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夜空の旅  作者: 小宮 海
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第四夜 鳥と谷の星

今回は、鳥と谷の星

心地の良い、風が私達にそよぎ、私の頬を通り過ぎました。


 今度の星は、鳥と谷の星です。


 汽車から降りれば、よく見ると谷の彼方此方に可愛らしい家が立っていて、見上げれば鳥達が、空を泳いでいました。


 谷は、足場が少し悪くて、降りるときはエドワードさんが手を差し伸べてくれたお陰で、何とか歩けました。


 そして、上空から大きな鳥さんが二羽降りてきて、私はエドワードさんの後ろに隠れました。


「大丈夫だよ、空。この子達は、大きいだけで、気性は穏やかだから」


 エドワードさんが、クスリと笑いながら私に言いました。


 私は動物は好きですが、こんなに大きな鳥さんは、初めて見ましたので驚いてしまいました。


「ごめんなさい、だって、ビックリしたから…」


 目の前にいる鳥さんは、私達を見て首を傾けながら、クゥ?と鳴いていました。


「あっはっはっ!驚くのも無理無いさ!この星に来た人達は、皆ビックリするからね!」


 明るく、そう言ったのは褐色の肌と、明るい銀髪の髪の長い女性でした。


 お腹を出した服に、ショートパンツを履いた彼女はひらりとその子達から降りると私達に握手を求めながら、言いました。


「初めまして、お客人。あたしが、今回の案内役を務める、ルフナって言うんだ。よろしくね」


 ルフナさんは、私達を谷の中にある村に案内してくれました。


 谷は、とても深く広く、移動手段はこの大きな鳥さんが必要な移動手段だとのことで、彼女達は、皆、乗るための訓練を小さい頃からしているとの事です。


 私は、乗る前に先程驚いて隠れてしまった事を鳥さんに向かって謝りました。


「ごめんね、怖がって…」


 そう言うと、鳥さん達は私のところに興味津々に近付いてくると、


 私の顔や体に擦りよってきました。


 戸惑って優しく頭を撫でれば嬉しそうにしていて、ルフナさんは、へぇ…と感心したように出していました。


「その子達、他の子達よりもかなり人懐っこいけど、初対面の人に其処までするのは、今まで無かったんだよ。アンタ、どうやら好かれやすいんだね」


 優しい眼差しで微笑みながら、私達を見ていたら、ルフナさんより一回り大きな、寡黙そうな短い黒い髪の男性が、いました。


「ルフナ、そろそろ案内」

「あいよ、さて、あんた達。そろそろお客人を村に案内するんだからそれくらいにしな」


 そう言うと二羽は、名残惜しく離れていきました。


「さてと、ほら、案内する前にこの子達に挨拶したらどうなんだい?」


 呆れながら、男性に言うと、軽く会釈して


「俺は、ハストだ、宜しく。」


「初めまして、エドワードです」


「初めまして、空と言います。」


 今更、挨拶していないことに気付いた私は、慌てて挨拶をしました。そして、その様子を見たルフナさんは、やれやれと言って、


「全く、もうちょっとウチの亭主は愛想良くできないのかねぇ…気を悪くしないどくれよ?口下手だけど、亭主なりに歓迎しているんだ」


 お二人は、どうやら夫婦で、私達を案内してくれるようでした。


 そう言って、私はルフナさんの乗っていた子に、エドワードさんはハストさんの乗っていた子に乗りました。


 ルフナさんに捕まって、その乗っている子の背から落ちないように下を見れば、


「わぁ…凄い、本当に飛んでる……」

「そりゃそうさ!さて、このまま村に行くから、しっかり捕まってな」



 私は、自分の飛んでいる空の下がどうなっているのか気になり、下を見てみると……



  辺りは、一面の緑に覆われた深い緑の森に、そこの隙間から覗く、遠目から見ても分かる綺麗な川、そして、飛ぶ練習をしているのか小さい子と一緒に乗っている大人の人が、崖の上で鳥さんと訓練をしているのが分かります。


