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55 希望の道


「グッ!クソガッ!クソガアアアアアァァァ!!!」


 出鱈目のような触手の連撃が銀髪の少女に降り注ぐ。


 一見すると潰されてしまったかのように見えるそれも、攻撃が止んだそこには無傷で立っている少女が一人。


 あたりが爆散したかのような有様なのに対して少女の周りだけが無事だった。


「すごい、、、」


 その強さはくーねと同等なのでは。俺はそう感じた。


「フレイムチャージ」


 轟々と衝撃音が鳴り響いており人の声なんてまともに聞こえないはずなのに、凛とした声が透き通って聞こえた。


 巻き上がる砂煙の中で見えたのは突如炎に包まれている少女。全身ではなく足や手など部分的に銀色の炎を纏わせている。


「あれは、」


「エイタ君と、同じ?・・・」


 ミカが疑問を口にする。確かに見た目だけなら俺の炎とそっくりだ。でも恐らくは違うだろう。なぜかは分からないがそんな気がする。


 攻撃を受けてからは動いてなかった少女がまた進みだす。一歩進むごとに一歩下がるジュプドロン。


 少女は背中の盾に手を伸ばしそこから一本の棒を取り出す。明らかに盾より長さがありそうな奴。いったいどうやって収納されていたのだろう。


 それを慣れた手つきでクルクル回す。風切り音が心地よく鮮明に聞こえてくる。。


 じわっと銀色の炎が少女が持つ棒に伝わっていった。


 ジュプドロンが触手をひとまとめにしオーラを練り上げることでこれまでで一番の攻撃を放つ。


 バリバリと赤黒い雷が周囲を焦がしながら突進し、少女を消滅させようと迫る。


 それを少女は真正面から棒を構え、


「『ゼノ・ヴァルカンッ』」


 炎の化身と成った棒が一直線に放たれた。


「ガグフゥ!?」


 触手をすべて焼き尽くしジュプドロンすら穿ったそれは、山に穴をあけながらはるか後方へと消えていった。だが、


「グフッ、ギヒヒヒ。ドウヤラセカイハワタシニミカタシタミタイダナ。」


 半身に穴が開いたジュプドロンはそれでも笑う。


 ブクブク、ボコボコと体を盛り上がりながら。


「あそこまでしてもダメなのか?!」


 あいつは不死身なのか?そうじゃないと説明がつかない。理不尽を嘆きたくなる。


「ギヒヒヒヒガガガガ。パラディンノナガナクナ!キサマジャワタシヲコロセハシナイ!!マガイモノニワタシハタオセナイゾォ?」


 先ほどまでとは打って変わって機嫌がよくなったジュプドロン。しかし少女は特に気にする様子もなくため息を吐いた。


「哀れしゃめ。」


「ナンダ、ナニガ、イイタイ。」


「そのまんまの意味しゃめ。お前は全く分かっていないしゃめ。まあ驚いてはいるしゃめ。人生で二度も貴様の死に目に立ち会えるなんて、まあ全くうれしくはないけどしゃめ。」


「ワレヲコロセルト?」


 銀髪の少女はいつの間にか手に戻っていた棒を地面に突き立てるとやれやれと言いたそうなポーズで言葉を続ける。


「確かに今の私じゃお前を消滅させれる能力()はないしゃめ。」


「ナラ」


「でも、ここにはくーねがいるしゃめ。魔王ですら倒しきれなかった存在。なぜお前ごときが倒せると思ったしゃめ?」


 あの子もくーねの事を知っているみたいだ。


 少女が言葉を重ねるたびにジュプドロンが沸々と怒りを溜めていっているのが分かる。


 俺たちが固唾を吞んで状況を見ている合間にも話は続いていく。。


「グウゾウナラモウタオシタ。。。キサマノキボウハツムガレハシナイ。」


「希望?そんな物どうでもいいしゃめ。それと一つ助言をしてやるしゃめ。くーねを倒すというのならしっかりトドメを刺して完膚なきまでに殺しておくこと、じゃないと誰かがうっかり力を与えちゃうしゃめ?」


