47 やっほー!戦友!
明けましておめでとうございます!
今年も活動していくのでよろしくお願いします!
貿易都市アデナル。三つの国に跨って存在するその街には合計四つの出入り口が存在する。
のち三つは各国に面した門。しかし最後の一つはほかの門に比べて一際大きくみんなからは正門と呼ばれていた。
一番人の出入りが激しく、またセキュリティも頑丈であるこの門はたとえほかの門の方が近かったとしてもわざわざ回って来るくらいには街の人や商人たちから愛されていた。正に街の顔、玄関口である。
そんな街の正門はいま騒然としていた。理由は先ほどとあるキャラバンがボロボロの状態で到着したから。なんでもこの街近くの森で魔獣の襲撃を受けたらしい。
半分近くの馬車が壊されており、それ以外の馬車も軒並みボロボロ。そんな異常事態であったから正門にいた人や街の野次馬たちがどんどん集まり悲痛な顔を浮かべた。「可哀そうに」、「こりゃヒドイな」と。
しかし不思議なことが一つだけあった。それは商人も、乗客も、護衛の冒険者たちもみな笑顔だったのだ。
これほど酷い状態だというのになぜかみんなが笑っている。そんな異質な現象に街の人たちは困惑するばかりだった。
。。。。。。
「はえ~~~~、ここが貿易都市アデナル。門でっか~~」
相も変わらずきったないボロボロのローブを羽織ってフードで顔を隠していたくーねは正門を下から見上げて驚いた。
「今まで行ったいろんな門の中で一番でかそ~。教会もでかかったけどこれはあれ以上だね。」
田舎者よろしくキョロキョロとあたりを見回していると後ろから人が来て声を掛けられる。
「くーねたん。この度は本当にありがとう。君が居なかったら俺たちも、キャラバンのみんなも死んでいた。」
「おにょ?」
声につられくるんと振り返るとキャラバンで護衛を務めていた冒険者、そのリーダーの男と術師の女性が立っていた。
「ああ!カップルさん!お礼ならもう沢山貰ったから大丈夫だよ!気にしないで!」
(それにあれ私のせいかもしれないし)
カップルと言われた二人は若干頬を染めて照れる。死の直前に愛を確かめ合った彼らはあの後くーねたんが大々的に発表してしまったせいでキャラバンのみんなの前で告白を余儀なくされたのだ。
それからはお祭り騒ぎだった。二人の気持ちに薄々感づいていたパーティーメンバーを筆頭にキャラバンのみんなが残っていた物資を使って盛大にお祝いを開いたから。どうせ失うとこだった物資だから気にすんなと。
くーねたんもお祝いにと歌いだせば瞬く間にそこはライブ会場となり、みな飲んで食べて大騒ぎ。
おかげで到着は予定より一日遅れてしまった。
いやー初々しいね!
「それでもだ。あの有名なくーねたんに助けてもらえるだけでなくお祝いまでしてもらえるなんて。この世界探してもそうそういない幸運だろう。ありがとう。」
「うんうん!喜んでもらえたならよかったよ!」
少し話した後、何度も頭を下げながら二人がキャラバンの方へ戻っていく。めでたいけどキャラバンはほぼ壊滅状態なわけでこれから大変だろうな。
「よし!私もいこう!」
おー!と両手を天に、体を伸ばしたくーねは街に入るために入都口へと向かうのであった。
。。。
「たのもーー!」
なんか来た。それがこの正門で入都の管理をしている門番達の気持ちだった。
ここは三つの国の間にあるから毎日のように大勢の人が出入りする。なので変な人だってそれなりにくるから別に珍しくはないのだが、今来た少女は明らかに変だった。
まず格好だ。ぼっろぼろのローブを羽織っておりそこだけ見れば浮浪者か孤児、にも拘らずそのフードの下から覗かせる顔は人形のように整っていた。また暗いフードの中でも輝いているかのような黄金色の髪は見ているだけで引き寄せられてしまいそうだ。
ローブの下にはシワがなく丁寧に折り目が入ったスカートにスラッと伸びた脚に履かれたニーソ、靴に至るまで貴族が着用してそうなほどの高級品に見えた。
そんなちぐはぐな恰好をした少女がたった一人きり。そりゃ怪しい。
「えっと、キミ一人なの?お父さんやお母さんと一緒じゃない?それか誰か同行者は?」
別に子供一人だろうと入都はできる。というかさせた方がいいだろう。ただそれとは別に明らかに訳ありそうなこの子を放ってはおけなかった。
少女はそれが当たり前かのように詰所にある椅子に座るとぽっけから何かを差し出してくる。よくみるそれは冒険者カードだろう。っていうかそこはなにか理由がありすぐに入都できない人が待つときに座る場所なんだが、まあいいか。
にしてもこの子は冒険者だったのか。ならいろいろ変でもおかしくはないな。っと冒険者カードの名前を見て固まる。
「おい、どうしたんだ?」
冒険者カードを見ながら固まった同僚を後ろから覗き込んだ門番もまた固まった。そして徐々に震えだす二人。
「「く、、、くく、くーねたんだああああ!!!!!」」
。。。
(まただよも~~)
生まれてこの方すんなり検問を突破できたことがない。何がいけないんだろう?
