第三十七話
「結さんそこに立ってないで座ってください。少し話しましょ。」
結さんが近づいてきて、病室にある椅子に座った。
「すいません。心配かけました。これでしばらく働けなくなっちゃいましたね。その間に愛のことよろしくお願いしますね。」
結さんは声を発することなく首を上下に動かした。
「今回の原因は自分にもあります。そんなに責任感じないでください。」
「でも、私がお姉ちゃんと話し合いしてればこんなことにはならなかったのかもしれないのよ。」
「たらればの話はやめましょ。例えそうだったかもしれないけどそんなこと誰にもわかりません。現実はお姉さんも自分も生きてる。ただし自分が怪我をしたということだけです。何も失ってないじゃないですか。まあ落下の衝撃で下にあった車は壊れてしまったと思いますけど。」
「うん。ありがと。お姉ちゃんを救ってくれてありがとう。」
結さんは立ち上がり頭を下げた。
「結さん聞きたいことがあって。ずっと引っかかっていたんです。前に話していた向日葵のこと嫌いな理由、きっかけはお姉さんですよね。向日葵の花言葉は憧れ。昔の自分を見ているみたいっていうことは結さんには憧れている人がいた。でも、その人と自分を比べて差がありすぎて見ることをやめた。結さん専門学校行く前は大学で医学部だったらしいじゃないですか。母さんから聞きました。お姉さんの背中を追っていたんですよね。」
結さんは少し話辛らそうだったが、重い口を開いてくれた。
「気付くよね。寛くんは人のことよく見える人だってお母さんも言ってたから。あまり思い出したくはないけれどそうなんだ。向日葵と自分が重なって、向日葵のこと見るのが嫌になっちゃったの。」
「だから、一度も病院の中に入ろうとしなかったんですね。本来なら、病院の花の発注も結さんがやるべきだったのだと思いますし、請求書もかなりの高額だったので責任者が行くべきだとは思ってました。母さんがかいた向日葵の絵が見たくなかったから。」
「そう。寛くんお母さんの絵をあまりひどくいうつもりはないけれど、あの絵がかなり大きいから余計に現実を突きつけられるみたいで嫌だったの。憧れの存在が自分の中でどんどん大きくなっているのと、逃げた自分を突きつけられているみたいで。」
「結さんにとって真由さんは憧れの存在だけじゃないですよね。幼い頃に亡くなったお母さんの代わりだったんじゃないかなって自分は思うんです。」
「そうなのかな?」
「結さんはどうかはわかりませんけど、真由さんはそういう意識だったと思いますよ。結さんには言ってなかったですけど真由さん初めてあった時から自分を見るときものすごい敵意むき出しだったんです。怖いくらいにね。今考えるとわかりますけどあれは自分が思う危険な人物が大切な人の近くにいることに警戒して、排除しようとしたのではないかと思ったんです。だから、自分をやめさせようとした。まさに子供を思う母親のように。結さん言ってたじゃないですか。自分のことになると真由さんは後先考えないって。まあ少し過保護ですけどね。」
真由さんと結さんは4歳離れている。もし、母親が亡くなったのが幼い頃でまだ結さんが母親が必要な年齢だった場合、お姉さんは自動的に母親のような態度をとって自分を押し殺してしまうことがあったのかもしれない。父親が日向さんみたいに忙しい方ならなおさら。これなら結さんの人が苦手なのもある程度説明がつく。幼い頃から正しいコミュニケーションを取ってこなかった人、特に母親とのコミュニケーションが十分に行えなかった子供が大人になって人間が苦手になってしまうことが多々ある。結さんの場合、幼い頃に母親を亡くしているためにまだ精神の発達していないお姉さんが母親がわりをしなければならなかった。所詮、子供同士のコミュニケーション。大人と子供では全く話が違う。真由さんも結さんとしっかりしなければと必死だったと思う。このことが今回のことを起こしてしまった原因だと自分は思う。まあ引き金になってしまったのは自分なのだが。




