第二夜 猫の星
今回は猫の星。
「わぁ……」
「どうやら、次の星に着いたみたいだね。」
私は、あの後眠ってしまい、エドワードさんに起こしてもらいました。私の体に毛布が掛けられていてエドワードさんにお礼をいった後朝食を食べました。…因みに朝食は白身魚のマリネにレタスのサラダ、クロワッサンと私は苺のジャムでエドワードさんはバターを塗ってこれから行く星の話をしてくれました。どうやら、近くの星に止まる様子で、三泊くらい停車するとのことです。銀河鉄道のあの駅員さんが教えてくれました。私は、
「……猫の…星ですか?」
「うん。猫の星。」
……猫ってあの、耳が三角に尖ってて白や黒や色んな色がある、可愛らしい声でにゃーと鳴く、目がクリクリしたあの猫?
エドワードさんは、私に向かって少し困ったように笑うと
「あはは、行けば分かるさ。」
…そして、私達はその猫の星に着きました。先ずは茶色の荷物を置いて、身支度を整えてから外にでると…
「いらっしゃいませ、ようこそ遥々遠い星からお越しくださいました。」
声がした方を見渡しますが、分からず、エドワードさんが私の肩を叩いて上を見るように促すと…
黒い、猫が白いタキシードを着て私達にお辞儀をして挨拶をしてくれていました。私も慌てて挨拶をすると猫さんは、顔を上げて
「ふふ…私共を見るのは初めてのご様子ですね、其方の御方は…前にも来た事があるようですが。」
「…まぁね、僕はエドワード。此方のお嬢さんは空。」
「あの、初めまして…猫さん…」
「初めまして、空様、エドワード様。私はカートと言います。本日は三泊の観光を担当します。よろしくお願いしますね」
タキシードの猫さん…カートさんは私達に向かってウィンクをすると早速案内をしてくれました。
「此処が、市場になります。お土産屋もお食事も済ませることも出来ますよ。」
私達が駅から出て数分した場所に、カートさんは連れてきてくれた場所はレンガの道があり、周りを見渡すと沢山のお店が立ち並んだ場所でした。看板は皆鉄のような物に木の板がぶら下がっていて見たことのない字が書いてありました。だけどそれよりも周りを見渡してみると皆、まだらや白、茶色や灰色。カートさんのような黒い猫さんばかりでした。ちょうどお昼より前になる頃なのか賑わっていました。
「いらっしゃいいらっしゃい!今日は魚がお買い得だよ!」
「あら、ならこれをくれるかしら?」
「そこの奥さん!焼きたてのパンは如何かな?」
「そうね~じゃあこれくらい貰おうかしら?」
ちょうど魚屋さんの通りを通るときにマダラの猫さんが灰色と白い猫さんにあのふにふにした手で魚を掴んで袋に詰めているところでした。パン屋さんは灰色で茶虎の奥さんのバスケットにパンを詰めて貰っています。私は、他にも果物屋さんにいる可愛らしい白い猫さんが茶色の猫さんに向かって林檎のような物を勧めたりしているのをぼんやりと眺めていたときです。突然、何かにぶつかった衝撃で倒れそうになりましたが、
「おっと…大丈夫かいっ空。」
「空様!!ご無事でしたか?!」
「はい…大丈夫です…。ありがとうございます」
私は、エドワードさんに前のめりに倒れそうになったところを助けて貰いました。そして、前を見ると…小さな子猫さんがそのまま走り去っていきました。だけど私はその子猫さんが手に持っている物に気付くと…エドワードさんとカートさんの制止も聞かずに走り出しました。……今思えばなんて迂闊な事をしたんだろうと想います。だけど、あの子が持っていたのは私が記憶を無くす前の唯一の手掛かり…銀色のシンプルな指輪…ポケットの中に入れてあったものを捕られてしまいました。私はそのまま追いかけました。
「待って下さい…!それを返して下さい!」
しかし、振り返らずにそのまま裏の道に入り込まれてしまいました。私は迷わずに走ります。
「チッ……しつこいな……!!」
子供特有の、高めの声…しかし、私は
「お願いしますっ…!それ、大切なものなんです!!返して下さい!」
私は、追いかけ続けましたが、流石に息が切れてきました…そして、そのまま転んでしまいました。
「きゃっ………!!」
派手に転んでしまい、結局見失ってしまいました…。私は暫く呆然としたまま座り込んでしまい、気付くと知らない道ばかりで…迷ってしまったみたいでした…。そして、どうしようかと考えている矢先、