私の冒険者カードを見た二人の門番は大騒ぎして奥の方に走って行ってしまった。まあ慣れているのでこのまま座って待たせてもらおう。
すると一人が紙とペンを持って戻ってくる。
「くく、くーねたん!ファンです!サインしてください!」
「いいっよー!」
カキカキ、うんいい感じ!
サインをもらった門番が感激しているともう一人の門番が戻ってきた。その背には壁?を背負ってる。なにあれ。
「くーねたん!俺もあんたのファンなんだ!家の壁を持ってきた!ここにサインしてくれ!」
「おっけー!」
あれほんとに壁だったんだ。家の壁持ってくるってすごいね。てか持ってこれるもんなんだね。
ペンでは書けないので指で彫り込む。
「くーねたん!俺も!」「俺も頼む!」「娘があんたのファンなんだ!」
「どんとこーーい!」
あれよあれよと増えていく門番。いつの間にか詰所がサイン会場になってしまう。さらに噂を聞きつけてきた街の人たちまで並び始め門番が列整理をし始めてしまう。お腹すいた~。
それから二時間ほど続いたサイン会を捌き切り一息ついていると門番がお茶を出してくれた。
「くーねたんお疲れ様でした。こちらをどうぞ。」
「ありがと~ってなにこれ真っ黒!飲めるの?」
「最近街で流行っているコーヒーというやつです。そのままだと苦いので砂糖やミルクもどうぞ。ただ通の間ではそのまま飲むのこそ至高だと言われていたりします。」
へ~。門番さんがコーヒーについていろいろ教えてくれる。好きなんだろうね。どれどれじゃあ飲んでみますか。
「うげ~苦い。」
思わず舌をだして変な顔をしてしまった。アイドルがこんな顔してちゃいけないのに。門番さんを見ると未だにコーヒーについて語っていて私のことは見てなかった。よかった。なんとかして記憶を消させるとこだったよ。
砂糖とミルクをドボドボと入れてかき混ぜなんか薄くなった液体を再び飲むと今度はあま~い!
暖かいコーヒーを飲んでぽけ~としていたがハッと本来の目的を思い出して門番に尋ねる。
「それで、もう街入っていい?お腹すいた!」
「あ、ええっと、それは、、、」
急にどもりはじめた門番をじとーっと見ていると一人のおじさんが入ってくる。だれだろ、門番とかとは服装が違うけど。ちょっと強そうだね。
「失礼する。ほう、君が噂のくーねたんか。」
「た、隊長?!どうしてここに。」
隊長?門番さんがすごいアワアワしてるから多分偉い人がきたっぽい。
「緊急案件でね。くーねたん。単刀直入に言おう。君は入都禁止だ。」
「えぇ?!どうしてどうして!」
「教会からの命令だ。くーねたんと名乗る怪しいものは都市に入れるなと。」
「うげっ、教会。ま~じか~~。も~~お腹すいてるのに~」
ぷく~っと頬を膨らませて抗議していると門番が援護してくれる。
「た、隊長!どうにかならないんですか?!彼女は英雄ですよ!」
「むぅ、こればかりは私にもどうにも、、、その、教会からの伝言もあるのですが読みますね?えーと、”くーねたんはどこだろうと生きていけるので心苦しくなる必要はありませんよ。”と。あれこれは我々に向けて言ってないか?」
どうやら教会からのお達しでアデナルには入れないみたい。せっかくここまで来たのに~。いっぱいの人の前で歌いたいのにっ!!
