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第四十三話

自分の病室に戻ると結さんが扉の外で待っていた。


「結さん中に入ってください。」


結さんと一緒に自分の病室に入った。


「お姉さんと話してきました。もう大丈夫だと思います。」


「お姉ちゃんと初めてこんなに話したと思う。あんなに弱った姿も初めて見たし、あんなに私のこと思ってくれているなんてわからなかった。」


「人は自分に向けられている思いになかなか気づかないものです。仕方ないですよ。他の人から見るとあからさまでも当人にとっては当たり前のことだったりしますから。当たり前に受けていた思いに気付けるのは失ったり弱ったりした時くらいですから。」


「ほんとそうね。私はお姉ちゃんから受けている思いに気が付かなかった。その思いに応えてあげることができていなかった。まだ間に合うかな?」


「きっと間に合いますよ。その思いに気づけたのなら、きっと。」


「そうだよね。ありがと。頑張るわ。」


そういうと結さんは満面の笑みで自分を見てきた。


「そういえば、お姉さんに送ったのは向日葵だったんですね。」


「そう。憧れは私の中から離れたから、それを送ろうかなって。」


「いいと思います。自分もそうしたほうがいいと思っていましたから。」


「やっぱりね。少し誘導されたような気はしてたのよ。でもおそらく自分だけで選んだとしても同じ選択だったと思うわ。」


「結さんは向日葵が花を咲かせるとき太陽になることを諦めたと言っていましたが自分は諦めたのではなくて同じように輝こうとしたんだと思います。太陽にはなれないけど同じくらいここで輝いてやる、だから太陽を追うことをやめて自分で輝くために大輪の花を咲かせる。憧れが尊敬に変わっただけです。それに太陽は一つしかありませんし、近づいたら何もかも燃えてしまいますけど、向日葵の周りには色々な生き物や植物がいる。近寄ってきてくれて、自分ことを綺麗と言ってくれる人がいる。太陽の孤独を知ってみんなと生きていくことを決めた花だと思います。」


大きな輝きは身を焦がすことがある。誰も近づくことができなくて孤独になる。人間でも同じことがある。輝けば輝くほど後ろの影は濃く暗くなる。だからこそ弱い部分を見てもらうことは大事で、恥じることではない。輝きがあればあるほど。


「寛くんらしい答えかもね。」


「少し後付け感ありませんでしたかね。あと少し臭いセリフな気がします。」


「いいじゃない。どんな考えであっても、寛くんのものなんだから。確かに少し臭いセリフだけどその言葉は十分に私に届いたから。じゃあもう帰るね。店は1週間私がお昼だけ営業して、寛くんと妹さんがきたら通常営業にします。それまでちゃんと休むこと骨折してもできることはあるから来てもらうからね。お大事に。」


結さんは出て行った。窓を開けて少し換気をした。新しい風が入ってきてそれにつられて数枚散った桜の花びらが部屋に入ってきた。もう、桜が散る季節か。


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