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第35話 行方不明その2

学園に着くまで俺達二人の会話は途切れなかった。

 少年…いや少女ケイトより学園のシステムを詳しく教えてもらった。


 ランキャスター王立学園は7歳から入学することが出来る。


 7~10は初等部で基本的なマナーや学問を学び。


 11~12は中等部でこの国や他国の歴史、さらに学問に加え。武芸や魔法についても学ぶ。


 13~18は高等部に上がると詳しい歴史や作法。魔物を使った実践訓練を学ぶ。


 学園には一般部と貴族部、王族部の三つに分かれており。貴族部と王族部はこれらの授業に加え、平民の上に立つ位置にいるための内政や外交、礼儀作法などの勉強をする必要がある。


 成績が優秀な生徒達は様々な特権を得られるが、足を引っ張る生徒は貴族だろうが他国の王族だろうが容赦なく退学させられる。それ故、生徒達は競い合うように勉強に励んでいる。


 7歳になった子供なら誰でもランキャスター王立学園に入学するための入学試験を受けられるが。


 試験を受ける際、一つだけ必要な条件が存在する。


 それは教会で洗礼を受けている事だ。


 どうやらこの学園の創立者、初代国王の勇者がそれだけは譲らなかったようだ。


 …まぁ彼の気持ちは理解できる。ステータスを得たお蔭で強くなれたんだから。


 学園の私有地に近付くにつれケイトと同じ制服を着た生徒をチラホラと見掛けるようになった。

 全員もれなくケイトと一緒に歩いている俺の姿を疑いの目で見つめていたが。彼女は周りの生徒達に安心するよう皆に笑顔で手を振っていた。彼女の気遣いが非常にありがたい。将来いい女性になるだろう。


『…流石のショウでも年行かない女の子に欲情なんてしないわよね?』


 …ナビリスは何を言っているんだ?


『俺は紛れもない紳士なんだ。そんな事あるわけないだろう?』


 全く伺わしいぞナビリスさんゃ。


『………それじゃ月神リート様には何故欲情したのかしら?しかも子供まで設けて?』


……………。


『全くの誤解だ、確かにリートは見た目は小さいが歳は俺より比べ物にならな…』


『ショウ?なにか言うとした……?』


『…っなんでも無いよリート。相変わらず可愛いよ。娘の面倒を見てくれて感謝するよ』


 神々の中でも上位に君臨する女神リートの歳を言おうとした瞬間、リート本人が念話に入り込んできた。神でも女性の年齢を言うのはタブーらしい。まぁ彼女は月が存在する世界では何処にでもアクセス出来る、実にチート神だ。


『ふふ、ありがとうショウ。貴方もカッコいいわよ。偶には私達の娘に顔を見せてね、皆ショウの事を心配しているの。ナビリスもショウが羽を伸ばすぎないよう、ちゃんと監視宜しくね?』


『畏まりました月神リート様。ちゃんと監視しておきます』


『ふふ、ちゃんと神としての仕事も忘れずにね?それじゃ私は行くわ。娘が管理する世界を探さないと…』


 そう言い終わるとリートは念話から消えていった。怖かった。神になっても女神達には絶対勝てないだろう。


「着きました!ここですっ!」


 ナビリスと念話で言い争いをしながらケイトとお喋りをしていたら、何時の間にか巨大な鉄製の門の前までたどり着いた。学園には平民用の門が南側に設置され、北側は貴族街へ繋がっている。


 学園の入り口には衛兵が門の両側に立っている。


 入り口の門に近付こうとする俺の姿を見つけた瞬間、一人の兵士がこちらへ近寄って来た。


「少しお待ちを。ここは学園の関係者以外立ち入り禁止となっております。何か証明出来る招待所などをお持ちでしたらここで提出をお願いします」

 

