第三夜 水の星
今回は水の星。
あの、猫の星から暫くして、今度は水の星に行くとエドワードさんが言っていました。
「水の星は、その名の通り星が全部水に浸かっているんだ。」
私は、お昼ご飯を食べながら、少し不安になることがありました。なのでエドワードさんに質問しました。
「…あの、エドワードさん…空気とか、大丈夫ですか?」
エドワードさんは、一瞬驚いた顔をすると、
「あはは!大丈夫だよ!水の星は、その星で水が酸素ごとあるから心配ない。只、やはり水だから服は濡れてしまうね。」
…私は空気があることに安心しましたが、服の問題が出て来ました。替えの服はありますが、やはり濡れるとなると服が水を吸って重くなる可能性があります。私が、悩んでいるとエドワードさんはにっこりと笑って、
「大丈夫。僕に任せて。」
私は、少し考えて頷きました。
そして、水の星に着きました。駅員さんからは、今回も三日間滞在すると言っていました。そして、私はエドワードさんからある物を渡され、それを借りて一緒に駅から降りました。そして、目の前には青い魚がいました。青い魚は私達を見て、
「いらっしゃい。ここが水の星だよ。ボクのことはヤールと呼んでくれ。それから、もう一人紹介するよ。」
そう言って、ヤールさんの後ろから、人間の…だけどよく見ると下半身が紫色の魚の鰭をもつ、綺麗な金色の髪の女性が現れました。そして、女性は私に向かってにこりと微笑むと、
「始めまして、私は人魚のアイサ言います。ヤール叔父様と今日は案内させて貰うわね。」
そして、私達の自己紹介を終わらせると二人は、街まで案内してくれました。…猫の星の時よりは驚きませんでしたが、やはり少しびっくりはしてしまいます。そして、アイサさんが私に向かって、
「ところで、服は……あら?濡れてないわね。良ければ服を用意させて貰っていたのだけど…」
「すみません、ありがとうございます。実はエドワードさんから濡れないように借りたんです。」
「おや、これは……」
私は、アイサさんにエドワードさんから借りた物を見せるとヤールさんが気付いたように不思議そうに言いました。
「珍しい代物だね。これのお陰で大丈夫だったんだね。あなたが腕に付けているブレスレットは昔、別の人も着けていたんだよ。」
「あら…叔父様知っているの?」
「…ボクがまだ若い頃にね、一人の男性が着けていたんだ。そのときもボクは案内をしていてね…懐かしいなぁ…。」
ヤールさんはそう言って優しそうな目で私とブレスレットを見ると笑いかけてくれました。エドワードさんから借りたブレスレットは銀色の、青い宝石が付いた物です。エドワードさんはヤールさんの話に少し、何かを考える仕草をした後、
「さてと、そろそろ着きそうだよ。空。」
と、エドワードさんが言いましたので私達は歩き出しました。
そうこうしているうちに街にたどり着くと街はほぼ石造りになっている建物でその石造りになっているモノも白くて、道は大理石のような、家々は柱を建ててお店やさんは小さな石を紐で通して分かるように柱に括りつけて、そこにアイサさんのような人魚さんやヤールさんのような魚がいました。そして、やはりお店屋さんがあり、そこからは、人魚さんと魚さんが楽しそうに賑わっていました。そして、一人のオレンジ色の鰭と茶色の髪の人魚さんが私達を見て気付くと後ろの尻尾を動かして近づいてきました。
「あら、アイサじゃない!そちらに入るのは旅人さん?」
「そうよ、今から案内するところ。」
どうやら、お知り合いの様子で暫く話すと私の方を向いて、
「この街どう?楽しんでいってね!じゃ、またねアイサ!」
「ありがとうございます」
「またね」
「…女の子達は楽しそうで良いね」
「元気があって何よりだね。」
私は、アイサさんに途中でアクセサリー屋さんにより、エドワードさんはヤールさんと一緒にお土産屋さんに入って行きました。アクセサリー屋は、銀色の髪と赤色の鰭を持つ綺麗な人魚さんに色々と進められました。どれも素敵な物だったので悩みましたが、私は、真珠が三つに連なっている、髪飾りにしました。アイサさんは珊瑚の、それこそ沢山着いた髪飾りを買いました。そして、店員さんから、私は髪飾りを着けて貰いました。お礼を言ってエドワードさんと合流するために外に出ようとすると、