 時々、私達が通りかかると色々な方々から声を掛けられます。


「ルフナ!その人達、お客様?」

「そうだよ!今日、来たばかりのお客人さ!」

「そっか!お客様!いらっしゃい!楽しんでいってね!」


「ハスト!その人等は、お客さんか?!」

「そうだ。今から谷の中の村に案内する」

「なる程な!谷の村は、良いところだ!よろしくな!ハスト!またな!」

「あぁ、また」


 皆さんは、私達を見ると歓迎してくれていて、気さくに声を掛けてくれました。ルフナさんは、私の様子に笑いながら、楽しそうに言いました。


「此処にいる連中は皆、お客人が来るととても喜ぶ、この子達みたいに人懐っこいヤツらばかりなのさ。」


 

 ルフナさん達に、降ろされた村はどこもかしこもレンガのような家の真ん中に風車を着けていました。


「あの、風車は私達の生活に欠かせないんだ」


「谷では今の季節は強い風が吹くことが稀だが、他の季節では度々吹く…風車は、その時の風の様子を分かりやすくするためだ…俺達は、谷の中で鳥と風と生きる者だから」


 そう言って、私達は村の中を歩きました。


 村人達は、私達に気付くといらっしゃいと行ったり、会釈してくれたり本当に歓迎してくれているのが分かって、嬉しく思いました。


 家の少し離れた小屋には、私達が乗ってきた鳥さんがいて、ある家では子供と遊んだり、ある家では手入れをされていてまた、別の家ではのんびりと眠っていました。


「とても、のどかな村ですね」


 私がそう言うと、エドワードさんは


「そうだね…本当に、此処はいつ来ても変わらない、良い場所だ。また来て良かった…」


 懐かしそうに言うと、目を細めて言いました。


「エドワードさん、もしかして来たことあるんですか?」

「随分前にね…空、気に入ったかい?」


 優しく、笑うエドワードさんに私は、


「勿論、です!」


 笑顔で変えました。そんな私達を見て、ルフナさんは、そうかい、良かったと言って、ハストさんもそれは何よりと、表情を柔らかくしてくれました。


 風車の中のお店では、鳥の羽を加工した髪飾り、そして可愛らしい、鳥籠のネックレスがありました。


 鳥籠のネックレスは、なんと、中に小さな物が入れるくらいの、本物の鳥籠になっていて、指で少し策の部分を引っ掻くと簡単に空きました。


 小さな鍵も付いているみたいで、その鳥籠のネックレスとセットになっていて、私はそのネックレスを見て、思いつき、直ぐにそれを買いました。


ー…これなら、アレが入れるくらいのスペースかも…ー


 そして、ルフナさんと一緒にいた私は、別のお店でハストさんと一緒にいた、エドワードさんと合流してお昼を取りに、行きました。


 お昼ご飯は、お店で、なんと谷で取れた牛のローストビーフに村で自家栽培している野菜を添えて貰い、根野菜の入ったスープに作りたてのパンを四人で食べました。


 オリジナルの美味しい甘酸っぱく、そして少し辛めのソースにエドワードさんと二人で美味しいと言いながら、全て食べてしまいました。



 暗くなり、私達は明日に備えて眠るために、二人にあの子達に乗せて貰いながら、飛んでいると……


 何処か、綺麗な音のような……だけど、歌声のような不思議なモノが聞こえてきました。


「凄く、綺麗な音です…」


 思わず、そう言うとルフナさん達は、


「あぁ…この時間なら、ちょうど聞こえてくる時間だね」

「君達は、初日で聴けて、幸運だったな」


 二人の言葉に、首を傾げると、エドワードさんはなる程な…と言っていて、私だけが分からず、何だろうと思うと、


「この、鳴き声はね、鳥神様の声なんだ」


「鳥神様?」


 鳥の、神様と言うことでしょうか?


「鳥神様は、夜になると目を覚ましてこうして時々鳴くことがある。だから俺達の間では、鳥神様の声をこうして聞くことが出来るが、お客人が来るときはめったに聞くことが出来ない…」


「だから、幸運だと言うことなんですね」


 ハストさんの説明に、先程の言葉に納得しました。


「鳥神様と、私達が呼んでいるのはね鳥神様は私達が生まれる前の、この星が出来た時に産まれたと言われる、鳥なんだ。鳥神様は季節ごとに色々な場所に行くんだ。この谷もその一つ。鳥神様の住処は、この星の全てが住処だから。だけど、鳥神様は、私達のような人が村を作れば其処を害することは無くて、それどころか、森の中や空の上からそっと見守る、慈悲深い神様なんだ」


