第三十八話
「真由さんは結さんの前では弱みを見せないで、しっかりしなければと思っていいたと思います。日向さんも手のかからなかった子だって。そうやって自分を押し殺してきたんだと思います。」
真由さんにとって、支えだったのは間違いなく結さんだろう。だからこそ、今回のことは真由さんにとって耐えられない苦痛だったのかもしれない。
「だから真由さんは結さんに依存していたと思います。結さんは自分のこと裏切らない、必ず自分のところに帰ってきてくれる、自分の考えを理解してくれているって。結さんから喧嘩をしたことがないって言ってましたし、自分から結さんが離れていくと思ってしまったのかもしれません。」
強がっている人ほど心は脆いもの。弱い自分を無理して強く見せることはよくある。真由さんは典型的なパターンだろう。結さんに依存して、自分を保つ。結さんが自分の考えられない行動をとってしまうとパニックになってしまう。喧嘩の時に結さんが一方的に怒鳴ってしまったのは真由さんが混乱していたからだと思う。
「単純に真由さんは結さんが自分から離れていくのが寂しかったんだと思います。常に自分についてきてくれた自分の妹が、突然、自分の元から離れていくのが耐えられなかった。このままでは真由さんも結さんも辛いと思います。」
「・・・。」
「結さん、真由さんともう一度話してくれませんか?自分の気持ちを素直に。憧れと尊敬は違います。憧れはその人のようになりたいですが、尊敬はその人の弱い部分も受け入れてその人に感謝すること。誰1人として同じ人はいません。たとえ、遺伝子的にも近い姉妹だったとしても。真由さんの背中を追っていたとしてもそこで考えてきたことや思ったことは違います。今現時点では全く違う職業に就いている。今の自分の考えだったり、感じてきたことだったり。真由さんと話して欲しいです。」
真由さんと結さんの関係を修復、改善するには結さんの力が必要不可欠だ。1度自殺に失敗してしまった人がまた同じようなことを繰り返してしまうことは多々ある。自分もここで真由さんに死なれてしまっては体を張った意味がない。
「わかったわ。お姉ちゃんと話してみる。私もこのままじゃいけないと思うし、寛くんに悪いからね。何よりも私とお姉ちゃんのために。」
「これは少しばかりのアドバイスですけど何か花を持って行ったほうがいいと思いますよ。話のきっかけと、今の結さんを表現するのに一番いい表現方法だと思います。」
「わかった。やってみる。」
「頑張ってください。」
「うん。ありがと。」
そういうと結さんは足早に病室を出て行った。なんの花を贈るのか考えるのだろう。なんの花を贈るのかは想像がつく。結さんも自分と向き合うにはとてもいい方法だと思う。難しく考えずに素直になって欲しい。血の繋がっている姉妹なんだから。血の繋がりは自分が望んでなくても自然につながっているもの。嫌になるときもあるけど、どうやっても切れない強い繋がり。今の自分にはないもの。




