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第七話

籠の中にはかなりの量の花が入っていた。色とりどりの花が多かったが、そのほとんどが造花だった。なるほど、枯れたら縁起悪いし、何より色々な方が来るのでそこへの配慮かな。花粉症の人がいるだろうから花粉を振りまくのもよくはない。


病院前には秘書の方が待っていた。


「お疲れ様です。話は聞いているので、よろしくお願いします。」


さっき会った時とは違ったキャラで戸惑った。先ほどの陽気なキャラではなく、クールな感じだった。


「さっきとキャラ違いすぎません?」


「そうですか?どっちの方がいいとかあります?」


「変えられるんですね。なら、明るいキャラの方がいいですかね。クールな感じにされるとこっちが不安になります。」


「そーう?なら、そうするね。」


女性は皆、女優というがここまではっきりされると怖い。あまり見たことがないタイプの女性だった。


「そういえばまだ名前お聞きしてませんでしたね。なんてお呼びすればいいですか?」


「うーん。佐藤でいいよ。」


「じゃあ、佐藤さんよろしくお願いします。」


「じゃあ、こっちは寛くんって呼ぶね。」


「早速始めますか。お昼前には終わらせたいですし。」


「そうだね。始めよっか。」


もうこの時点で11時をすぎていた。館内放送もしたし、お昼時になるとお見舞いに来る人も増えてくるだろう。今はまだあまり人が来てはいないようだが、結さん一人でさばききれないこともあるだろう。花を置くところは決まっているし、結さんがすでに仕分けしてくれていたので、あとは自分がどの場所に置くかを周りの雰囲気を見て決めるだけだ。


「じゃあまずは1階からねー。」


この病院は、4階建に屋上。1階には各診察室があり、平日の昼間なのにかなり人がいる。いつの時代になってもお医者さんという職業は忙しそうだ。2階より上には病室があり、年齢ごとに振り分けられるらしい。これは同じ年代の子が集まった方が明るく楽しく病院生活を送れるようにと結さんのお父さんの方針らしい。こどもの階の壁紙は明るく元気な感じ、大人の階にはシックで落ち着ける感じになっている。それぞれの階には母の絵が飾られている。相当な枚数があるので、相当母の絵が好きなんだろう。ありがたいことだ。改めて母の偉大さを感じる。


「じゃあ、この辺りにおいてね。」


そう言われながら各階の雰囲気にあった花をおいていく。雰囲気を壊さないように、また、花ばかりが主張しないように注意しながらおいていく。結さんも派手な花は選択しなかったようだ。オレンジや黄色など淡い色が多く選択されていた。この病院の医院長の娘なだけはある。1つだけ生花があり、これだけ場所が指定されていて、その場所は院長室だった。院長室は最上階にあり、その階は子供が多くいる階だった。それもそのはず、お父さんは小児科の名医だ。かなり有名な人らしい。全国からお父さんを求めて、患者さんが集まるらしい。院長室に入り、生花を置いた時に気づいた。籠の下の方に、請求書があり書き置きで『お父さんの机の上に置いといてください。』と自分に向けたメッセージがあった。請求書を置こうとしたら金額が少しだけ見えたが相当な額だった。


「じゃあ、これでおしまいね。お疲れ様―。」


「はい、お疲れ様でした。」


「意外に早く終わったね。花選ぶのも即決だったし。そんなに早く終わらせたかったの?」


「早く終わらせたかったのもそうですが、案内されながらイメージしてたので悩むことはなかったです。」


「案外こういったセンスを問われるものは悩むものだと思うんだけどなぁ。」


「母のおかげですかね。」


「そうか。ここの絵、殆どお母さんの作品だもんね。センスはお母さん譲りかなぁ。」


「ここまでうちの母の作品を飾ってもらえて嬉しいです。でも実は自分絵がクソ下手くそなんで。」


「えー以外!!」


苦笑いをする。時間を見てみると11時半だった。今から行くとちょうどいいくらいだろう。


「では、ここに請求書置いておくので、医院長先生によろしくお伝えください。」


「りょうかーい。」


「では失礼します。」


そういって病院を後にした。


「今戻りました。お客さんはどうでしたか?」


「うん、もう10人くらい来店してもらったから。接客とかよろしくね。」


そういうと結さんはレジカウンターのところで本を読み始める。ここまでされると怒る気もないが、会計だけはしてくれるようだ。まあ、結さんの本業は花束作りなので、他は自分の仕事になる。


「いらっしゃいませ!!」


そういって、本来の業務を始めた。


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