ぐぐぐ~~~とくーねの腹の虫が鳴り響く。
「え、、、っと、ご飯くらい食べていきなさい。俺が奢ろう。」
「やったーー!なんかこの街ならではのがいいな!」
「隊長!俺はあの辛いやつがいいです!」
「なにお前も食べようとしてるんだ、、、」
そうは言いつつもそのあと人が増え、合計十人くらいでご飯を食べたのでした。
。。。
「で、どうしよっかな~」
あの後ご飯は食べれたけど結局街には入れず追い出されてしまった。昼過ぎでまだ正門には人がいっぱいいてがやがやしている。
「む~、一応用があって来たんだけどな~。」
そういってぽっけから一枚の紙を取り出すと内容を確認する。
”アデナルにいる。救援求む。”
これはこの前血だらけで倒れていた人から渡された紙きれだ。よくわかんないけど内容やばそうだしとりあえずアデナルに来たんだけど。。。
「やっぱ入んなきゃわかんないよね~」
アデナルの正門には二つの門がある。一つは基本的に開けられている小さい門だ。(小さいって言っても馬車が何台も同時に通れるくらいでかいけど)ここから商人や、冒険者。街の人もみんな出入りしていて当然門番がいっぱいいる。
そしてもう一つの門は常に閉じられている巨大な門だ。アデナルの顔でありシンボル的に建てられたらしくまず人が開けれるようには出来ていない。だから当然門番もいない。
上を見ると見張りがいっぱいいるのを感じる。飛んで超えてもばれちゃうだろう。
うん。バレずに街に入るにはやっぱりあの”巨大な門”からこっそりはいるしかないね!
「そうと決まれば早速いこう!」
ボロボロのフードを被りなおしたくーねは巨大な門へテトテト向かっていった。
「はひゃ~~、でっかいね~。」
門の目の前まで来るとその大きさに圧倒されてしまう。首を百八十度縦に向けないと上まで見えないや。
ペタペタと門に触れてみるとずっしりとした感触が返ってくる。金属っぽいなにかで出来ているっぽくてとても重そう。動くかな?
ちょっと押してみる。
びくともしない。
もっと強く押してみる。
びくともしない。
「も~~~う!!!ふぬぬぬぬぬうううぅぅ!!!!」
全力で押す。踏ん張る足が地面に埋まっていく。
ッズ、と少しだけ動いた気がする。
いけそうかも!
もっともっと押す。光が体中に巡る。
「ぬううううううぅぅううう!!!」
ゴゴゴ。人が通れるほどではないがほんの少しだけ隙間ができた。その時、
キュイイイィィーーンと門が発光し模様にそって光が走る。そして、
ウウウウウゥゥウウウウウウン。ウウウウゥゥウウゥゥウウン
街中に警報が鳴り響いた。
「っえ?!なになに?!何が起こったの?!」
よくわかんないけどなんかやばそうだから早く街に入っちゃおう!
バチバチと抵抗してくる門を無理やり押しやっと人が通れるほどの隙間ができたとき。目の前から銀色の一閃が迸り、くーねは穿たれた。
「ふぎゃっ!」
そのまま大きく後方へと吹き飛ばされる。
「いででで、うみゅ、なんだなんだぁ?ってあれ、これって、」
腹に突き立った銀色の一閃は一本の棒だった。そしてくーねにはこの棒に見覚えがある。
どかっと目の前に誰かが降り立つ。
身長は自分と大して変わらないだろう。腰まで伸びる銀髪と飛び出たツーサイドアップを黒色のリボンでまとめ、胸当てと肩や腕しか装備していないハーフプレート。下はミニスカートに太ももまで伸びているブーツ。腰からはひらひらとしたマントのようなものが伸びていた。
細身で騎士の恰好をした少女が自身の身長より大きいであろう巨大な盾を背にし、アメジスト色の瞳をジッとくーねに向け睨みつける。
「あーーっ!にい」
「くーねっ!!!お前は本当にもう!なんなんだしゃめ!なにかをしないと気が済まないのかしゃめ?!いかれてるしゃめ!!」
「久しぶりだね!元気だった?にいむ!!」
「んもおおおお!!話を聞けしゃめええぇぇ!!!!」




