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第131話 会議開始

「皆…揃っているようですね」


 姿を見せた結社の絶対的な存在(モノ)。自らを盟主と名乗り、本名どころか種族すら知りいる者はおらず、組織の幹部ですらその正体を隠蔽した存在。しかしながら、組織に属する全構成員からはまるで主神如く崇拝された者。腰まで届く長い黄金を溶かした金の髪、髪の先は碧に染まっている。切れ長の眼は何処か遠くを見つめる瞳は黒と紫のオッドアイ。整った容姿は玲瓏で、耽美な顔をしている、例えるなら日が天に高く昇ったの陽だまりのような存在。

 背格好を隠したローブを着た盟主を筆頭に結社の大部分は秘密に隠されているが、現代の魔道具技術の水準を超えた先端技術を実用化し、様々な形で利用している。一例に、結社独自に開発した魔法属性、戦力として多用される機械仕掛けの武具。結社の構成員が移動を行う際に利用する移乗技術等々。


 結社にて暗躍する構成員には特記出来る才を持つ人間が多く、大陸有数の実力者が揃っている。魔法に特化した者、驚異的な実力を持つ戦闘要員。指折りの学識を有した者。…それら全ての才を積んだ大器。


「は……元『第六柱』を除きまして全員、揃いましてございます。黒十盟の幹部が一柱、御身の前に」


 ダークスーツを着こなした男が盟主の言葉に対して最上級の敬意を示しながら答える。


「黒十盟の幹部が二柱、御身の前に」


 皺一つ見当たらない白衣に眼鏡を付けた男が答える。


「ふぁあ~……。え~と、黒十盟の幹部が三柱、御身の前に…チュンチュンっあ、鳥さん達も!」


 鳥の巣ように絡まったボサボサ頭に花冠を置いた歳いかない少女が答える。唯一ショウと面識ある少女。その名をダリアと言った。


「……四、御身の前…」


 ボソッと小さき声で答えた正体は、魔物から剥いだ皮のコートを羽織った男。


「アアー、黒十盟の幹部が五柱、御身の前に」


 会議前には無差別に言い争っていたスキンヘッドの大男が慣れない敬語で答える。


「ウフフ、黒十盟の幹部が元第七柱、現在は六柱と名乗っておりますわ、至高の御身の前に」


 ワインレッドを基調とした肉体の視聴が激しいドレスを余すことなく着こなした若い妖艶な美女が答える。


「…ご苦労。本日までの活動、大儀でありました」



「恐れ入ります。…すでに事の顛末はご存じかと思いますが…」


 一旦口を閉ざした男、第一柱は円卓に置いた報告書を手に取り、掲げる動作で盟主に手渡した。


「……確かに受け取りました。…進歩は確実に進んでいます。しかし、支払われた代償は余りに大きい、元六柱ガディ・ノーバス……そして影族の二人。いえ、それだけではなく計画にまつわる全ての犠牲も…。全ての責は僕にあります」


「め、滅相もありませぬ!」

「…どうかご自分をお攻めにならないでください」


 悲しそうに目を伏せる盟主に二柱と六柱の二人が慌てた様子で宥める。


「退く瞬間を間違えた元七柱殿の死は自業自得というものでしょう」

「もし責められるならば、彼を諫めもせずに看過してきた我々『幹部」全員のはずです」


 更に盟主の隣に座った一柱も会話に加わった。


「いいえ、この事態を僕はなかば想定していたのです。貴方もそうではないですか一柱殿?…それでも僕は、目的の為とはいえ、全ての決定を彼に委ねました。それが、我ら結社にとって必要と判断したが故に…ですから全ての責は僕にあるのです」


 しかし、盟主の気持ちは変わらない。円卓より目を逸らさず返答した。円卓に描かれた輝く三日月、美しい三日月が、盟主の瞳を照らす。


「盟主様……」

『……』


 何とも言い難い空気が澱むが、流れを打ち切ったのは意外にも四柱の男だ。


「……一柱、…誰が。…やった?」


 正確な言葉は彼の口から出てこなかったが、言いたい意味を十分察している一柱は報告書の字をざっと流し読んで、胸に湧き上がるある種の予感を前提として神妙に答える。


「別段、何か根拠があるわけでもなく、私の勘ですが…我々の敵対勢力では無い事は確かです。それに結社内での裏切りでもありません、その証拠に元六柱殿の『ミルトリウスの杖』は遺体の傍に転がっていた…、ですよね?第五柱殿」


