第十八話
開店して3日。特に問題なく、順調に進んでいると思う。お客さんにも満足していただけていると思う。特にクレームなどはない。それもそのはず、患者さんの家族か病院関係者以外きてはいない。いわば、身内がきているだけのこと。身内で問題が起きているとこの先やってはいけない。
3日目の午後4時頃ある問題が起きた。ある女性がこの場に似合わない大きな声を上げている。俗に言うクレーマーのようなものだ。どうやら、結さんの対応について怒鳴り散らしている。結さんもかなり萎縮してしまっていて、言葉を出すことができないでいた。店内には他に6人ほどお客様がいる。他のお客様に迷惑がかからないようにしなければ。自分は色々と根回して、女性に話しかける。
「お客様どうかなさいましたか?」
結さんに向けて合図を送りここは自分に任せてもらうことにした。結さんにはこの場から離れてもらった。
「どうもこうもないわよ。こっちのイメージしたものと違うものを用意されたのよ。」
「そうでしたか。申し訳ございません。ちなみにどう言ったものでしたか?今後のためにご意見をいただきたいのですが、奥の部屋にお手数ですが一緒に来ていただけませんか?ここでは周りのお客様に迷惑がかかってしまいますので。」
女性は周りを見渡して、視線が自分に集まっていることにようやく気付いた。その視線はとても気持ちいいものではなく、とても不快に思われている蔑んだ目だった。対照的に自分は笑顔を突き通した。不自然なくらいに。
「もういいわよ。早く会計を済ませてちょうだい。」
「そうですか。わかりました。では、2500円になります。」
女性は財布からお金を出して、足早に店を出て行った。
「ありがとうございました。またのご来店お待ちしています」
店の中に戻り、お客様に向けて一礼した。顔を上げると自分の顔は笑顔だった。その顔を見た店内のお客様もクスクスと笑った。
「ありがとう。私じゃどうしていいかわからなかった。本当に助かったよ。」
「いいえ。対しことじゃないですよ。」
自分は元の業務に戻って行った。この光景を見ていたお客様からめちゃくちゃ声をかけられた。そのおかげで少しだけ売上が上がったらしい。
閉店の時間になり昨日手伝えなかった閉店準備をしている。お父さんからの連絡もないので問題はない。
「寛くん?今日のことでさ、クレームとかの対応を教えてくれないかなって思ったんだけど。今日のことが繰り返されるようなら寛くんばかりに負担かけちゃうしこう行ったことも今後必要になると思うんだよね。いいかな?」
「いいですけど、自分のはあまり参考にはならないと思いますよ。自分は元々こういうのが得意なんで、任せてもらえれば問題ないと思いますよ。」
「いいから教えて欲しい。寛くんがいない時もこれからあるだろうし、こういうことも寛くんにおんぶに抱っこじゃいけないと思うんだ。一応ここの経営者だかからね。」
「そうですか。わかりました。あまりひかないでくださいね。」
「わかった。精進する。」
「クレーム対応で1番大事なことってなんだと思います?」
「お客様が何で怒っているのかとか?」
「そこですね。クレーム対応で間違ってしまうことは。」
「別に普通のことだと思うけど?」
「そこを変えないとクレームで悩みますよ。クレーム対応で1番大事なのは、相手がどういう人か観察することですよ。性別、身だしなみ、喋り方などなど。1つ1つのクレームに真剣に向き合っていたら他のお客様に迷惑です。店として合理的に選択することも大事です。その1人のお客様のために他のお客様の迷惑になるのは店としてもマイナスです。簡単に言ってしまえばクレームなんて真剣に聞いて時間を取るよりも多くのお客様の相手をしたほうがいいってことです。その場を丸く迅速に収めることが1番です。クレームなんて聞いていても1人分の利益しか出ないですから。」
「なるほど。」
結さんは真剣に話を聞きながらメモを取っている。