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■ 7 居候の朝

 朝起きたとき、隣の布団は空っぽだった。

 どれくらい寝ていたのだろう、夢すら見た記憶が無い。まずは睡眠時間中のアンテナのログを確かめる。

 すげー、完全にフラット。すぐ隣にこーんな超絶美少女が寝ているのに、どういう強靱な制震しているんだろあるじ様。

 それよりどこ行ったんだろ。あたしも布団から這い出て台所に向かった。

「おはようございますシャランラさん」

 そこに食事の支度をしているあるじ様発見。すでに普段着に着替えていてエプロンを着けている。

「あ、おはようございますあるじ様」

「あと一〇分ぐらいで朝ご飯の準備が終わりますから、洗顔したら布団をたたんでコタツを用意して頂けますか」

 あたしは言われるままに洗面所に向かう。そこで冷水で完全に目を覚ました。

 それから言われた通り二人分の布団をたたんで押し入れに収めると、居間の中央にコタツを移動した。

 ややあってあるじ様がお盆を持って登場。

 朝食はごはんとお味噌汁、それにアジの干物とお漬け物(以上、日本の食卓データーベース調べ)だ。あるじ様の前にはお箸だけ、あたしの前にはスプーンとフォークが置いてあった。

「シャランラさんにはまだお箸の取り扱いは難しいでしょうから」

「すいません」

「謝ることではありませんよ。では頂きましょう」

 そして二人で手を合わせる。あたしすっかり居候だ。

 なにしろあたしは寝間着のまんまだし。このままだと一日着替えずに過ごしそう。

「あるじ様、本日のご予定は?」

「平日ですのでこれから学校に向かいます」

「ご帰宅まであたしはどうしていれば良いでしょう」

「この部屋に居て貰って構いませんよ。戸締まりさえしっかりしていただければどこかに出かけても良いでしょう。一応予備の鍵を預けておきます。ぼくは午後四時にこちらに戻る予定です」

「あのう……お洗濯とかお掃除とかは」

「特に必要ありません。ご厚意として行って頂いて構いませんが物品の配置はなるべく換えないようにお願いします」

 ってことはあるじ様、ひょっとして潔癖症。

「整理整頓は正しい生活の第一歩ですよ」

 また読んだ。もしかしてあたしの思ったことって顔に出てる?

「少なくとも胸は……胸には出てませんね」

「いま胸は出てないって言おうとしましたよね、しましたよね!」

「シャランラさん、ごはんはきちんと飲み込んでからしゃべってください。お行儀悪いですよ」

 頬をふくらませるあたし。ご飯がおいしいだけに悔しさ倍増だった。

 学校に行く支度は調っていたらしく、カバンを持つとそのまま玄関に。

 靴を履きながらあたしを見た。

「シャランラさん、お昼ご飯はどうされますか」

「自分で用意しますので大丈夫です」

「判りました。それではいってまいります……くれぐれも無茶なことはしないようにおねがいしますね」

「いってらっしゃいませ」

 あるじ様を見送ってあたしは両肩を落とした。

 さてどうしよう。

 あるじ様が帰宅されるまで本人が居ないのだから願い事の受付はできないし。

 よく考えたらあたしここから外にでてないや。ちょっとあたしが居るところとか調べておかないと。

 あたしはあるじ様が買ってくださった服装に着替えた。ピンク色のカーデガンとライトブルーのプリーツスカート(日本の基本的な衣装データーベース調べ)、それと白い靴下にブラウンの靴。これって一般的か判らないけどあの営業用衣装で外に出歩くよりマシってことなのかな。

 まず玄関から外に出て、住んでいるのが集合住宅だと判った。一階建ての三部屋構成。あるじ様のお部屋は真ん中の二号室。

 ただ一号室も三号室も無人みたい。つまりここにはあるじ様しか住んでいない。

 建物の名前はグレートハイツ・スズキ。うわっ、スズキさんちにタナカさんが住んでるんだ。

 近くにあった円い柱、電柱と言うらしいそれにどうやらここの住所が書いてあった。

 ええと『峰京町二丁目一番地』。これって何て読むんだろう。日本の地名で検索したら「ホウキョウチョウ」らしい。豊胸って何よ、地方自治体ぐるみであたしにケンカ売ってるわけ。

 ちなみに峰京町に住んでいる田中さんで検索したら二八件ヒットした。その中に一郎さんは五人も居る。そのうちのお一人があるじ様ってことかしらね。

 さてここがどこか判ったし、日本の基礎知識に則って一番焼くにたちそうなところに行ってみましょ。

 確かめたいこともあるし。


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