「あ、空!待って!クジラがくるから!」
「クジラ…ですか…?」
「旅人さんは、知らないから分からないかもだけどさっきクジラが来るって連絡を貰ったのよ。…ほら、あそこ。」
店員さんが指を指した方向を見ると、其処には…大きな何かがゆっくりと通り過ぎていきました。途中、大きくて青いその瞳が私に向けられたような気がしましたが…その、クジラさんはとても大きくて真っ白な姿で、まるで…
「神様みたいですね…」
そして、見えなくなると店員さんとアイサさんは何故か喜んでいました。アイサさんは、
「あのね、あの鯨が通ると良いことが起こるって言われているの」
「しかも、その姿を見た人は、願いが一つ叶うとも言われているわ。…私のように商売をしている人には、繁盛するとも言われている、有り難い鯨なのよ。」
「だから、出て行ったら駄目だったんですね。」
「そうそう、巻き込まれるからね。」
そう言って、今度こそ挨拶をして私達は待ち合わせ場所に行きました。
そして、エドワードさんとヤールさんが先程の鯨を見たと言っていて、
「確かに凄かったね。あの白い鯨。」
と、言って私も頷きました。エドワードさんは私を見て何かに気付くと、
「その髪飾り、よく似合ってるね。可愛いよ。」
と褒めて下さいました。そして、私達は日が傾き掛けた頃にアイサさんとヤールさんと別れました。その晩、私はふいに目が覚めて汽車の窓を見ると……
昨日の、白くて大きな…そして青い瞳を持ったクジラさんがいました。私は悲鳴を出さないように口を当てて、そのクジラさんと見つめ合うとクジラさんは頭を窓に軽くコツンと当ててきたので、
「もしかして、開けて欲しいのかな?」
私は、窓を開けるとクジラさんは私をじっと私を見つめていました。この、銀河鉄道は不思議な造りになっているようで窓を開けても水が入らないとのことを駅員さんから聞きました。クジラさんは、どうやら私に興味があるみたいで……まるで、好奇心いっぱいの瞳をしていて、思わずクスリと笑うと手をクジラさんに向けてのばすと擦りよってきて、大変可愛らしくクジラさんも気持ち良さそうに目を閉じていました。そして、気が済んだのかクジラさんはもう一回擦りよるとそのまま、暗い海にゆっくり泳いで行きました。
後日、その話をエドワードさんに言うとエドワードさんは、私を見て
「多分、空が珍しかったからじゃないかな?」
「そうかもしれませんね、でも、とても可愛かったんですよ。」
そういうと、エドワードさんはそっかと言ってアイサさんとヤールさんのところに行きました。
二日目は、市場に行きました。市場には海藻が売られていたり、蛸やイカ、海老や蟹が売っています。私は、市場でイカを五匹買うと黒い魚の店主さんが、にっこり笑って毎度と言っていました。ここの星の人はどうやら、当たり前だと思うかもですが魚は食べないみたいですね。イカは、昆布の筒の中に入れて貰いました。…なんとなく、あのクジラさんが来るかなと思ったんです。エドワードさんは、まじまじとワカメを見て、「…美味しいかな?」と言って、隣の、藍色と黒い髪の人魚さんに笑われながらワカメを進められていました。そして、私は今日買ったイカを手に持って夜、窓辺で待っていました。…エドワードさんも私と一緒にあのクジラさんを待っていました。そして、白いクジラさんは来てくれました。
「また、来てくれたんだね。今日はねお土産を持ってきたの。食べれるかな?」
そう言って、昆布からイカを一匹取り出して口元に持っていくとクジラさんは口を開けて食べてくれました。そして、もっと頂戴と大きな体にしては、可愛らしい声でねだってきたので私は、一匹ずつ渡しました。途中、エドワードさんもあげようとイカを口元に持っていきましたが……
「あ…あれ?お腹いっぱいかな?」
