第二十五話
慌ただしかった2週間が終わり、結さんの元で働き始めてから初めての休日。開店の追い込み時期ということもあって、なかなか休みを取ることができなかった。準備から開店、不慣れな接客、人との交流。大学卒業後、しばらくの間家に引きこもっていた自分にとってはたった2週間が1ヶ月以上に感じた。
初めての休日ということで、ゆっくりと一日中寝て過ごしたいとは思うのだが、朝から夕食の仕込み、12時から市営の球場で病院の方々と野球、終わり次第家に帰り夕食を4人前作らなければならない。人が来るときは基本後片付けも自分がすることになる。母さんがお客さんと喋っていて、その場から離れない。お酒が入るとなおさら。たまに飲み過ぎてしまうこともあり、母さんの介抱をしなきゃいけなくなることもある。食事が終わり、片付けをしたあとは、父さんからの依頼もこなさなければならない。あれ?思っていた休みとは程遠く忙しすぎないか?
2日前に送ったメールの返信が来た。メールの内容は、自分が送った質問の返答と、父さんのブランドの会社に出勤するときの内容だった。うちの会社は家族経営で父さんが社長、自分も様々な仕事を行うことがある。他の家族も色々と役職についている。今回の自分の仕事は新入社員に対する講義だった。うちの方針や、会社での役割、配属する部署など説明するだけなのだが、部署ごと別々に説明をするため各部署との連携が必要になる。これがなかなか面倒。父さんはこういったことは苦手だから任せられることが多い。自分のブランド、会社を立ち上げてからこういうものは全て自分が担当している。おかげで大学ではプレゼンの成績が抜群に良かった。自分は月に1、2回ほどしか会社には出ないのだが、会社内の信頼は厚い自信がある。父さんはどこか職人気質なためあまり集団は得意ではない。会社というものがあまり適していない人だ。経営とかは他の人たちで協力して行なっている。その責任者の1人が自分だ。色々と面倒なのだが会社を成り立たせるためには仕方ない。
今朝は、9時に起き、母さんと一緒にキッチンに立つ。母さんは朝食、自分は夕飯の仕込み。うちのキッチンは広いので2人で別々の作業をしても相手が邪魔になることはない。仕込みを行うのだが5人分となるとそこまで大変ではない。鶏肉を適当な大きさに切ってからタレにつけるくらいだ。時間はあまりかからず、ものの10分程で終わった。朝食を食べ終わり食器を片付け、野球の準備をする。母さんは自分の仕事部屋にこもるみたいだ。絵の依頼の締め切りが迫っているようだ。今度、うちの会社主体で個展を開く。そのための創作も進めなければいけない。母さんも母さんで大変なのだ。それをわかっているからこそ母さんのわがままは聞きたいと思える。何よりわがままを言う母さんが1番可愛いらしい。父さん曰く。
野球をするのは大学4年の9月以来。教育実習の時に部活を見て以来だ。あのときは生徒の尊敬の眼差しが嬉しかった。出身校が唯一甲子園の土を踏んだときのエースだったから。この時代のうちの野球部は黄金世代と言われていたらしい。高校生からの質問攻めは少し嬉しかった。




