神に忘れ去られた少年 〜1億年鍛えた俺の素振りを見るがいい!その素振りは俺を追放した者達を凌駕する。戻ってこいと言われてももう遅い。俺は俺を追放した国へ侵略を開始します!〜
現在の連載の気分転換に書いてみました。よろしければ是非ともご覧ください。
時はエステラ大陸暦2452年春。
「おい!アンティネラ。お前はこんな簡単な書類も書けないのか???」
「こらぁ!アンティネラ!インクが溢れてこの書類が駄目になっちまったじゃねぇか。」
「おい、アンティネラ!残りの書類に目を通して、仕分け頼んだぞ。じゃ!俺定時なので上がりまーす。」
「俺も。」
「私も上がりますわ。」
「わしも今日は外せない約束があったわ。セフィアちゃーん。待っててねぃ。」
俺はアンティネラ。16歳。宮廷政務官だ。去年の春から俺は子供の頃からの夢であったカイザー王国の宮廷政務官に晴れて採用となり、日々書類仕事に精進している。
「くそっ!今日も徹夜じゃねぇか。」
俺は市販の眠気覚ましを口にしながら書類に目を通してゆく。
『王都内での窃盗における重罰規定の改定について』
『王国重罪人の死刑執行と割当について』
『王家予算増額の要請について』
俺は既に机の下に山積みになっている眠気覚ましを眺める。
ああ、俺っていつから寝てないんだっけ。
そんな風に思いながらも目の前の書類を朦朧とする意識の中で処理してゆく。
こんな酷い職場であっても俺はここを追い出された後に行くあてなど無いのだから....
チュン!チュン!
目の前には、俺は外から朝日を感じ取ると、目の前のランプから火を消す。
そして俺は今から出勤してくるであろう先輩達の為に紅茶の用意をする。
それも一人一人の好みに合わせてだ。
こうして俺は数日に一度、しかも2、3時間しか眠れないような生活を一年繰り返していた。
俺の夢と希望はズタズタに引き裂かれ、影も形も残っていなかった。
そんな日々が続いた俺にこれ以上無い不運が巻き起こる。
なんと宮廷政務官内部に裏切り者が出たというのだ。国家機密である情報が隣国であるアスファーン帝国に流れていることが発覚したのだ。
俺は真面目に仕事を......していたから関係無いだろう。と思っていたのだが、宮廷政務官に俺の味方はいなかった。
その日宮廷政務官への取り調べが入った。
一言で言えばそこはズブズブの泥沼であった。
なんと!俺の上司達は取り調べに来た役人に金を握らせたではないか。そうして口裏を合わせたかのように、俺の名前を出し始める。
「アンティネラが最近王国の書類を何かに写しとっているのを俺はこの目ではっきりと見たぞ。」
写しとっていたんじゃねぇ!王国予算の検算をしていたんだ!
「私は最近、アンティネラが休憩時間に外へ出る時私の知らない男と接触しているのを見たわ。」
知らない男って誰だ!?俺はこの場から出る時は、眠気覚ましを買う時だけだ!
「俺は少し前の夜、偶々ここへ忘れ物を取りに帰って来た時、アンティネラが大量の書類を抱えて何者かに連絡していたのを見たぞ。恐らく念話でも使っていたんだろうな。」
念話??俺は魔法が使えたらこんな政務官なんてやめて、別の仕事やってるよ!
そうして次から次へと口々に俺の罪が並べ立てられてゆく....
そして最後に俺の番になった時、俺はどうしようもなくみっともなくただ喚き散らすだけだった。
「違う!俺は違う!絶対にやっていない。信じてくれ......。」
「では、他の誰かが怪しい、気になるという動きを見たことはありますか?」
俺は言えなかった。この一年でこの職場で俺は上司へ逆らう牙を全てもがれてしまっていた。更に俺だけで、上司達の用意した袖の下を越える額を出せる筈もなく......。
「あり......ま......せん。」
俺は大量に散らばる眠気覚ましの空き瓶の上に崩れ落ちるのだった。
数日後....
俺は国王の前に連れ出されていた。
先日の拷問によって目も当てられぬほどに扱かれた俺は、耐えきれずに自白していた。
「お....俺....俺がやりました....。」
そうして国王の前で大臣によって罪状が読み上げられる。
「罪状。王国刑法第七条国家反逆罪。アンティネラは、カイザー王国宮廷政務官でありながら、国家の政治、司法、財政における重要機密情報を隣国アスファーン帝国に横流しした罪に於いて、王国民権を剥奪、並びにエステラ砂漠への追放刑に処す!」
それを聞いた国王が口を開く。
「アンティネラの罪を確定する。アンティネラは、身を焼く砂漠にて己の犯した罪の重さを反省するが良い。」
こうして俺の罪は確定し、王国を追放された。
俺は目には目隠しを。体には鎖が巻かれ、口には布をかまされたまま、馬車に乗せられていた。
馬車の音だけを聞きながら数時間が経った。段々と上がる周囲の気温に俺はのぼせそうになっていた。
そうしてしばらくうだる様な暑さが続いた後俺に急激な寒さが襲う。そんな時間を過ごして、寒さで凍えそうになった時、俺は俺の身体が砂の上に投げ出されたのを感じた。
しかし、拘束が解かれない。
パカッパカッパカッ..........
俺を乗せて来たと思われる馬車が去る音がする。
「んぐー!んぐー!んー!!」
俺は必死に叫ぶも布のお陰でくぐもった声が出るだけだ。
そうしてそのまま2度ほど赤熱の業火の様な暑さと極寒の冷気を浴びせられた俺は抵抗虚しく目を閉じるのだった。
目が覚めると俺は真っ白で神秘的な空間にいた。
俺は辺りを見回すも誰もいない。
「拘束が....無い?」
俺は自身を拘束していた物が無くなっていることに気付く。
そうして俺は察した。ああ、俺は死んだんだ。
「まだ死んではおらぬぞ?」
そこには幼い一人の少女が立っていた。
「我は神である。この容姿に関しては気にするで無いぞ。さてお主には二つの選択肢がある。一つはこのまま死ぬこと。もう一つは妾の用意した時の流れの無い空間で100年修行して再度生きるチャンスを得ること。さあどうする?」
俺は死んだと思い込んでいたがそうではないらしい。臨死体験とでも言うのだろうか。だが、もしもう一度生きられるのなら、あの絶望を脱すチャンスがあるのなら....俺はそう思った時心は決まっていた。
「俺に100年修行をさせてください!」
だが俺は後悔することになる。この後俺は神に忘れ去られ、1億年の歳月をこの空間で過ごすことになるのだから....。
そうして一億年の修行をした俺の新たな人生は幕を明けるのだった....!
どうだったでしょうか?
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