口を開けずに顔を横に反らしてしまいました。エドワードさんが苦笑いしながら私にイカを手渡すと先程の可愛い声でねだってきました。私達は無言のまま、イカを口元にあてると食べてくれ、無くなると私の手に擦りより、昨日と同じく帰って行きました…。
「…どうやら、空にしか懐いてないみたいだね。」
「あ…あはは……」
そして、最後の日私達はアイサさん達に連れられて珊瑚が咲き誇る、見事な場所にいました。どの珊瑚も綺麗で、色とりどりの珊瑚が目の前にありました。そして、売店屋さんで小さな水晶に入ったピンクの珊瑚を買いました。…珊瑚礁は見渡す限り広がっていて、お花畑のようでした。そこには人魚さんと魚さん達が楽しそうに話していて、アイサさんからは人気の場所と話してくださいました。
その夜、エドワードさんと食べながら、エドワードさんが私を見て、
「あの鯨、今日もくるかもしれないね。」
「そうですね…最後にお別れを言わないと…」
私は、席であの、クジラさんが来るのを待っていました。暫くして来てくれたクジラさんを見て開けると、クジラさんは私の顔に嬉しそうに擦り擦りと押しつけると、私は優しく撫でました。そして、
「ごめんね、私明日の夜にはもう、会えないの。」
クジラさんは顔を傾けるとなんで?といった気がしました。
「明日には、もう、此処を離れてしまうの。だから、今日が最後。ありがとう、とても楽しかった。」
クジラさんは分かっているのか、悲しげに鳴きました。私も心苦しくなりますが、やはり、
「また、会えるといいね。じゃあね。」
なんとか振り切るように言うと、なんとクジラさんは私の腕を加えて外に出そうとしました。私は、慌てて止めようとすると、
「こら、駄目だよ。そんな事したら。」
エドワードさんが、私を後ろから抱き締めるように私が連れて行かれないように腕をまわしていました。クジラさんはエドワードさんを見るとむっとした様子でした。しかし、エドワードさんはそれに対して、
「確かに別れたくないというのは分かるけれどだからって、彼女を連れて行くのは駄目だよ。離しなさい。」
クジラさんは、渋々と腕から話すと、私を見てどこか申し訳なさそうに見て、大丈夫と言って撫でるとめいいっぱい擦り擦りすると最後にはキュウと鳴いて何度も振り向きながら泳いでいきました…。私は、エドワードさんを見上げてお礼を言うと、
「どう致しまして。」
と、にっこり笑って私を見下ろしていました。ただ、あの、クジラさんの事が気になり、眠れませんでした。
出発日、アイサさんとヤールさんが私達に別れの挨拶をしてくれ、私達も窓を開けてお礼を言うとそのまま発進するように汽笛の音が鳴り響きました。ふと空を見上げると、白い……雪のようなものが落ちてきました。
「あぁ、マリンスノーだね…きっと良いことがある。」
ヤールさんは、私達に言うと達者でと言いました。そして、汽車が段々と上がって行くのと同時に…何かが、私の所に向かって来ていました。私は、窓を開けると……あの白いクジラさんが、海の雪の中を泳ぎながら、向かって来ました。クジラさんは、何とか追いつくと私に、咥えていた物を渡しました。…クジラさんが私に渡してくれた物は、貝殻でした。そして、クジラさんは私に頬に口を当てると楽しそうにキュウッと鳴くと反対方向に向かって泳いでいきました。…クジラさんなりの、別れの挨拶だったんでしょう…。窓を閉めるとエドワードさんは貝殻を見て、
「空、この貝、開けごらん。二枚貝になっている。」
私は、開けてみると、中には……
小さな、だけど綺麗な銀色の真珠が入っていました。
私は、その貝殻をそっと閉じて胸元に持って行くと、心の中で、ありがとうと呟きました。
水の星は、綺麗な人魚さんとお魚さんがいて、白くて大きい、だけど可愛らしいクジラさんが住む、場所でした。
水の星のイメージは、海底遺跡をイメージしています。実は前の回とこの回をどちらを最初にするか迷いましたがこちらを二番目の星にしました。クジラ、可愛いですよね。それでは。