「何すんだよ!!離せよ!!てめぇ!!」
「いけないな、人のものを盗むなんて。」
私は、声のする方を見ると…そこにいたのは、
「エドワードさん……」
「やぁ、空」
エドワードさんがその子の首元を掴んで、いました。そして、私に指輪を渡すと、
「はい、これ空のだよね。」
「……そうです!…ありがとうございます…!」
手のひらに乗せてくれました。私は安心して両手で包み込みます。エドワードさんはまだその子の首元を掴んだままです。そして、
「さて、なんでこんな事をしたのかな?正直に話してくれるかい?」
…笑顔のままですが、どこか有無を言わせない様子で笑いながら、だけど怒った様子で問いつめました。そして、その子は力無くエドワードさんの片手にぶら下げたままうなだれて話そうとしません。私は、
「……あの、君?」
びくりと反応したまま、だけど顔を合わせないその子に向かって
「君の持っていた指輪は、私の大切な物なの。だからね、持っていかれたら凄く困るの。だけどもう戻ってきたし、こんな事しないなら私は許すよ?だからね、なんで持っていったのか教えてくれないかな?」
暫くするとその子は、渋々といった感じで話し始めました。…どうやら、只の悪戯のようで私から持っていったのも単純に困らせたいだけで後でちゃんと返すつもりだったとのこと。私は戻ってきたから大丈夫でしたが、その子はエドワードさんにこってりお説教され私にしっかり謝ってくれました。そして、そこでその子と別れて私もエドワードさんに、
「君も、事情が事情だったから仕方ないにしても知らない場所を無闇に走り回ったら危ないからな。」
「…はい、すみませんでした…」
エドワードさんは、少し眉を潜めて私も叱られました。あの後心配を掛けてしまったカートさんにも謝り、少し遅めの食事をとりました。そして、お土産屋さんの年をとった白黒のブチ紋様の店長さんからお薦めの透明な魚のブレスレットを進めて買ったり、カートさん自慢のお食事屋さんでカートさんは青魚のグリル、私は赤魚のドリア、エドワードさんは鶏のささみのグラタンを食べたり汽車の中では沢山のことを話しました。最初に行った果物屋さんで林檎のような物食べて美味しかったり。
そして、最後の三日目。私は寝間着のまま明日旅立つことに名残惜しく感じていたときに戸を叩く音が聞こえました。私は開けると、あの時の、子猫さんに会いました。子猫さんは私に用があるらしく私は上着を羽織って駅員さんに頼んで開けて貰いました。……どうやら私に見せたい物があるとのことです。駅員さんに許可を貰い私はその子に連れられました。そして、少し歩いていくとどうやら谷に出ました。そして、下を見ると……
一面に広がる、家々の明かりや上に広がる星空に目を奪われました。そして、その子によるととっておきの場所だと教えられました。暫く眺めていると、
「その…あの時は、ごめんなさい…あんな事をして…」
思い当たるとにっこりとその子に向かって笑うと
「いいよ、でも、二度とあんな事したらダメだからね。」
その子頷くと、
「分かった。」
と言ってくれました。暫くその子とのんびりと見た後に私の話やここの話、そしてその子…名前はタージ君は自分のことを話しました。何でも、タージ君は孤児院で生まれたとのこと。だけど孤児院の先生はお母さんやお父さんみたいで優しくてタージ君以外の子からも慕われていたと。そしてあんな事したのは先生に構って貰えなくて寂しくてやってしまったと言っていました。そして、タージ君と
私はタージ君を街の近くまで送ると汽車に戻るとそこにはエドワードさんがいました。エドワードさんは、何も言わずにタオルケットを掛けて私を駅の席に座らせて一緒にハーブティーを飲んでゆっくりと先程あったことを話しました。エドワードさんはそうか、といって優しい顔で聞いてくれ、その後それぞれの部屋に眠りに着きました。そして、出発日。カートさんにお礼を言った後、タージ君が隅でひょっこり現れて私は手を降るとタージ君も振り替えしてくれました。
こうして、少しトラブルもあったけれど初めての星は可愛らしい猫さん達が住む、場所でした。
今回の猫の星のイメージはフランスをイメージしています。一話完結を目指しています。 空とエドワードさんの旅は始まったばかりです。それでは。