第二十二話
「さて、邪魔者がいなくなったところで結ちゃん。あの子本当に接客業できてる?」
「えっ?はい問題ないですよ。逆に自分の方が問題があるくらいで。本当に助かってます。色々と教わることも多いですし。」
「そう。本当に良かった。あの子、極度の人間不信だから、接客業なんて向いてないと思ってたわ。まあ強制的に行かせたのは私なんだけど。」
「そうなんですか。」
「まあ詳しいことはうちに来てからね。あのこのこともっと知ってほしいし、知っておいたほうがあの子も下手なこと言わないだろうしね。お父さんは色々知っているけど聞いちゃダメよ。私の口から説明させてね。これだけはお願い。」
「わかりました。」
「準備終わったよ。母さん帰ろっか。」
「おっそい。餓死したらどうするつもりよ。」
「まだ1、2分しか経ってないだろ。」
「あら、ここまで待たせたのは誰かしら?口答えするきなの?」
「ごめんて。では、結さん先に失礼します。」
「・・・あっ、お疲れ様。」
不自然な間があった。何か思い詰めているような。またなんか母さんが言ったのだろう。母さんの性格上あまり人を困らせることは自分以外には言いそうもないが。母さんの方を少し睨んだが、自分のことなんて見てもいない。ご飯、ご飯言いながらその場でスキップしている。
「あの母さんが何か言いました?」
「あっ、大丈夫大丈夫。気にしないで。」
これは確実に何か言ったな。これ以上問い詰めても何も出てこなさそうなので今は諦めるが、母さんには問い詰めてみよう。
「ほら早く。ご飯、ご飯。」
遊園地に行く前の小学3年生が親を急かせているようなリアクションで自分で乗ってきた車に向かっていった。「はぁ」とため息をつきながら母さんの方に向かっていった。
「楽しいお母さんだね。」
「結構毎日になると大変なんですよ。」
結さんに笑顔を向けてその場を去った。車に着くとすでにエンジンをかけて母さんは待っていた。
「早く乗って。ご飯いこ。」
「わかったわかった。もうあんまり急がないでよ。」
そういって、近くのファミレスへ向かった。車内で母さんに、
「俺のいない間に結さんになんかいったでしょ?」
「いったけど言わない。」
「何言うのもいいけどさ、困らせることはしないでね。」
「うーん、まあ頑張ってみる。迷惑はかけないかな。」
「それならいいけど。」
「あら、案外聞き分けがいいのね。」
「母さんが俺以外の人を困らせるのは俺のこと思ってのことだって知ってるからさ。昔よくこう言うことあったから。」
こう言う時の話をする時、母さんは威圧感のある顔をする時がある。纏う空気が変わると言うか、どこか全くの別人になってしまったのかと思ってしまうことがあるらしい。それに結さんはびっくりしてしまったのだろう。
「わかってるんならいいじゃない。あんたはいつも考えすぎなのよ。ほらもうすぐ着くから。」