平等ボタン(藤原)
平等を夢見ている博士がいた。彼は幼いころからとても頭が良く、そこが他人と違うことにずっとコンプレックスを抱いていた。なので平等な世界を作るべく、一生懸命勉強をして世界一の博士になったのだった。
「よし、平等な世界を作ろうじゃないか」
彼はまず、地球上の地形を均一にならすボタンを作った。ボタンを押すと、元素の配分がどこでも同じようになり、地球上のどこでも同じ地面で同じ水が流れ、同じ植物がいて動物がいるようになった。
「大成功だ」
博士は喜んだが、世界中の人々は、いきなり住むところが変わってしまったので、猛烈に怒りはじめた。それを知って博士は大慌てで次のボタンを作り、押した。たちまち世界中の人々は博士と同じ考えになり、博士を称賛するようになったので博士は安堵した。
「しかし、これでは平等ではない」
博士は不満に思い、ボタンを改良することにした。人々はみな博士と同じ考えを持つようになったが、当然ながら博士ほど頭は良くなかったのだ。そして改良したボタンを押すと人々はみな、博士と同じ頭脳を持ち肉体を持つようになり、つまり博士の複製になってしまった。
「これで平等になったぞ」
しかし博士はこれを異常とは思わなかった。それどころか全世界の博士たちが協力するようになり効率が上がったと喜んだ。
博士たちは次に動物と植物が不平等だと思った。なので全ての動植物が、光合成ができ動き回れる生き物になるボタンを作り、押した。どんな図鑑でも見られないような奇妙な生き物が出来上がったが、博士たちは満足した。
博士たちは今度は無機物も平等であるべきだと考えた。無機物が思考をし、有機物が衰えないようなボタンを作り、押した。地球上は生き物とも物とも言えない何かがさまよう世界になってしまったが、博士たちは満足した。
博士たちは地球上だけでは不平等だと月を巻き込み、火星を巻き込み、太陽系の惑星を全て一つの星にまとめるボタンを作り、押した。また太陽系だけでは平等ではないと思い、銀河系の星も全て一つの星にしてしまった。
そう繰り返す内に、宇宙にはただ一つの星だけしかなくなってしまった。元・地球であるその星は、全ての成分が均一に、ごちゃまぜの状態になっていた。
博士たちはまだボタンを作り続けていた。宇宙の、物質が存在する部分と存在しない部分が不平等だと考えたからだった。そして、ついに宇宙の全てを平等にするボタンを発明した。
そのボタンを押すと全ての物質は拡散しはじめた。全ての物質は、無限の大きさである宇宙へと均一に広がろうとし……、そして宇宙は無に帰した。
2013/12/13
批評会提出用
藤原