51 とにかく逃げるんだよ!!
真っ白にそまった世界で空間をも焦がす熱を浴びながら吹き飛ばされる肉の塊。
ジュプドロンは読み違いをした。
くーねの仲間である少年の全力を受けて尚、健在な自身の姿を見せることで相手に絶望感を与えるつもりだった。
弱体化したとはいえ元”英雄”からの攻撃はほとんど意味をなさなかった。だからこの場で己に害のある攻撃をできるやつはいないとたかをくくった。
攻撃を受けてから気づく。これはダメな力だと。
傷が”再生しない”。体に纏わりつく”白い炎”が傷を燃やし再生を阻害している。それどころか灰に変えていく。
(まずい、、、このままでは存在事燃え尽きてしまう。)
”ウオオオオオオオオオオォォォッッ”
咆哮。ビリリと空間を振動させて無理やり核力を弾き飛ばし、自身の力を最大限ぶつけることでなんとか押し返す。代わりにほとんど力を使ってしまったが。
「ガァ、ガァ、、、ック、マサかコンナところデヤラレるとワな。」
一直線に抉り取られた百メートルほどの何もない道が完成していた。
舐めていた。認めよう。あの少年は”脅威”だ。
。。。
「エイタ君っ!!」
圧倒的な光景に思わず見惚れていた。目の前の少年の姿がとある少女と重なって見えたから。
文字通り全身全霊全ての力を振り絞った少年は魔王軍幹部を吹き飛ばしてくれた。遠くまで続く焦げて消滅した道にはもうあの巨体はいない。
勝ったんだ!エイタ君はジュプドロンを倒した!
しかしその代償は大きかった。
”バランスを崩し”倒れそうになった少年を受け止め抱えてあげる。爆破の衝撃でぐちゃぐちゃに露出した”断面”から溢れてている血を風を圧縮させて無理やり止血する。
弾け飛んだパーツはどこにいってしまったのだろう。このまま放っておいたら遠からず死んでしまうかもしれない。でもまずは、
「エイタ君!最っっっ高にかっこよかったよ!!」
恐らく意識もハッキリしていないであろう少年はそれでも口角を釣り上げて笑う。
「もう大丈夫。あとは私に任せて寝ててね。」
そう言うと少年は静かに眼を瞑った。左眼から溢れていた炎も今は完全になくなっている。これならゆっくり眠れるだろう。
少年を優しく地面に寝かせてあげる。傍から見たら死体と勘違いしてしまいそうだ。
一度頭をなでてあげると、私はゆっくりと立ち上がった。エイタ君が作ってくれた道を睨みつける。
まだ終わってない。エイタ君は絶対に死なせない。私が守ってみせる。そう意気込む。
それは人型だった。背丈は普通の人とそんなに変わらない。全身が爛れて一見ゾンビと見分けがつかないほど。
しかしその気配だけが凄まじかった。
ドロドロに煮詰められた赤黒いオーラが溢れ出している。
「グホッ、ゴホッ、ハァ、ヨソウがい。まサカコんなトコロニ、”エイユウ”ノツボみガイタトワな。」
「英雄の、ツボミ?」
「そイツはシンダカ?いヤ、イキテいるナ。」
ジュプドロンの視線を塞ぐように立ち振る舞うと、ゴフッと血みたいなものを吐きながら笑ってくる。
「もうエイタ君には手出しさせないよ。」
扇子を掲げて風を出そうとする。
「オソイな。」
「・・・っ?!」
一瞬で距離を詰められた私はジュプドロンに扇子を持っていた腕を掴まれてしまう。
「マガイもノ、キサマではナニモでキナイ。」
私は腕をつかんだことで油断しているジュプドロンにあらかじめ仕込んでおいた『ストーンバレット』を浴びせる。
「?! グッ、コシャくナ、、、」
腕を離した隙に扇子を振るいさらに風の塊をジュプドロンにぶつけた。
「ッッッッッッッッ?!」
距離をとらせ、さらなる追い打ちを掛けようとするが、
「っ!!」
何かが頬を掠り顔面スレスレを通り過ぎた。これっぽっちも視認出来ないなにか。
「ゴボッ、ゴホ。。。ックックック。アァ、マッたク。イマワシィナ。こノキョりでハズシてしまウとハ。」
片膝をついたジュプドロンが腕だけをこちらに向けていた。手のひらには赤黒い雷のようなものがビリビリと音を立てている。
自分は今殺されたんだ。まだ生きているのはほんのちょっと運が良かっただけ。そう直感した。
――逃げなきゃ。
戦っちゃだめだ。死にかけが一番危ないってどっかで見たことある。これはそれだ。
多分私では戦いにならない。
「あっ!くーねたんちゃん!」
「?!?!?ナニッ???」
私はジュプドロンの後ろ側を指指せて適当な事を叫ぶと相手はまんまと引っかかってくれた。
ハンドスコップを地面に突き立てた私は壁を迫り上げるイメージをしながら大地を持ち上げた。
ドゴッと地面が持ち上がり私たちとジュプドロンを両断するような分厚い壁が出来上がる。私はその隙にエイタ君を持って走り出した。
どこに行くって?
とにかく逃げるんだよ!!
後ろは見ない。さっきとんでもない音聞こえたから。多分壁はもう壊されている。
できる限り逃げるんだ。少しでも時間を稼ぐんだ。
くーねたんちゃんは絶対に死んでない!私はそう信じてるから。
――バヂヂヂ
「ひぃ!!」
後ろから飛来した雷みたいなのが私を通り過ぎて瓦礫に当たって焼け焦げた。
もしかしてこれからあれがいっぱい飛んでくるの?!
そう思ってたらバチバチ、バチバチといろんなところで着弾の音が聞こえてきた。
「やばいって~~~!!!!一発でも当たったら死んじゃうよ~~~」
ジグザグに走り、時には風でほんのちょっとだけ体を浮かし、エイタ君なら当たっても大丈夫かな?と思って盾にしようとしてやっぱやめて。
右曲がって左曲がって。怖いから直線は避けて。ほぼほぼ弾除けになりそうなものもない瓦礫の道を駆ける。
ていうかもう村はだめだ!山の方へ行こう!そっちには木がいっぱいある!!
とにかくがむしゃらに逃げる!!
もう!!私ってば逃げてばっかり!




