第十話
直射日光が顔に当たり目覚ましより先に起きた。時刻は6時半。相当疲れていたのか昨日はすぐに寝ることができた。目覚めはいい。母さんはまだ起きていないようなので今日は自分が朝食を作ろう。昨日の豚バラのせいろ蒸しが余っているので、豚汁でも作ろう。キッチンに向かい、手際よく朝食を作り上げた。
「うーん。いい匂いがする。」
母さんが起きてきたようだ。匂いに誘われて起きてきた。
「どうしたの?外に出て、心境の変化でもあったのかな?」
「うるさいわ。たまたま朝早く起きたから作ってみただけだよ。」
「そう?まあいいわ。そうだ。昨日メール届いてたよ。早めに確認しておいてね。多分、仕事のことだろうから。」
「わかった。帰ってきてから確認するよ。まあ冷めないうちに早く食べよ。」
仕事といっても、花屋のことでは無い。自分には複数の仕事がある。それは父さんの手伝いのようなものだ。父さんの仕事はデザイナー。様々な企業から依頼が来る。自分のブランドも持っている。しかし、7年前、交通事故により視覚障害を持ってしまい、色の識別ができない。白黒にしか見えないらしい。服のデザインまでは今まで通り作ることはできるのだが、色がつけられない。そこで父さんに代わり色付けを自分がすることになった。とはいっても、当時まだ学生だった自分にはあまり時間がなかった。しかも、お金も発生していたため、下手なことはできない。なおかつ父さんの作品を汚すようなこともできない、真剣に取り組んでいた。すると、自分が着色した服の評判がよく、売上が上がったらしい。そこから、父さんが自信を持った1着だけを自分が着色し、あとは他の人に依頼するという形をとっていた。今、父さんは海外に出張中のため、メールで依頼が来たらしい。多分期限までまだ時間あると思うから、ゆっくりやっていこう。父さんもそこまで鬼畜なことはしないだろう。
食事を終えると、片付けは母さんに頼んで仕事に行く準備をし始める。初出勤では無いので緊張はないが昨日、帰ったあとどうなったのかはわかっていないので少し怖い。メッセージは来たのだが挨拶みたいなもの。結さんがどういう心境なのかはわからない。お父さんには今日会わないとは思うが、毎日のように閉店間際の来店はやめてほしい。お父さんと話していると色々とボロが出そうになる。お父さんも忙しい人なので頻繁には来ないと思うのだが。そんなこんなで準備が終わり、出勤には早いが余裕を持って出ることにしよう。そうして家を出た。




