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私が召喚したのは天使なのだろうか!?  作者: 澤田とるふ
天使召喚!?
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プロローグ

本日より連載開始させて頂きます。

しばらくは連続で投稿しますので、どうぞ宜しくお願い致します。



 国の名はルクセイン、そしてここは王都と辺境の中間点、中途半端な領地。

 その領地を統治するはソーラサーヌ家、王家より子爵の地位を代々受け継ぐ名家である。


 そして、今、その子爵家令嬢がまさに成人の儀を迎えようとしていた。


「我が呼びかけに応じ、我が従僕となる忠実なる者よ。扉より出でて、我が前に姿を示せ。」


 魔方陣の中心で、13歳になった少女が言葉を紡ぐ。

 その言葉に呼応するように、足元の魔方陣が明滅を繰り返していた。


 魔方陣から少し離れた後ろの場所に、彼女を心配そうに、見つめる両親、そして従者達が控えている。


「ずいぶんとかかるな・・・。」


「えぇ・・・でもきっと大丈夫。自慢の娘なんですから。あなたのように立派な従僕を手に入れるはずよ。」


「ソフィア・・・。」


「あなた・・・。」


 抱き会う二人、すでに二人は娘を見ていない。

 ため息をつく配下の者達。


 その空気はいまだに詠唱を続けているメリエットにも伝わっていた。


「我が呼びかけに応じ、我が従僕となる忠実なる者よ。扉より出でて、我が前に姿を示せ。」


 すでに何度目になるのだろう。この詠唱を続けてからかなり時間がたったように感じる。

 魔方陣は明滅を繰り返すばかりで、扉すら現れる気配がない。

 もともと魔法に自信をもっていた自分としては、今の状況は納得がいかない。


(どういうことよ・・・はやく出てきなさい!)


 少し苛立ちながらも、詠唱を続ける。


(ていうか、お父様もお母様もすでに私を見てないじゃない!何しにきたの!?)


 イライラを募らせながらも、詠唱を続ける。

 本当にもう何度目か・・・誰でもできるはずのこの儀式がまさか失敗するのかと不安に思った時。

 ふっと、おかしな感覚が身体を支配する。


 それは初めての感覚だった。

 胸の内から湧き上がる何か。その何かがわからない。

 目の前が真っ暗になって、魔力が暴走する気配。

 まずい!そう思って意識を保とうと気合を入れて目を開けた瞬間。


 そこには大きな門ができていた。

 人ひとりが通るには少し大きい、立派な空間の歪。

 門、ゲートとも呼ばれるこの紫色の歪は、この儀式がほぼ成功したことを示している。

 この儀式は自分に相応しい従僕と自分をつなぐ通路なのだ。

 この世界ではない違う世界につながる道。そこを通って従僕は現れる。


 あとはこの門をくぐってきた者と契約し、従僕とすれば、儀式は無事完了する。


 ああ、やっとだ。

 やっと自分も一人前と認められる。

 王国では10歳で魔法か剣の道を選び、13歳で成人の儀、魔法の道なら従僕を召喚し使役する儀式を行う。

 そして16歳で結婚し、18歳で子を授かる。

 これが平均的な道筋だった。

 他の国だと15歳ですでに子持ちという状況が普通らしいが、うちの王国は違う。

 13歳から2年間の学園での就学が義務付けられているからだろうか?

 ・・・って、今はそんなこと考えてる場合じゃない。

 私の従僕はまだ!?


 ドキドキしながら、何が出てくるのか待つ。


 かっこいい魔獣だろうか、それともお父様のように人狼?

