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40 激突!謎の大男

「あいつは俺がぶっ飛ばす。」


 俺の宣言に村長さんは唖然として言葉を失っていた。


 まあ無理もないだろう。目の前で瘴気を当てられ、一度は絶望に飲まれもしたのだ。あれの恐ろしさを一番実感したのも村長さんのはず。


 にしても気になることが大量だ。一つ一つ聞いていきたいところなのだがあいにくと日没までもう時間がない。すぐにでも行動を開始しないといけないだろう。


「よーーし!がんばろうね!エイタ君!」


 ミカが鼻をフンスと鳴らしながら扇子を構える。戦う気は十分みたいだ。


 頷き返した後にくーねをみると小さい光をぽつぽつと村長さんに当てながら鼻歌を歌っていた。


「まてまてまて!どういうことだ?!戦うってなんのことだ?何と?敵って?」


 話の流れに着いてこれずコウヘイが混乱する。この中で唯一アイツを見ていない人でもあるしまあ無理はない。


「おぬしら、本気なのか?いまならまだ逃げれるのだぞ?」


 光を当てられぺかぺかと点滅していた村長さんは絶望が復活してきたのかそんな事を言ってくる。出会った当初と違いかなり優しくなったもんだ。


「奴は異常だ。とても人間が戦って勝てるような相手じゃない。悪いことは言わないからいますぐ、、、」


「それでも、だ。確かにあいつは俺よりも強いかもしれない。」


「な?!」


 ボバッと手のひらから炎を出した。何もない所から出た炎に村長さんも驚愕している。俺はそれを宙に掲げて握りつぶす。


「だが、勝てるかどうかなんて、戦ってみるまで分かんないだろ?」


ーーーーーーーーー


 オレンジ色の夕暮れが山の中へと沈んでいく。少しずつ闇が侵食してくる、そんな時間。


 村の正門の前のひらけた空間に一人の男が立っていた。


 腕を組み仁王立ちしている男は決して微動だにせずその時が来るのを待っている。


(あと数分で日が落ちる。もうこれ以上待つ必要もあるまい。)


 今まで動かなかった男が歩き出す。一歩、一歩。大きい歩幅で少しずつ正門へと近づいていった。


 "道の水晶"を渡さないのならば村を滅ぼす。そんな事私にかかれば労力ですら無い。


 だが何故だろう。この違和感は。この村に一体何があるというのか。


 正門が目の前にまで迫りあと少しで届くと言ったその瞬間、ガコンと音が鳴った。


 静寂を打ち破った音に思わず足が止まってしまう。


 正門を見つめると次第に門が開いていく。


 そこから男が出てきた。一人だけでその手には"水晶"を持っている。


(おお、これが"道の水晶"か。確かに尋常ではない気配を感じる。なるほど、あの方が欲しがるわけだ)


 臆する事なく私に近づいてきた男は二倍ほど違う身長にも関わらず私を見上げてくる。


「よおデカブツ、少し話でもしねえか?」


ーーーーーーーーーーーーーー


 目の前で対峙するとその迫力は想像以上だった。


 はち切れそうなほど発達した筋肉たちは大男が動くたびにギチギチと音を立てている。


 青白い肌に大きな目玉がぎょろっと俺を捉えた。


(よかった。出会いがしらに襲ってくるつもりはないみたいだ。)


 話をする間もなく攻撃されたらどうしようと思っていたのでほっと心の中で一息つきつつもそれを悟られないようにさらに一歩前に出る。


「貴様と話すことなど、ない。素早く己の使命を果たすのが賢明だ。」


「己の使命?なんのことだかさっぱりわからんな。」


「あまり、俺を怒らせない方が、いい。貴様も命は惜しいだろ。無理やり奪うことなど、簡単なのだぞ?」


 なるほどな。大男は俺が水晶を渡しに来た使いかなんかと勘違いしているみたいだ。俺が今手に持っているのは村長さんの部屋に置いてあった水晶。つまりはただの透明な玉だ。ということはこいつは”道の水晶”を見たことはないってことか。


 これ渡して帰ってくれるなら渡してもいいんだけどな~。多分手に取った瞬間バレるだろう。ただの玉だし。


「なあ、水晶はちゃんと渡すからさ、教えてくれよ。あんたは何者なんだ?なぜこれを欲しがる?」


「言ったはずだ。話すことなど、なにもない。貴様が知ることもない。」


「そういわずにさ、気になるだろ?教えてくれたらすぐ渡すからさ!でも嘘はつくなよ!嘘ついたら壊すからな!」


「・・・・・・・」


 なかなか引き下がらない俺にイラついたのかギチギチと音を立てながら大男が拳を握る。黒い紫色の靄のようなオーラが噴き出し俺を、周囲を覆っていった。


(っ、これが、絶望のオーラか、、実際にさらされるときっついな、)


