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第139話 大野外演習その5

 ダリアと腕を組んで建物から出てきた俺達の姿を見た冒険者が目を皿のように丸くして驚愕する一面もあり、嫌みったらしい物言いする愚か者も居たが最後に出てきたリーバスとレンナの手を叩く音でその場は静かになる。

 高位冒険者のB級で実績や名が通った二人の事は素直に耳を貸すらしく、各々の武器を持ちリーバスの言葉を待つ。


「おはよう諸君、顔馴染みが殆どだが初顔合わせの同士も数人居るようだし自己紹介をしよう。俺はBランク『双魔剣』のリーバス!普段はB級パーティーのリーダーを務ませてもらっている。横に居るのはメンバーの『業炎のレンナ』今回の合同依頼では宜しく!」

「あぁ!俺達もよろしくだぜ!」

「同じ依頼を受けられて光栄です!」

「くぅー!いつ見てもレンナさん美しい。同じ馬車に乗れないかな」


 リーバスの紹介が終わると周囲の冒険者からさざ波のような騒がしさが耳を通り抜ける。

 人望も持ち受けているのか新人らしき冒険者達が一旦訓練を中断してリーバスをキラキラした目で視線を送っている。

 彼の使用武器が槍に対して二つ名が何故『双魔剣』なのか気になる所だが、誰も気にしていない様子なのでそっとしておく。


 一旦私語の声が消えたのをざっと確認したリーバスは口を開き再び切り出す。


「よし!それじゃ馬車に乗り込むより先に一つ取り決めたい事がある。『孤独狼』ショウに『鳥使い』ダリア…、A級の貴方たちよりランクが低いけど俺は魔術学園が行う野外演習の生徒護衛任務を何回もこなしている。演習の段取りや、森に出現する魔物の種類とか熟知していると承知の上で俺に…、今回の指揮任せて貰えないか?」


 それは俺とダリアに提案の申し出だった。初めから俺が他に指図出すつもりは到底無く、それどころか目的地の森に着いたら最後、学園の演習が終了する日までソロで活動するつもりだった。…ふむ、リーバスとは紳士同盟を組んだ仲、彼の指示に従ってみるのも興味がある。隣の彼女にも伺ってみる。


「ダリアはどうする?…俺は構わないと思っている」

「チュンチュン…。ん~、うん!良いよ、お兄さんと共同作業楽しみ!」

「ということだ、俺達二人リーバスの指揮下に加わろう」

「そうかっ!礼を言うよショウ!ダリア嬢も応じてくれて感謝するよ!」


 まさか、A級の俺等があっさり素直に従うとは内心思っていなかったのか、狼狽したような妙な瞬きをすると丁寧に礼を告げた。


「なら早速馬車の組み分け行う!ギルドより三台用意されているが、その内一台は食料品に飲み水、外傷を治療するポーション類等が積み込まれている!勿論各々が独自に準備した荷物を収納するスペースも残っている。よって一台の馬車に6人づつ搭乗する、名を呼ばれた者は左の馬車に乗ってくれ!依頼の詳細は現地に着いてから話そう。ではC級――」


 ギルドから個人の情報を得ているのか次々に名を呼ぶリーバス。呼ばれた者等も文句を垂れず従順に馬車へ乗って行く。…そして最初グループの六人目の名前が呼ばれる。


「――最後に皆の指揮を任された俺、リーバスで最後だ。名を呼ばれなかった他の者達はもう一台の馬車に乗ってくれ」

「ッげ!A級両方と一緒かよ!」

「片や鳥狂い、片や他国の無口野郎。依頼受けた事既に後悔し始めたぜ」

「…私は魅力的な美丈夫と相席になれて嬉しいわ。年若の高位ランク、彼のハートを撃ち抜けば勝組に成り上がるチャンスよ!」


 名を呼ばれ無かったのは俺を始めダリア、C級一人、E級の男女、最後にリーバスのパートナーでもあるレンナの六名。ランクが低くとも積もる思いを周囲へぶつける二人を無視して指定された馬車へ進む。

先に乗り込んで俺のエスコート待ちのダリアへ手を差し延べる。


「ありがとうお兄さん」


 礼を言う彼女に短めに言葉を返して掴んだ白い餅のように柔らかい細い手を軽く引っ張ればひらりと馬車へ飛び乗る。内部の構造は対席で案外広い、席の真下に鞄等を置けるスペースも完備されており六人入ってもぎゅうぎゅうにならないのは救われる。ダリアを御者から一番近い位置に導いて俺も隣の座席に腰を落とした。


「座席固くないか?痛かったら俺のマントをクッション代わりに使ってくれ」

「ちゅん…。優しすぎだよお兄さん。ピヨッ…。お姫様気分を味わえて私、お顔真っ赤になっちゃうよ!」

「ふふ、今更照れ隠しする事も無い、勝手にダリアを尽くしたいだけだ」


 恥ずかしそうに顔を赤めるダリアに茶々を入れるが。座席が堅くて股をもぞもぞ落ち着かない様子だったのでマントの留め具を外して彼女に手渡した。

 やはり俺の誤解じゃ無かったらしく大人しく丸めたマントを尻と席の間に挟んだ。

 それから他の冒険者達が同馬車に乗り込むまで二人でぼんやりとした会話を果てることなく続けていると全員が乗車したらしく、二頭馬を繋ぐ轡を握った御者が馬車の中にいる俺達に出発の合図を鳴らせば馬車が動き出した。







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