「ああそれは間違いねぇ、子分から連絡が届いて現場から一番近かった俺が直接出向いて確認した。『ミルトリウスシリーズ』の方はとっくに技術班へ提出済みだぜ」


 幹部になった者のみ盟主より授与されるミルトリウスを司る装備。現存する武具とは境目を飛んだ強大な効果持った通称『ミルトリウスシリーズ』。一例を挙げるとすれば、第一柱が所有する『ミルトリウスの書』。辞書より分厚い厚みを持つ書物には大陸で起きた出来事を自動で物語風に変換、記した書。言うならばアカシックレコードの超劣化版。欠陥を挙げるならば、一度でも書から消失した出来事は二度と書に記す事は無い。


「私の『書』には使用者を失いし同種の杖が落ちている場所、だけが記されていました。下手人へ繋がる情報は一切見受けられませんでした」


「私も認識同調の性能を持った使役魔物で現地に目を通したけど手掛かりゼロだったわ~」


 艶を帯びた唇に薄っすらと笑みを浮かべ二人の内、年若い妖艶な美女である六柱に昇格した女が会話に加わった。


『……』


 少しの間、沈黙した時間が流れる。今まで起きなかった異変が重なった事実に誰も口に出せないでいた。

しかし、突如沈黙を破った者が現れる。


「……ちゅんちゅん、っえ、どうしたの幻鳥さん?…ッちっちっち、うんうん。――ほ、本当なの、お兄さんが?ピーピピヨピヨ、へぇ~そんな強かったんだ!チュチュニー二ー、っへ、一太刀でガディ爺を滅したの!?凄いよ!」


「――っちょ!ちょっと!第三柱ちゃん!ジジ様をやっつけた人物が分かったの!?」


 ショウと魔都ギルドで顔を合わせ、言葉を交わした『鳥使い』ダリアが発した言葉に全員の視線が彼女へ集まり、同性である現六柱の女性は思わず円卓に身を乗り出す。一瞬にして注目を集めたダリアは両手を腰にやり、その不熟した胸を張って誰からも見えるドヤ顔を剥きだした。


「えっへーん!まだまだだねお兄さん!上手く隠したようだけど私の鳥さん達には敵わないよ――チュンチュンチュン…ええぇ傲慢は良くないって?うぅごめんなさい鳥さん」


 質問には答えず、誰の眼にも映らない鳥達と会話を続けるダリア、ガン無視された六柱の女は内心じんじんと音を立てて湧き上がる怒りで体を振るつつも、何を言っても無駄だろうと思って何も言えなかった。代わりに喉もとにせり上がってきた熱い言葉のかたまりを、円卓に置かれたグラスを手に取り、中の液体と一緒に飲み下す。


「三柱殿、その『お兄さん』とはお知り合いなのですか?」


『ミルトリウスの書』を開いた一柱が尋ねた。


「チチチチ、チュン……っえ?一柱さんの質問に答えろ?え~とね、お兄さんとは冒険者ギルドで初めて出会って、私の友達になったカッコいいお兄さんだよ!名前は…チュンチュン――っそう!『孤独狼』のショウ!確かランキャスターから来たって言ってたよ」


 ガディ・ノーバスを討った張本人と思われる名前がダリアから告げられた。相手の言葉を復唱するように他の幹部が繰り返し言う、特に女性の六柱はダリアが加えたカッコいい部分を詳しく聞き出していた。


「寄りによってランキャスターに拠点を置く実力者かよ、…って、何でランキャスターの輩が他国に居るんだ?」


「約一週間前、王都ランキャスターより使節団が訪問されたようですね。名目上は五年前の前回と同じ、互いに優れた産品や新技術などを持ち込んで、披露するのが目的のようですね」


 スキンヘッドの大男の問いはペラペラと書を捲っていた一柱の男が口にした。


「……つまり…偶然」

「魔術に酔狂だったが実力はピカイチだったジジィが()()居合わせたぽっと出の冒険者に運尽きて敗れたってか?ジジィだけじゃ無く手下に大量魔物をプラスして?信じられねぇな、まるで現実味を感じない」


「…いえ、これは――素晴らしい功績です」


 テーブルに両足を放り出し、腕を組んだ五柱の大男に答える。ミルトリウスの書を広げて紙面に顔を近づけ、一字一句漏らさないように本文を読んでいる一柱へ視線を向けた。


「書に示された内容には、ランキャスター王国冒険者ギルド所属、二つ名『孤独狼』を持つAランク冒険者ショウ殿はギルドに登録して半年間で上級冒険者まで登り詰め、あの『塔』の第51階層を単独突破。これまで受けた依頼は数少ないが、成功率10割、ついでに今使節団総団長を任された王国第三王女と婚約の儀を結んだらしいですね。才の塊を一身に受けた存在、まるでこの世の理の外側にいる人物」



一話で会議を終る予定でしたが次回に続きます…。

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