 絶望に飲まれてしまわないように心をしっかりと保つ。


 何秒経っただろうか。日の傾きが山を越え薄暗く闇に染まっていく村の前で、大男はため息をつくかのように息を吐いた。


「はぁ、まあいい。貴様のその胆力に敬意を示し話してやろうか。それで、私が何者か、だったか、そうだな。私が何者かを一言で言うなら”魔王軍”だ。これでいいか?」


「、、、?!」


 魔王軍、それはくーねの世界から来た魔王が再度作り上げたという軍隊。目の前の男は自分がそうだという。


「ふん、言葉も出んか。もうわかっただろ?死にたくなければ早くその水晶を渡すがいい。」


 大男が一歩前に出て近づいてくる。反射的に俺も一歩下がる。


「ま、待てって。まだ質問が残ってるだろ。どうしてこれを欲しがるかを聞いてない。話さないとこれは渡せないぞ!」


「・・・・・・死にたい、のか?貴様。よもや正気の人間とはおもえん。この状況を分かっていないのか。それとも極度の愚か者か。」


 大男が握った拳に絶望のオーラを纏わせながら大きく振りかぶった。咄嗟に距離を取りその場を脱すると俺が元居た場所の地面に小さめのクレーターが出来ており、その中心には大男の拳が埋まっていた。


 踏み固められた土の大地が円状に陥没しているが男の拳に傷がついている様子もなくそれだけで体の頑丈さと拳の威力が伺えてくる。


 生気の宿っていない目玉だけがこちらを捉えているが、追撃するつもりはないようだ。


「ほう、避けた、か。なるほど。ただの人間ではなさそうだな。騎士団か?」


「騎士団?ちげえよ。全くどいつもこいつも知ってるのが当たり前みたいに単語使いやがって。もっとタイムトラベラーに配慮しろっての。」


 最後の一言はぼそっと言ったので多分聞こえてはいないだろう。


(そういえば手紙にも騎士団って言葉出て来てたな。そのことか?)


 暫くの見つめ合い。太陽が完全に沈み薄暗い夕方から完全な夜に切り替わったころ、大男から今まで以上のオーラが放たれる。


「っく、、、なんだ、、、」


「時間だ。日没は過ぎた。約束は果たされなかった。」


 物理的な圧を感じてしまえそうなほどオーラが噴き出し渦巻いていく。先ほどの大振りな構えとは違いしっかりと姿勢を構えた大男を見てエイタの左眼も反応し炎が漏れ出す。


 手に持った水晶をあからさまに前に突き出す。


「なんだ、今更渡そうと?だがすべて遅い。貴様も、この村も、、」


「ちげえよ早まんな。」


 言葉を遮られたことで思わず止まってしまった大男。そのままエイタの言葉の続きを待っていた。


 エイタは手から炎を出すと水晶を包み込み力を入れていく。


「一方的な脅しを約束とは言わねえんだよ。それと俺は言ったぜ?嘘をついたら壊すって」


「嘘だと・・・ッ?!待てッ!」


 一拍遅くエイタがやろうとしていることに気づいた大男。急いで手を伸ばすがその手が届くよりも早く、


 ――バキンッ


 ガラスが砕け散る音が夜の闇に響き渡った。粉々になったガラス片が地面にばら撒かれた。


「っな、なんだ、と、、、」


 大男が言葉を失い立ち尽くす。


 ――ズバァァン!


 次の瞬間、土塊が高速で飛来し大男を打ち抜いた。もくもくと土煙によって姿が見えなくなる。


 そんな中に構わず突っ込んでいった人が一人。


「はじけろッ!『エクスプローードッ!』」


 大地が震えるほどの衝撃音。爆風により土煙が吹き飛ばされたそこには、


「・・・くっそ!」


 右腕でエイタの拳を受け止めていた大男がいた。はじける様に破れた服の下には顔面と同じような青白い肌が露出しており肉をグチュグチュとさせながら蠢いている。また左手は横に伸ばしており手のひらからはシュ~~と煙が出ていた。恐らく飛んできた土塊を受け止めたのだろう。


(全力の一撃だぞ?!だがダメージはあるっ!が決定打には程遠い、、、せめて急所に当てれれば、、、)


 大男を蹴りつけ急いで距離を取り直す。


 ダメ―ジを受けた両手を見つめていたおかげか素直に離脱することができた。


「なるほど、この奇妙な感覚は貴様自身、だったか。」


 グーパーと手を動かし正常に可動していることを確認した大男はゆっくりとこちらに向かってきた。睨み付けるが隙が見当たらない。


「本当に壊されるとは、流石に予想外、だ。せめてここを滅ぼすことをあの方の手土産にするとしよう。炎を出す人間。貴様の死体もいい研究材料になりそうだ。」


「はっ、そんなん嘘つく方がわりいだろ。それに安易に魔王軍を名乗らないほうがいいぜ。なんたっておっかない奴がきちまうからなっ!」


 内心冷や汗を掻きながらも全速力で大男とは逆方向に走り出す。ちらっと後ろをみると俺を追いかけるために大男もちょうど走り出すところだった。


 どうせすぐ追いつかれる。追いつかれたら俺はすぐミンチになってしまうだろう。


 残念だが俺の出番はここまでだ。


 最近まったくいい所ないなと思いつつも大きく息を吸い全力で叫んだ。


「くーねーーーっ!!!あとは任せたぞーーー!!!」


「・・・ッ!?」


 真後ろまで迫っていた大男が何かを感じ取ったのかブレーキをかけて急停止した。


 その目の前にケミカルな光の柱が降り注ぐ。


 天まで貫きそうなそれにさすがの大男も唖然としていた。


「な、なんだ、これは・・・」


 数秒して光が収まっていったそこに空から一人の少女が降りてくる。タタンッと軽快に地面を鳴らしながら着地した少女はピースさせた手をチョキチョキさせながら振り向いてくる。


「エイタ!なかなかいい一撃だったよ!かっこいい技だね!」


 光の余韻を体に纏わせたくーねが降臨した!


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