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第三十二話

「さて、寛が居なくなったところでここからが本題ね。ここからは日向さんにも相談はしてないから。まずどうだった結ちゃん?寛の過去。」


「・・・。」


「まあ無理もないわ。でも、寛に対する態度は変えないでね。あの子そういうことに敏感だから。」


「わかりました。」


「さて本題ね。これからあの子と関わっていくには知っておいて欲しいことだから。あの子のためにも、ここにいる他の人のためにも。」


「中村くんはこれから話してもらうこと知ってるのかい?」


「はい。佐々木さんから寛くんの相談を受ける時に知りました。」


「あの子はね、過去のこともあるけどそれ以前に人をよく見ることができるの。それもただ見ているだけでなくて容姿や服装、態度や口調までしっかりと把握してしまうの。無意識にね。」


「それに加え、過去の経験があるので自分が傷つくのを極端に恐れてしまうため余計に寛くんは人を見て判断して行動に移してしまいます。寛くんが問題なのは過去の経験から何より人との繋がりを失うことを恐れてしまう傾向があります。」


「高校の時に寛が緊急搬送されたことがあったの。部活での怪我ではなくて、一般生徒とのトラブルだった。ことの発端は妹の愛が受けていたいじめだったの。愛は結構ものをズバズバ行ってしまう性格で仲間も多かったんだけど敵も結構多かったわ。寛が高2の時にたまたまいじめの現場に遭遇してしまって、その時一緒にいた友達に携帯で動画の撮影と先生に連絡して欲しいと頼んでいじめの間に入ったの。男3人組で愛を囲んで今にも殴りそうな状況の中に寛が入っていった。寛はこの子たちがいると愛が危ないと感じたんじゃないかと思うんだけど、わざと挑発して自分に手をださせたの。そこで寛は袋叩きにあって骨も数本折れていたわ。駆けつけた先生方に止められてようやく暴力が終わり、その子達は友達が撮っていた動画が決め手になって逮捕。退学になって結果的に愛の目の前からいなくなったわ。病院で寛から話を聞くととても満足そうに笑顔でペラペラ話していたの。下手したら死んでいたかもしれないのに。」


「寛くんの過去のことも知っていたのでここで確信しました。この子は自分の命よりも繋がりが大事なんだって。繋がりを守るためならなんだってするって寛くん自身も言ってましたし、特に愛ちゃんと真心ちゃんのためなら方法は問わないって。」


「この事件以降うちの中がかなり複雑になってしまってね。愛まで寛こと好きっていうのよ。日本じゃ重婚は認められないし、真心の気持ちを考えたらって思ったんだけど真心もいいよって。私たちも反対したんだけど真心に言いくるめられちゃって。日本には今事実婚っていう便利な言葉があるじゃない。経済力があるから大丈夫っていうんだけど、内心複雑で。小百合の願いもあるし、寛はどうするって聞いたら、アッサリ受け入れるんだもの。」


「それは自分も知っていたよ。佐々木さんからよく3人の関係について相談されていたから。そんなバックグラウンドまでは知らなかったけどね。」


「どう転ぶかわかりませんし、本人たちに任せてみてはという話だったんだけど、一緒にいるとき3人とも幸せそうなの。間に入る余地もないくらい。パパはいいじゃないかっていうけどもし子供ができたらって思うと心配になっちゃって。あ、ごめんなさい。結ちゃんに話したいことはこのことではなくてね。」


「大丈夫です。寛くんのこと知れましたし。」


「あの子は正しく使えればむしろいい方向に迎えるわ。間違った時が問題なだけ。まあ回りくどい昔話はここまでにして結ちゃんにお願いがあるの。あの子の過去を知っているから頼めるんだけどあの子が変な行動とり始めたら私に連絡ちょうだい。それとうちの愛を監視役として雇ってくれない?」


「人手が足りないと寛くんとも話してましたしいいですけど寛くんにも何か考えがあるみたいで。」


「あの子の考えることだから多分、愛のこと推薦しようと思ってたんじゃないかな。」


「それでも、愛ちゃんはいいんですか?大学とか就活とか。」


「全然問題ないわ。単位取り終わってるし、うちの会社に就職することは決まっているから。」


「ご迷惑でないのなら、よろしくお願いします。」


「ということはうちにも寛くん貸してもらえるってことでいいかな?」


「それは寛に聞いてください。本人もやりたそうだったのでいいとは思いますけど。」


「じゃあ決まりだね。」


自分がリビングから離れてから30分後くらいに呼ばれた。どうやら話は終わったらしい。なんの話かはわからなかったがさっきまでの重い空気は何処へやら。4人は笑顔だった。


週末明けの月曜日。話を聞いた後も結さんの態度は変わらなかった。むしろ前より明るく吹っ切れた感じだった。結さんになんの話だったが聞いたが教えてはくれなかった。そしていつの間にか自分がずっと考えていた愛がここで働くことと自分が日向さんから受けていたお願いが聞ける環境が整っていたことに驚いた。多分母さんの影響だと思う。自分の考えてることなんてお見通しを言わんばかりだった。本当に母さんには敵わない。


少し設定みたいな話でしたが、これで寛の関係性と、性格がわかると思います。

次回から、事件です。(リポーターっぽく)

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― 新着の感想 ―
[一言]  寛くん、カッコ良すぎ❗  私まで惚れそうです。笑  哀しい価値観ですね。  でも主人公としては申し分の無い魅力ですね。
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