 かわいい魔獣も捨てがたい。


 ・・・なかなか出てこない。


 どんな子がでてくるんだろうか。欲をいうなら、天使がいい。


 もちろん、無理なのはわかっている。


 普通の召喚ならともかく、最初の従僕として天使を召喚できる魔法使いはかなり少ない。

 血筋がよく、才能もあり、そして努力家。そんな魔法使いだけだ。


 私も血筋と努力には自信があるけど、才能は・・・よく見ても並みだと思う。

 だからせめて少しでも有能な従僕を召喚し、魔法使いとしていつか私も天使召喚を成功させたい。


 天使の召喚、特に上位天使の召喚は魔法使いの至高だ。

 私はどちらかというと、結婚とかよりそっちに興味がある。


 ・・・にしても、出てこないな・・・。

 もう結構時間がたってるんだけど。


 おぉー!とかついに!って沸いてた見物人も静まり返ってしまった。

 お父様とお母様はまた何か言い合って抱き合いを始めた。


 えっと、もう一度、詠唱とかしたほうがいいの?これ。


 私がどうしようかと後ろにいるであろう魔法使いの先生に助けを求めようとしたとき、

 ついに門がひときわ輝き、中から手が出てきた。

 手は門の外枠?をつかむ。

 ・・・え、そこつかめたの!?


 中から出てきたのは黒髪の男性・・・いや、少年?

 身長はあまり高くない・・・というか12,3歳ぐらい?若く見える。

 顔も・・・整っているけど、かっこいいというよりはかわいい。

 騎士服のような服を着て、腰には剣を携えて・・・え!?人!人間!?


 手足を見ると普通の人間だ。

 顔を見ても角なんかは生えてない。


 人間を召喚しちゃった!?

 そんな馬鹿な!


 だが私の焦りは早とちりだった。

 完全に門から出た彼は、バッと、背中の真っ黒な羽を広げたのだ。


 その羽は真っ黒で、しかしとてもきれいな羽だった。


「汝が我が召喚主か?」


「・・・え、ええ、そうよ。わ、私はメリット!・・・あなたは?種族はなに?」


 すると、彼はしばらく私を見つめて、目をそらした後。


「俺はセロ。天使族だ。」


 そういって、私の前に跪いた。





<Another>-------


「ついに儀式がはじまるな。」


「ああ。」


「なんだ?嬢ちゃんの従僕に今から嫉妬か?」


「・・・まさか。」


 相棒にはそう答えたが、嫉妬がないといえば嘘になる。


「しかたねーよ。13年ちかく見守ってるんだからな。」


「12年、8ヶ月と12日だ。」


「・・・怖ぇよ。細かいこというなよ。」


「使えるやつならいいが、あまり感の鋭いやつだとうっとうしいな。」


「見守る方からするとそうだよな。けどよ、見守るだけで目的は達成できんのか?」


「それは・・・考えている。」


「・・・どうだか。そろそろ召喚されてるころかな。さすがに見に行けねーのが口惜しいな。」


「さすがに地下室には入り込めない。見つかるわけにはいかないし、それに、すぐに見ることになるさ・・・ん?」


 ふと、気配を感じて後ろを見る。

 そこには紫色のゲートが現れていた。


「・・・なんだと!?」


「・・・ゲートだな・・・どこから?」


「入らなくてもこちらからは向こうが見えるな・・・。」


「・・・嬢ちゃんだな。」


「・・・どういうことだ?」


「こりゃー笑えるぜ。無意識か?それとも魂の叫びか?向こうもお前さんを希望らしいぞ?こりゃいい!これからは見守るんじゃなくて傍に仕えることができるようになるじゃねぇーか。」


「・・・まさかこんなことが。」


「久々に見たな。お前のそんな顔。ほら、早くいけよ。待ちくたびれてるぜ?」


「いや・・・しかし。」


「出たもんはしゃーねーだろ。腹くくれよ。」


「そうだな・・・。えっと、どうすればいいのか。」


「まさかお前が召喚されるなんてな。こりゃ面白くなりそうだ。」


「笑いごとじゃないだろう・・・。」


「いや、笑い事さ・・・本当に人間はおもしれぇな。」


「そうだな。」


 相棒と俺は薄く笑い合いながら、紫のゲートに手をかけた。

 うん、掴めるらしい。


 向こう側にでると、いつも見ていた少女が驚きの顔を向けている。

 こんなに間近で見たのはいつ以来だろう。

 こちらから話かけるのが礼儀か?


「汝が我が召喚主か?」


 するとメリエットは慌てながら、答える。


「・・・え、ええ、そうよ。わ、私はメリエット!・・・あなたは?種族はなに?」


 しまった・・・名前を考えていなかった。

 ・・・どうしよう。


「私はセロ。天使族だ。」


 とっさに出た名前に、腰の剣が笑うように震えた気がした。


次は12:00に投稿予定です。

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