第十六話
「お嬢さんは寛くんのことかなり気になってはいるとは思うんだけど。知らない方が幸せなことも多いから言わない方がいいのかもね。」
「そうだよ。」
「医院長、独り言の盗み聞きなんて趣味が悪いですよ。」
「悪かったね。でも彼をあまり困らせないでくれよ。彼も彼かなり重い過去を背負っているんだから。今でも彼は世間からは到底受け入れてもらえないような関係を持っているからね。」
「こんなところで話していいんですか?」
「どうせ君のことだ。調べはついているんだろ。彼はこれから難しい選択に迫られるから、今は彼の思う通りに行動させてあげたいんだよ。」
「それが自分の娘が傷つくことだとしても?」
「まだ結がどう言った答えを出すかはわからない。どう思っているのかもわからない。なら任せるのさ。それが選択するってことだろ。でも、必ずと言っていいが、彼は結のものにはならない。」
「冷たいですね。」
「親になればわかるよ。どこまでいっても自分の子供は可愛い。でも、そこに親の意思はあまり入ってはいけないんだよ。結局はその子の人生なんだから。生きてれば傷つくことも絶望することもある。親ができることはいつでもそこに待っていて帰ってこられる場所を作ってあげ続けていることだけだよ。」
「そういうものなんですかね?自分にはあまりわからないです。真由さんにもそう思っているんですか?」
「そうだよ。でもあの子は帰ってくるところだとは思ってないだろうね。真由は僕に対する憎しみが強いからね。初めての子供だったからどうしていいかわからなかったんだ。言い訳になってしまうけど。」
「難しいですね。」
「人間も人生も病気も思う通りにいかないからね。ましてや可愛い娘だといろんな感情が入っちゃって余計に思う通りにはいかない。子育てって良かれと思ってやったことが裏目にでることがほとんどなんだよ。本当に難しくてね。親はレールを敷いてあげればこの子は幸せになるって信じて色々と口を出してしまう。それは子供にとっては自分を縛るものでしかない。レールの通りに進んで幸せになるかどうかなんてその子の考え方次第。真由は僕の敷いたレールの通りに進んでしまった。もっと彼女には色々な道があったのかもしれない。僕も気がつくのが遅すぎたよ。子供の可能性をもっとも狭めてしまっているのは親なのかもね。」
「でも、その道を選んだのは真由さんです。結局は医師の道を選んだ責任は真由さん自身にあるのではないんですか?」
「そう割り切れればよかったんだろうけどね。そうは考えられないのも親なんだよ。だからこそ結には自分で選んだ道を選んでほしい。結が医学部をやめて専門学校に行きたいって言った時に初めて気づいたよ。ああ、自分は間違っていたんだなって。」
「そういうもんですか。親の心子知らずですね。」
「子の心親知らずとも言えるよ。」
「それもそうですね。わかったら苦労しませんもん。」
「難しいよね。まあこの話はここまでにして今日はもう上がりだよ。もう遅いしね。」
「はぁーい。お疲れ様でした。」
寛がいないので、会話オンリーの回でした。
わかりにくかったですか?
個々悩みどころなんです。
主人公の心理描写を描くのは当たり前だけど、それ以外の人の心理描写っている?って思ってしまって。
まあ、ひとまずこれはこれで良しにしてますが。