 衛兵の話し方は非常に丁寧だが、彼等の目には何時でも攻撃をすると伝わってくる。


「俺はここの生徒ケイトから指名依頼を受けたBランク冒険者のショウ。これが俺のギルドカードと依頼書になる」


 そう言うとポケットから魔力を流した黄金に輝くギルドカードと受付嬢から渡された依頼書を衛兵に見せた。


「っ!…二つとも本物ですね。失礼いたしました。我々もカトリーナ嬢を探しましたが、何処を探索しても見つける事が出来ませんでした。我々の分もよろしくおねがいします」


 本物だと分かると姿勢を正しくし敬礼をしながら状況を伝えてくれた。流石実力国家。普通では高ランク冒険者でも学園には入れないはずなんだが。まぁ彼等も俺が居なくなったら念の為にギルドと学園に連絡はすると思うが。


「そうか、俺も出来る限りの事をしよう」


 そう伝えると開かれた門を潜った。



「ケイトのお姉さんは皆から好かれていたんだな」


 そのまま学園の中へ入り、学内で話している生徒、学食で美味しそうな料理を食べている生徒。図書館で静かに勉強をしている生徒。様々な場所で姿を消したカトリーナの事について聞き回った。


 結果誰も彼女の行方は知らなかったが、皆彼女の安易を心配していた。中には泣きそうな子もいた。


 一応学園を一回りした俺達は中庭に設置されているベンチに座り、感じたことをケイトに伝えた。


「はいっ!自慢のお姉ちゃんです!…危ない目に逢っていないと良いけど」


「ああ、そうだな。カトリーナには何か趣味とか無かったか?」


 しんみりしてしまった少女に他の話題を振るためカトリーナの趣味について聞いた。


「ん~?家にいるとき以外は勉強ばっかりしてたし。…っあ!そういえば、ここ最近教会によく祈りに行ってるって聞いたかも!」


神眼で王都に築く教会を一通り確認する……、ビンゴだ。


「ケイトはその教会の場所とか知ってるか?」


「ううん。分からない…ごめんなさい」


 悲しそうに下を見ながら謝る彼女の頭に手を置き安心させる。


「気にするな。教会の事を思い出しただけでも一歩前進だ」


 俺は言葉を続ける。


「それじゃ教会の事をカトリーナの友達に聞きに行くか?」


「うん!」


 二人して立ち上がり学園に残って居るカトリーナの知り合いに教会の事について聞き回った。


「…ああぁ、そういえば確かに最近ある教会で祈りに行ってるって言ってたわね」


「本当っ!!何処か知ってる!?」


 聞き込みを開始し。先ほどと同じ場所を周り、彼女の知り合いに教会の事に質問していると。カトリーナと同じクラスの女子が何か思い出したらしい。ケイトが興奮し始めた。


 興奮する彼女の肩に手を置き、代わりに俺が詳しい事を聞く。


「落ち着けケイト。彼女が驚いているだろ。すまない」


「い、いえ。気にしないで、妹さんの気持ちも痛い程分かるから」


「そうか。カトリーナは何処の教会に通っているとか言ってなかったか?」


 優しく問う。彼女は手を顎に当てながら思い出そうとし始めた。

 数分後、何か思い出したのか目が目開いた。


「っあ!そういえば。王都で作れられたばかりの教会かも。綺麗で新しいって言ってたのを思い出したわ」


「そうか、その情報で十分に絞ることが出来る。感謝するよ、それじゃ俺達は早速その教会に当たってみるよ」


「まっ、待ってください!」


 クラスメイトに礼を言い、ここから離れようとすると俺を呼び止める声が聴こえてきた。後ろを振り向くと、先程の女子生徒だった。


「ん?どうした?」


 ケイトの手を握りながら聞く。


「あ、あのお名前を教えてもらっても…?」


 顔を真っ赤に染めながら俺の名を聞いて来た。


『ショウも罪な男ね』


 うっさい。


「俺はショウ。冒険者ギルドでBランクをやっている、宜しくな?」


「はいっ!こちらも宜しくお願いします!」


 門を出た俺達はそこに居た衛兵に分かった情報を提供すると、そのまま大通りを歩き始めた。


「えへへ」


「ん?どうした?」


 ケイトの手を握りながら新しく出来た教会の場所を聞き込みをしていると突然彼女が花が咲いたような笑顔を魅せてくれた。


「ん~?お兄さんって凄くモテるんだなぁ~って思って」


「そうか、美人なケイトにそう言われると有頂天になってしまう」


 ケイトが放った言葉に俺は苦笑するしかなかった。


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