第十四話
この日は正午以降、あまりお客さんが来なかった。紅茶はまだ準備中ということにして自分が家で練習することにした。使っている茶葉が高級なものなのでソコソコの値段がする。ある程度上手に入れることができないと生産者にもお客さんにも失礼だ。唐突な以来だったが頑張るしかない。そしてこの日もあの人が来た。
「おーい。結、寛くん元気に営業してるかい?」
「もう閉店だからあまり邪魔しないで。」
「まあまあ、今日はどう言ったご用件ですか?」
「なんだろう、寛くんよそよそしくない?お父さん寂しい。」
「もう、邪魔。早く用件言って。」
わかりやすく結さんがイライラしている。昨日の今日だ。あのあと散々言われたと思うのだが、なんも変わってはいない。
「結さん、後はやっておくのでお父さんと話してください。」
「ああ、話があるのは寛くんの方だから、結、片付けお願いね。」
「そう。わかった。早めに終わらせて。」
「すいません。よろしくお願いします。」
「気にしないで。でも出来るだけ早く帰ってきてね。」
「わかりました。」
「じゃあ結、寛くん借りるから。」
お父さんに連れられ病院内に入った。
「お父さん。話とはなんでしょう?」
「それは医院長室に入ってから。ところで、かなり結が懐いてたみたいだけど何かあった?」
「特にないですよ。自分といるときはあんな感じです。」
「そうか。よかった。君にあの子を任せて。入ってくれ。」
医院長室に入ると、秘書の佐藤さんが待っていた。笑顔でお辞儀をしてコーヒーをお願いした。偉い人の部屋というのはどうも慣れない。いつきても緊張してしまう。部屋に入ってからお父さんの目つきが変わった。