 優しく語る、ルフナさんの鳥神様の話に、私は心が温かくなります。


「とても、優しい神様なんですね…」


 その言葉に、そうなんだよと、まるで、お伽話を聞かせた後の声で言いました。


「だが、悪戯好きな面もあってな、偶に俺達の村や他の所にも現れては、驚かすことがあるんだ。小さい頃、父と一緒に川で魚を取りに行って、遭遇して驚いたな」


 うんうんと、頷きながら話すハストさんに、エドワードさんは、


「随分、お茶目な神様なんだね」


「確かに、私達の前に現れて驚いた後、楽しそうに去って行く姿は、鳥神様には悪いけれど、悪戯が成功した、子供のようだったよ」



 エドワードさんの言葉に、ルフナさんはそうだと行って、私達はこの、美しい旋律を奏で続ける鳴き声を効きながら、汽車に戻りました。


 二日目は、村から少し離れた谷の中の森に案内してくれました。


 足場は、比較的安定していて、私達は案内された湖に行きました。


「此処が、この谷一番の湖さ…よく見てごらん?底が、透明だろ?」


 今、私達は崖の上で綺麗な湖を見ていました。ルフナさんに言われたとおり、透明な湖の底は、深くて底には沢山の魚達がいました。


 エドワードさんに、落ちないようにと肩を手に添えられて、中を落ちないように見ています。少し、近すぎる距離に、緊張しながらも湖を覗きました。


「魚さ達が、何をしているのか分かるくらい綺麗です」

「こんなに澄んでいる湖は、此処の星ではこの谷くらいかもね」

「あ、魚が今、少し跳ねました」


 そんな、のんびりした時間に私は心が癒されていた時でした。



 突然、大きな何かが、私達に舞い降りてきました。


 私は、エドワードさんに思わず捕まりましたが、ルフナさん達は、


「まさか、鳥神様……?」

「珍しいな…」


 驚いて、声を出していました。鳥神様と言われた鳥さんを、ゆっくりと見てみると…


 綺麗な、銀色の羽に、長く淡い色をした二色の紅色と青色の二手に分かれた緒、そして、綺麗な……宝石をはめ込んだような琥珀の瞳、何より、ルフナさん達の子よりも二周りくらい大きな姿…


