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49 都市が滅んだ日



「くーね!おまっ、何をしでかしてんだしゃめ!」


「うぇ?!な、なにって、私はただ街に入りたくて、、、」


 騎士の少女、ニイムは地面に転がっている銀色の棒を拾い上げると私に突き出してくる。


「それはわかるしゃめ!実際街に入れないように指示したのは私しゃめ!そうじゃなくて私が言いたいのは入り方の話だしゃめ!」


「えーー!なんで!ひどい><。いいじゃん!入れてよ!ケチ!」


「ムキーーー!!入れるわけないだろしゃめ!お前自分がエレセストでなにしたか覚えてないのかしゃめ!!!?」


「ん?エレセスト?なにかしたっけ?」


 エレセストとはニイムも所属している聖教会の聖地。魔王軍の襲撃があったときにちょうどその場所にいてニイムと一緒に撃退したことはあるけどほかになんかあったっけな?ライブしたくらい?


「んなーーー!!!忘れるなしゃめ!お前まじふざけんなしゃめ!聖教会本神殿を潰しただろおおしゃめえええぇぇ!!!」


 にいむに肩を掴まれて前後にぐわんぐわんされる。ああそういえばそんな感じの出来事もあった気がする。魔王軍がいっぱいいたんだよ。すっごく戦ったのは覚えてる。ん?でもそういえば、


「ああ!わかった!思い出した!覚えてるよ!覚えてるからやめて!それにあれはにいむも、、、」


「あはははは!そうそう!じゃない!!うわああーー!!言うな!言うなしゃめ!私は何もしてないしゃめ!あの後聖女様に慈悲深い感じで笑われたんだしゃめ!「大丈夫、私はわかってますよ」的な感じで憐れまれたしゃめ!うわああああん」


「情緒!おかしいって!にいむ大丈夫?」


「はぁ、何があってもくーねにだけは言われたくなかったしゃめ。」


。。。


「とんでもないことになったな。」


 聖教会にある一室。椅子のない長机が置かれたその部屋には現在、騎士や兵士、神官などが慌ただしく動き回っていた。


 その一番奥の中央に陣取った人物。枢機卿が次から次へと指示を飛ばばしていると廊下からドタドタと足音が聞こえてきて、もはや外されてしまった扉があった場所を通過して兵士が入ってくる。


「報告いたします!現在住民の六割の避難が完了しています。それ以外についても東門、南門に集まっているのであと二十分もあればほとんどの住民の避難が完了するかと。」


「そうか、逃げ遅れている人を探しつつ街の警備、偵察を。魔王軍がいるかもしれぬ。複数の隊を作り決して一人にはならぬよう行動しろ。」


「はっ!それでは失礼します。」


 貿易都市アデナルは世界的にも重要な要所だ。故に常に危機的意識を持っており、このような事態への対応は柔軟である。


 いつかはこういう事態が起こるかもしれないとは思っていたが、まさか自分の代で起こってしまうとは。なんとも運のない。そんなことを思っていると今度は青を基調とし、細長いレイピアを二本腰に靡かせた騎士が部屋に入ってきた。


 聖騎士団の中でもスピードが特に速い騎士で獅刺の剣という二つ名を持つ騎士位も高いやつだ。こんな大物があと何人もこの街に送られてきていることから今回の相手がどれほどのものなのか想像もしたくない。


「デュラード。門の様子はどうだった?」


「枢機卿、門はこれといって異常は見られなかった。けど俺がつく前までは少しだけ開いていたみたいだ。地面に引きずるような跡があった。俺より先についていたニイムが門の外側に居たんだがなんだかニイムと近い歳の少女と話しをしていたよ。まったくあいつは何やっているんだか。」


 溜息を吐きながら報告を済ます騎士。そうか、ニイムも現場に急行していたか。


「ニイムの事はいい。やつにはすべて自由に行動できる権利を与えられている。それよりも今は現象の確認だ。正門があんな光るなど、どこの文献にも示されていなかった。いったい何が起こっているんだ。」


「そもそもあの門が動いたことのほうが驚きですよ。この街が出来て以来一度も動いたことはなかったのでは?」


「ううむ。おそらく魔王軍が関わっていることは確かなのだろうが、、、未だに尻尾を掴めん。いったいこの街で何が起こっておるのだ。」


 すっかり深く刻み込まれた眉間を揉み解しながら考えを巡らせていると外から途轍もない轟音が鳴り響く。


「緊急!緊急です!街の上空に謎の人物あり!怪しい雲も広がっております!!」


「なに?」


。。。


「グギギギギ、まったく、計画がすべて台無しではないか。」


 貿易都市アナデル。その上空に一つの影が浮かんでいた。奇術師の恰好をした不審な男が忌々しそうに顔を歪めながら街を見下ろす。


「この街全てを覆う術式をまさかあんな方法で壊されてしまうとは。予想できるわけがない。数か月に及ぶ仕込みが台無しだ。」


「ジュプドロン様。準備が整いました。」


「やれ。もうこの街はだめだ。」


「はい。」


 部下が深々と頭を下げて下がるとほぼ同時に街の一角から触手が立ち上る。大規模な雷を纏いながら上空を覆うように広がっていく。


「ギヒヒヒ、さあお前ら!もう作戦は失敗した!後は好き勝手暴れやがれ!」


「「「「「グオオオオオオオォォォ!!」」」」」


 魔王軍を解き放つ。瞬く間に街を飲み込んでいく配下を見下ろしていると巨大な門があった方向が一瞬瞬いたように感じた。


「うん?」


 気のせいか?と思いながらもそっちに意識を巡らせると同時に、顔面に衝撃が走る。


「ぐふぁっ」


 なんだ?今何をされた?


 遅れる思考の中目の前に突然現れた存在を見やる。


 ローブを纏っていて姿は見えないが小さい。子供か?しかしそれから発せられるのは尋常ならざる核力。理解をも超越しているのではないかと思えるほどの圧倒的な気配。


 ああそうか。この感覚には覚えがある。この感じは魔王様にお会いした時と同じだ。


 目の前の存在はそれほどまでに強いだろう。強敵だ。我々魔王軍幹部ですら到達しえなかった。人間が最後の希望とすがる存在。”英雄”。


 まったく、本当にまったく。なぜこれほどまでに想定外なことばかり起きるのか。


「始めまして、ですね。あなたがあの悪名高い”偶像”ですね。」


 私の問いにローブの子供は答えない。


 この英雄が来た方向からもう一つ。並じゃない存在が迫ってきている。この感じ。恐らくは守護騎士(パラディン)か。


 逃げることは許されていない。どうやら私はここで朽ち果てる覚悟で戦わねばならぬらしいな。


 いいだろう。だがただで勝てると思うなよ?


 遠方から飛来した銀色の槍を弾き飛ばす。着弾点が孔空くように消し飛んだ。


 そのすぐ後に守護騎士(パラディン)が到着する。


「おまえ!さっきのやつしゃめ!」


 どうやら役者が揃ったようだな。


 二人の存在が私の一挙手一投足を見逃さないように睨みつけてくる。


「ギヒ、ギヒヒヒヒ。久しぶりですな。この感じ。魔王様に挑んだ時を思い出します。」


「魔王?!やっぱりお前魔王軍だったしゃめ!」


「そうですね。少し名乗り遅れましたな。」


 この名乗りだけはどうしても快感だ。穿たれた腕をぐじゅぐじゅと再生させながら両手を上げ高らかに叫ぶ。


「私は魔王軍幹部その一席。禍災 ジュプドロン・ギュシダーン。この街を終わらせに来ました。」


 私の名乗りが終わると同時に街は雷に包まれた。




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