 「こんな風にしゃめ」と言いながら少女は胸ポケットから一本の”真っ白い羽根”を取り出した。


「ソレハ?!」


 見た瞬間にそれが何かを察したらしいジュプドロンだが少女に攻撃を加えることが出来ないでいる。


 乱雑に放たれる触手を鬱陶しそうに払いのけながら羽根に核力を溜めていった少女は心核であろうそれを発動させるキーを発した。


「『あなたにとどけ』」


 言葉を吹き込まれた瞬間、一人でに動き出した羽根が一本であるにも関わらず器用にはためき何処かへと飛んで行った。


 しかし以外にも近くへ降り立ったそれを優しく手に取る人物が一人。


 土だらけの服を身にまとい全身をぼろぼろにしながらも乱れたツインテールをなびかせた少女。倒されたと聞き内心気が気じゃなかった、でも信じて待ち焦がれた仲間の姿。


「くーね・・・よかった。」


「くーねたんちゃん!無事だったんだね!」


「ナ、ナゼキサマガココニイル?!」


「ん?案外近くにいたしゃめ。だからちゃんと仕留めておけって言ったしゃめ。」


 キラキラと光の粒子を零していた羽根はくーねがギュッと握ると一気に弾けた。


 その瞬間、


 ――――ドンッ。と


 世界が揺れた。


 比喩じゃない。くーねを中心として波紋が広がっていくように文字通り世界がぐらついたのだ。


 発生源たるくーねを見ると彼女は涙をこぼしながら”黄金色”の光に包まれていた。


「初めて見た。すごくきれい・・・」


 普段のくーねの光とは違う色。いつものケミカルな色ではなく、もっと煌びやかな、正に”希望”を色にしたような。。。


「あったかい・・・」


 そこでふと、思い出したことがある。俺はこの光を見たことがある。


 避難所でくーねが放送越しで歌ったときにみんなから出ていた色に似ていた。


 あの時はなんか核力とは違うなくらいにしか思っていなかったが、


「くーね。起きるのが遅いしゃめ。お前が負けたせいで散々な有様しゃめ。」


「あははー、ごめんごめん。ミカとエイタも随分と無理させちゃったみたいだね。」


 くーねの手には羽根があり、そこからどんどん黄金の輝きが増しているのが分かる。


 それを優しく、大切なものをしまい込むように抱きしめる様は、煌めきと相まってとても神秘的に見えた。


「アァダメダ。ダメダダメダダメダダメダダメダダメダダメダダメダダメダ!!!!!!」


 くーねと騎士の少女が挟み込むように位置しているせいで逃げ場のなくなったジュプドロンがわめきだす。


「ソノヒカリダケハダメダアアァァァァ!!ダメナンダアアァァァ!!!」


「ブリザードチャージ」


 暴れだしたジュプドロンに対して手を掲げた少女が何かを呟くと足元から氷塊が生まれ拘束する。


 コンディションが最善なら一瞬のうちに壊せたであろうその拘束も、数多の戦闘をし満身創痍となった今のジュプドロンには容易に破壊できるものではなかった。


 そんな一瞬の隙さえあれば攻撃を当てるなどくーねにとっては当然であり、


「『エリュシオン・エコーッッ!!!!』」


 天に打ちあがる黄金の大柱がジュプドロンを飲み込み消失させていく。


 今日、魔王軍幹部という絶対的な存在が一つ、欠けた。


 その日、黄金の柱はずっと遠くにいる人までもが目撃することができ、人々は混乱し情報を求めた。


 連日話題はあの柱のことで持ちきりとなり、情報局はもちろん騎士団ですら無視はできず、ゾンビ達ですら光の柱を求める様に泣いたという。


 あの光はなんだったのか?魔王軍による新たな攻撃か?そう思う人もいた。


 しかしあの黄金の柱を見た人たちには不思議と不安はなかった。


 見た人は言う。まるで心地のいい朝の様な。あるいはなんてことはない昼下がりの公園。


 そんな心が温まる陽だまりの様な温かさがあったと。思わず崩壊前の日常を思い出してしまったと。


 だから人々はこう呼んだ。


 あれは”希望の道”なのだと。





ーーーー


『エンジェル・メッセ』

一本の真っ白い羽根の形をした心核

心に思い浮かべた人物へ「気持ち」を届けることが出来る。

一方通行で受け取ったら消滅する。

絶対に届く。と言われており、届け先がこの世に存在しないと発動しない。

性質上安否確認に使われることがあるが、とても希少な心核のため使用事例は少ないらしい。


一区切りつきました!これにて第二章終了です!

続きも書いていますのでちょろちょろと更新していきます!

ぜひ評価・ブックマークよろしくお願いします!!!

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