 何よりも、その瞳は私達は見ると、昨日ルフナさんに言われたとおりに慈愛にあふれた優しげな瞳をして私達を見ていました。



 そして、鳥神様は…まず、ルフナさん達を見た後にエドワードさんを見て、最後に私を見た後、



 私だけ、長く見ているような気がしました。そして、目をゆっくりと閉じて、その場から飛び去りました。


 余りのことに、驚いてしまい、暫くエドワードさんと顔を見合わせていると…


「空、あんた達本当にツいてるよ…鳥神様をあんなに間近で見たお客人は、あんた達が初めてだ」


 ルフナさんの言葉に、私は、頷く事しか出来きませんでした。 



 そして、最後の三日目は私達は、ルフナさん達と共に、鳥さんの乗る、練習場に行きました。


 小さな子供達が私達に気付くと、直ぐによって来てくれて、何処から来たのか、名前は何かと聞かれて、エドワードさんは、少し困った表情で、答えていました。


 子供達は、私達が旅人だと知ると、自分達の鳥を一番先に見せようとして、腕を引っ張られてしまい、私は、エドワードさんを盗み見ると、


 引っ張られたエドワードさんは、躓きながらも、一番元気そうな子供に連れて行かれてしまいました。


 その様子に、私は微笑ましく思い、その子達とその子達の鳥さんと遊んだり、練習風景を見せて貰ったり、一緒にご飯を食べたりして、とても楽しく過ごしました。


 帰りの際、私よりもクタクタになったエドワードさんが言いました。


「空、君は子供が好きなのかい?」


 少し、疲れ気味なエドワードさんに私は、


「はい、可愛くて、元気で良いですよね?」


 そう言うと、


「元気過ぎるのも、悪くないけど…少しは、加減して欲しいかな…」


 と、言いました。


 最後の夜、私はこの、のどかで優しく、楽しい村との別れを名残惜しく思っていた時です。


「えっ…」


 あの、二日目の湖で会った、鳥神様がいました。私は、汽車から降りると、


 鳥神様は、私をあの時みたく優しく見つめると、私に向かって、首を下げてきました。


 その動作は、まるで、


「どうやら、空に乗って欲しいみたいだね」


 いつの間にか、エドワードさんが隣にいました。私は、確認のために言いました。


「あの、乗っても、良いの?」


 そう言うと、鳥神様は、まるで勿論だと言うように、頭をまた、先程より下げてきました。


 私は、エドワードさんに手伝って貰いながら、乗りました。そして、鳥神様は、エドワードさんにも乗るように促して、


 エドワードさんも、私の後ろに乗りました。


 そして、銀色の翼をはためかせ、私達は大空に上がりました。



 エドワードさんは、私を落ちないように支えてくれて、私は、空いている手で優しく掴み、空と森を見ました。


 月は、私達の近くまでいるようで、その光は私達が行く先を導き、そして、鳥神様を一層美しくしていました。


 鳥神様は、私達が出会った湖まで来ると、湖に着くくらいまで、飛んでいました。


 光が、月しか無いのに、湖は鏡のように空に瞬く星々を映し出し、魚はその湖でまるで空を飛んでいるように映し出していました。


 月は、そんな鏡の湖を淡く優しく照らして、私はこの風景をエドワードさんと一緒に見ているので、二人でとても得した気分になりました。


 そして、谷の中の村に行くと明かりが付いていました。空から見る、その景色は、小さなおもちゃのような家見たいで、可愛く思いました。


 その中に、少しだけ近づいて見ると、ルフナさん達が見えました。


 ルフナさんは、ハストさんと穏やかな顔をして、何か話しているようで、ハストさんはそんなルフナさんを抱き寄せていました。


 二人の様子をこのまま見るのは、何だか申し訳なく思い、そっと離れました。



 帰り道は、鳥神様が大回りをして私達を汽車まで送ってくれました。


 エドワードさんは、先程の二人を見て、仲が良かったねと言っていて、私も頷きました。



 鳥神様は、私達を汽車まで送ると、エドワードさんに擦りより、今度は、私にエドワードさんよりも、長く擦りよってから、一回だけ振り返って、その慈愛に溢れた眼で、見て、遠くに飛び去って行きました。


「最後の夜、本当に得したね」


「はい…もう、嬉しくて、楽しくて…胸がいっぱいです」


 胸を両手で抑えて、とても満足して胸の中がたくさんになった私は、鳥神様が落とした綺麗な銀色の羽を両手で持ちました。



 そして、この星を離れるとき、ルフナさんとハストさんが見送りに来てくれました。


「それじゃ、二人とも元気でね…」

「また、来ることがあったら、いつでも頼って欲しい」


 二人の言葉に、私とエドワードさんは、


「ありがとうございます。ルフナさん、ハストさんどうか、お元気で…鳥さん達も、元気でね」


 私は、ルフナさん達の子の頭を撫でると嬉しそうにクゥと鳴いて、気持ちよさそうにしていました。


「お二人も、どうかまた、会えたらよろしくお願いするよ…それじゃ、空、行こうか」


 エドワードさんの言葉に、私は二人にお辞儀して、汽車に乗りました。


 優しく見守る二人に手を振って、私は見えなくなると、不意に森の下を見ました。



 そこには、鳥神様が私達を見送るように見守って、あの時と変わらない優しい目で見て、綺麗な、汽車の中まで聞こえるあの、美しい鳴き声を一声出した後、何処かに去って行きました。


「空、そのネックレスの鳥籠の中に入っている物ってもしかして」

「はい、水の星で、あのクジラさんに貰った、銀色の真珠を入れてみました。」

「なる程ね…金色の鳥籠に銀色の真珠か…うん、似合ってる」


 エドワードさんから、言って貰い私はお礼を言って目を閉じてそっと、鳥籠を握り締めました。


 鳥と谷の星は、優しくて素敵な人々が人懐っこい、賢い鳥と一緒に住み…とても綺麗で優しくて、愛情深い、だけど少しお茶目な鳥の神様が住む、場所でした。

鳥と谷の星のイメージは、オランダをイメージしています。鳥神様は、自分の星に住む人達が大好きで、外から来る人も好きな、だけど長く生きているから賢い鳥です。


それでは

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