ではない。エンターテイメントになっているかも怪しい。怪我の話であるから気分を悪くする人もいるかもしれない。そういった諸々を、あらかじめお知らせしておく。
でもまあ、未知であるものを知るというのは楽しいものだ。なかなか、こういった話を目にする機会もないだろう。わずかながらでも、暇つぶしになれば幸いである。そしてもっと言えば、少しばかり交通事故を減らせればなお幸である。
避けられるなら、それに越したことはないのだから。