41 脅威
空から降り立ったくーねはぴーす!ぴーーす!とアピールしながらこちらを向いてくる。
すぐ後ろには大男がいるのに全く警戒した素振りがない。
大男の方も登場したくーねをみて顔を歪ませ睨みつけてはいるがすぐ手を出そうとはしていなかった。
「いやー!さっきの攻撃凄いね!えくすぷろーど?って言ったっけ?いつ爆発してもおかしくないエイタにぴったりな技だと思うよ!」
こいつもう隠さずに言いやがった。
悪びれもなく満面の笑顔でそんなことをいうくーね。自分の失言には気づいていない様子。
「な、なあくーね、やっぱり俺は爆発するのか?あっ!おい!今更誤魔化そうとしても遅いぞ!答えなさい!」
あ、やべっみたいな顔をしたくーねは両手で口を抑えつつくるりと反転。大男に向かうと「こほん」と無理やり切り替える様に咳払いした後にビシィ!と指を伸ばす。
「こらっ!おっきいの!嘘ついじゃダイだよ!魔王軍じゃないんでしょ!すぐわかっちゃうんだからね!」
プンプンと頬を膨らませながら大男に向かって説教を垂れ始めるくーね。だがそんなものを素直に聞くはずもない大男はゆらりと立ち上がると勢いよく飛び出しくーねの目の前まで移動した。
「フンッ」
くーねの顔よりもでかい拳を振り上げて絶望のオーラをしっかりと纏わせた大男は地面に軸足がめり込むほどの力を込めて一撃を放つ。
――ズバァァン
衝撃により発生した空間の揺らぎによって地面が捲りあがっていく。
一瞬のこと過ぎて認識した時には既に衝撃波に曝された後だった。
「・・・っ!くーねっ!大丈夫か!?」
舞い上がった土煙がくーねたちの姿を隠しているせいで状況が分からない。だが、その中からは未だに絶望のオーラを感じることから少なくとこ大男はいるだろう。ということはくーねは・・・
少しずつ土煙が晴れていく。時間の感覚はないが恐らく数秒も立ってはいないだろう。
シルエットがはっきりとしてくる。そこには拳を構える巨大な影とそれを片手で受け止めたまま立っている小さい影があった。
(あれは、、、よかった。くーねは無事か。)
「もーーっ!まだお話の途中でしょ!」
「なん・・・だと・・・」
大男が言葉を失う。自分の渾身の一撃が華奢な少女に片手で止められてしまった事にショックを受けているのかもしれない。
だが直ぐに気持ちを切り替え拳を引くと全身からオーラを噴き出しまた襲い掛かった。
拳での連打。エイタは目で追うのがやっとだった。
しかしくーねはそれを受け止め、避け、流す。素人から見てもその差は歴然。
「もうっ!」
「ゴガァッ」
ドスンッと重い一撃が大男に叩き込まれる。それだけで腹が陥没して口から謎の液体が噴き出される。
よろめきながらも数歩後ろに下がり地面に片膝を付く大男。その腹は凹みひび割れとても無事とは思えない。
「ぐっ、ごほっ、なん、だ。貴様は。なんなのだ。その力、そのち、からは、まるで、あの方のよう。。。」
「あの方~?やっぱ魔王軍じゃないじゃん!これ以上吐かないならもう倒しちゃうよ!」
「ックソ!ここまで、なの、か。」
倒す事を優先したくーねが拳に光を纏わせて殴りかかろうとしたその瞬間だった。
ぐおおおおお~~~~~
どこかで聞いたことがある雄叫びがエイタの”すぐ後ろ”から鳴り響く。
全身の奥底から湧き出てくるような絶望に思わず吐きそうになる。
確実に後ろに”何か”がいる。分かっているのに体が一切動かない。動かそうと考えることすら忘れてしまう。
「エイタっ!逃げてっ!!」
一瞬にして全身から光を放出したくーねが叫んだ。
一秒すら経っていない刹那の時間が永遠に続く中、エイタの視界からくーねが消える。
光の残像が尾を引いてエイタの隣を横切っていくことだけがかろうじて分かった。
直後、真後ろから何かがぶつかるような衝突音が響き渡る。そのすぐ後にははじけた光が辺り一帯を眩しく照らす。
エイタが状況を認識できた時は既に衝撃波によって体が吹き飛ばされた後だった。
宙を浮かぶ体になすすべなくそのままゴロゴロと地面に叩きつけられ転がりすぐに顔を上げる。
そして後悔した。”それ”を見てしまった事を。
一言で言ってしまえば熊だろうか?しかし五メートル近くある巨体はとても一般的な動物とは思えない。なら魔獣だろうか?
いや、それも違うだろうと本能が悟った。
今まで見てきたどんなものをも凌駕するような溢れ出す絶望。もう絶望が具現化してそこにいるとすら思えるほど圧倒的なオーラ。
あれは魔獣じゃない。魔獣をも超えた”なにか”
吐く事すら忘れて釘付けになる。
相手の姿を捉えてやっと全力で思考を巡らせる。
あれはなんなのか、一体何が起こったのか。
消えたくーねはどこに行ったのか。
「・・・!?、くーね!」
くーねが居ない事に気づき急いで辺りを見渡すとエイタよりもさらに後方、村の外壁が盛大に破壊され崩れている事に気づいた。
そしてそこからよたよたと歩いて出てきたのは、
「うそ、だろ、、、」
片腕を押さえ、頭からは血を流しているくーねだった。




