卵型
「これを見ろ」
バサっと音をたてて巨大なカーテンが開く
私の目の前にあるのは、博士が研究を重ねて作り上げた
[タイムマシン]
いわゆる私から見ればただの鉄の塊だ
その塊は卵のような形をしていて、近未来を思わせる目に新しい形をしている。
ただ、何年もの間研究の実験台となっていた私だが
成功した例は一度も無い。
「本当に成功するの?これ」
私の質問に博士は目を大きくして答えた。
「当たり前だ!今度こそ、必ず成功してみせる!何年もの間飲まず食わずで研究した成果を
今!!君の体で実証してみせるさ!」
なんとも自信満々な返事。
「電車の形。車の形。あげく、引き出し。この卵は今度こそ私を過去に連れてってくれるのかしらね。」
「光の速さに近い速度で回転するこの機械は、機内とその外の時間をうんとねじませて、時空を超え、君は今回
過去ではなく、未来へ飛ぶんだ。さぁさ、早く乗るんだ!」
自信満々な表情で語る博士の目は星のように輝いている
「未来ね。悪くないわ。」
「さぁ、思い残す事は?」
「ふふ。特に無いわ。ただ、私がこれから旅立つ未来が数秒先じゃない事をねがってる。」
博士はしかめっ面で小さく「乗るんだ」と言った。
博士が手元の熊の鍋つかみが付いたレバーを力一杯引くと、卵の扉がプシューと音をたてて開いた。
高密度のスポンジ状の機内に服を脱いで、ねじ込むと、博士は扉を手で押し、重い音をたてながらゆっくりと閉めた。
(手動なのね。)