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9 風化した街 2


 それから、エイタ達はしばらく街を探索した。けれど見つかるのはどれもこれも滅んでからかなり時間が経っているという証拠だけだった。


 道路は日々割れてそこから雑草が生い茂り、店のシャッターも錆びて歪んでいる。

転倒した自動販売機の中身も飲むのに勇気がいりそうな変色具合の飲み物ばかりだった。


「いったいどうなっちまってるんだ?これは一日二日、ってレベルを超えてるぞ」


「電気も水も、完全に止まっちゃってるね。私達が気絶してたのって、半日くらいじゃなかったのかな?」


 元気いっぱいのくーねも「うーん」と考えている様子。


「いや、半日くらいであってると思う。街みてて思ったけど明らかに”半年以上”は経ってそうだよ。もしそんなに経過していたら俺たち死んでるぜ」


「なんだか私達の時間だけズレてるみたい・・・」


「そう、ズレてる。今思えば学校はそこまでおかしくはなかった。崩壊こそしたものの、その有様は昨日の今日って感じだった。この街がおかしいんだ。いや、もしかしたら学校がズレてたのかも?」


「でもそんな不思議な事ってありえるかな?」


「それそこ今更だろ、俺たちの目の前にいるのは異世界の住人だぜ?」


「たしかに、これ以上ない不思議だね」


 そういって二人に凝視されたくーねは視線に気づきビクッとし、「えっ!?なになに!?」と慌てふためく。


「くーねなら今の状況にも心当たりがありそうだなって」


「うんうん、くーねたんちゃん意外と物知りだもんね」


 「はわわっ、はわわわわっ!」とあたふたした後、急に口笛を吹き始めたアイドルさんは二人から盛大なジト目を頂戴し、視線を彷徨わせる。


「これは絶対なにか知ってるな。」


「うん、間違いないね。」


「そっ!そんなことより!ほらっ早くいこ!くるっと先行っちゃうよ!」


 すたたたた~と先を走っていったくーね。エイタ達は一度顔を見合わせた後、「しかたないな」と追いかけていくのであった。





 そして数時間後。



「うおおおおおおおぉぉぉ!!どうしてこうなるんだぁあああ!!!」


 日も傾きかけ、そろそろ日没という時間に、3人は仲良く全力疾走していた。


 ゾンビ達と一緒に。


「もうもう!くーねたんちゃんのバカ!何してんのさ!」


「ばばばっ、ばかとはなんだ!だってだって~」


 なぜこんな状況になっているのかというと、それは数十分前。


 街を探索しながらも進むエイタ達はとある集会所を見つけていた。

そこには十数体ものゾンビ達が意味もなくひしめきあっている。


 まだこちらに気づいていなかったので、バレないうちに離れようとするが、そこでくーねが待ったをかけた。


 なんでもゾンビとは死して尚、魂が浄化されてない状態なのだとか。

なので、倒してあげる事こそが、唯一の救済なのだと。


 いつまでも囚われ、苦しんでいる魂達を不憫に思い、解放する為に近づいていくくーね。

その後ろ姿はどこか尊く、慈愛に満ちているように感じた。


「まあ、くーねなら大丈夫だろ」


「そうだね、めっちゃ強いし。それに、あんな話聞いたらゾンビさん達を助けてあげたいって気持ちも、わかる気がする」


「囚われの魂、かぁ」


 ある程度近づいた所で内ポケットからマイクを取り出す。そしていつぞやのようにゾンビ達に向けた。

 くーねの接近にゾンビたちも気づく。


  「「「「「ゔあ"あ"ぁ"あ"」」」」」


 刻一刻とくーねに近づいていくゾンビ、いつまでも動きがないくーねに見てる側もハラハラしてきた。


「お、おーい、くーね?」


 「ん?なんか震えてないか?」と少し遠くから声をかけると、ぷるぷるした少女がギギギと音が鳴りそうな動きでこっちを見て言った。


「チ カ ラ、尽きてたんだった・・・」


 「わっ」と泣き出しそうな顔でそんなことを言うアイドル。ゾンビがすぐ後ろまで迫ってきている!


「に、、にに、、、にげろーーー!!!」


 それからはもう走りまくった。どこに向かっているのか。方角も定まらないまま。


そして現在に至る。


「なんでチカラが尽きてることに気づかなかったんだよ!」


 ゼェゼェと息を切らしながらも、なんとか走るエイタとミカ。


「うぅ〜、最近は"希望の力"も尽きる事が無かったからすっかり忘れてたんだよぉ」


対するくーねはまだまだ余裕がありそうだった。


「"希望の力"?またなんか新しい事言い始めたぞ」


 新たなる単語について聞こうとするが、ミカが声を上げる


「ゼェ、ゼェ、エイタ君、、まずはどこか安全なところに、、」


 エイタもミカもそろそろ体力の限界だ。そろそろどこか落ち着けるところに避難したいところ。

 そんな時、目の前にショッピングモールが見えてきた。


「あれ!中入れそうじゃない?!」


「あれは、モールか、中にもゾンビ居るんじゃないか?」


いかにもって感じだよな。とか思っていると、くーねからも肯定の声が上がる。


「あそこ!行こう!戦うにしても多数には狭い方がいい!」


戦いについては素人のエイタ達だ。ここは素直に従った方がいいだろう。


「よし、じゃあ行こう!」


そうしてエイタ達はショッピングモールへと向かうのであった。


次回更新は月曜日になりそうです!

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