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第二話 戴冠パーティにて

 王城内は煌びやかな装飾が施され、これでもかというほどの蝋燭に照らされて、それはそれは豪奢な様相であった。本日は王の即位の式典の日。城内には国内外の要人が多数招待されており、そこここから近隣国の内情を探らんとする、腹黒い会話が繰り広げられていた。

 王子、否、今日から王であるリナレス・フェイブルは玉座の上で頬杖を突き、一つ高い壇の上から冷めた目で会場を見下ろしていた。後ろには壮年でありながら筋骨隆々で活力に満ちた男、グレイヴ・ウェルズが控えている。

「ねぇ、グレイヴ。全く、茶番だとは思わないか?」

「珍しいですな。王子、いえこれからは陛下でしたな。陛下と意見が合うとは」

グレイヴはリナレスと同じようにホールを鋭く見下ろした。ホールに招かれた人間のほとんどが宰相派といわれている諸侯で固められており、また国外からのゲストも険悪な関係であったはずの国の重役や、同盟国でない国の人間も当たり前のようにパーティに参加していた。

「全く、あからさまだね。何より……」

リナレスは怒りも露わに玉座のて肘掛けに拳を叩きつけた。

「いかがなさいました?」

「姫君が全然いないじゃないか!」

「……陛下」

グレイヴはあまりにマイペースな主君にあきれ返って溜息をついた。

「だって、重要なことだろう? そうでなかったらこんなところに来ないで色街を冷やかしていたほうが10倍マシさ!」

「……仕方がないでしょう。主催は陛下という名目ですが、実質取り仕切っているのは宰相ですからな」

「全く、傀儡として据えるのは構わないけど僕の些細な要望くらいは叶えてくれてもいいものだろうに」

リナレスは怒りというか不満も露わにフンと鼻を鳴らす。グレイヴはまたも深いため息をついた。


「楽しんでおられますか……いえ、どうやら退屈な御様子ですな」

王であるリナレスよりも上等そうな装いに身を包んだ細身の40男が、リナレスの前で一礼した。グレイヴは表情を硬くして姿勢を正し、リナレスは不満の色を一層強く顔に出す。

「いやいや、そんなことはないさ。放蕩者な上に長子でもない僕が王になれるなんて、まったく夢のようで胸がまだドキドキしてるよ。全てはシールズ宰相のおかげさ」

リナレスは皮肉るように肩を竦めた。いや、事実、皮肉を言っているのだろう。宰相、アルフレッド・シールズは表情を険しくする。

「何が、御不満ですかな?」

リナレスはそれには答えず、手元の台の上のグラスを手に取り、くいっと煽った。近くを通った侍女を呼び寄せて、新たに赤い液体でグラスを満たす。グラスをくるくると回して中身を波立たせた。

「酒があって、いい食事があるってのはそれだけで幸せなことだよ。でもね、人間それだけじゃ生きていけないのさ」

「と、言いますと?」

宰相は怪訝な表情でリナレスに問うた。同じく、グレイヴも首をかしげる。

「分かんないかなぁ。女の子だよ女の子! それもとびきり見目麗しい、ね」

「はぁ……」

「その要件さえ満たしてくれるんだったら僕のほうは満足だよ。政治は宰相に任せていいよね? そのためのポストなんだから」

「……承知いたしました。近く、麗しい妃を招くことに致しましょう。政略婚となってしまいますが」

リナレスはここにきてようやく笑みを浮かべた。

「よろしく頼むよ」

「それでは、賓客のもてなしをしなければならないので私はこれで失礼いたします」

宰相は深々と頭を下げて、パーティ会場の中心のほうへと消えていった。

「陛下、よいのですか? あのような約束をして」

「ま、困るのは僕じゃないしね」

「まったく……」

グレイヴは三度溜息をついた。リナレスのほうは将来自分の元へ来るであろう姫君を想像して鼻の下を伸ばしていたのだった。

かなり久しぶりの更新にもかかわらず短いという……

公約(?)なんてどこかの歴史だけ長い党も真っ青なくらいぶっちぎりで破ってますね。皆さんごめんなさい!

……今後も鈍亀更新(死語?)になると思いますけど、どうか見捨てないでください。

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