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4 崩壊する世界 4

定期的に投稿出来れば良いなと思っています。

 エイタはバールを握り直した。

 目の前のゾンビは唸り声を上げながらよろよろと腕を伸ばしてくる。


 震える膝を無理やり前に出し、エイタは渾身の力でバールを振り抜いた。


 ゴッ。


 鈍い音が響いた。ゾンビの頭に命中したはずなのに、倒れない。


「・・・っ嘘、だろっ」


 ゾンビはよろけただけで再び体勢を立て直し、がぱりと口を開く。


 恐怖に背筋が凍る。が、それでもエイタは踏みとどまった。

 ゾンビが掴みかかろうとするのをなんとか避けつつ、もう一度バールを振るう。

 何度も、何度も。


 やがて、ゾンビの腹に蹴りを食らわせる形で吹き飛ばすと、背後にあったロッカーに叩きつけた。

 ロッカーが盛大な音を立てて崩れ落ちる。


「今だっ!」


 エイタは倒れ込んだゾンビに再びバールを振り下ろす。

 何度も、何度も、何度も——。

 やがて頭部が潰れゾンビの動きが止まる。


「よっしゃ!」


 勝利を確信し立ち上がるエイタ。そのまま振り返るとミカが放送室から飛び出してこちらに駆け寄っていた。


 心配させてしまったかと、自分は平気だと伝えようとしたエイタだったが、


「エイタ君!後ろ!」


 そうミカが叫んだ瞬間、エイタの足がゾンビにつかまれてしまった。


「っ!?、うそだろっ!まだ動くのかよ!?」


 焦るエイタ。反応が遅れてしまいゾンビに転ばされてしまう。

少しずつゾンビの爪が食い込み痛みを感じる。


「このっ、離してっ!!」


 エイタとゾンビの間に入ったミカが、ハンドスコップをゾンビの腕に突き立たてるが骨に阻まれ、ガキィンと音が鳴る。が、そのまま何度も突き立てる。

 もともと脆いこともあり何度目かの攻撃でゾンビの腕は切断された。エイタの足を掴んでいた手も力を失い離れ落ちる。


 手が離れたことで少し冷静を取り戻したエイタ。

 ミカを後ろに下がらせつつ状況を分析する。


(こいつは頭だけじゃ止まらない。なら、心臓かっ?!)


「はああぁっっ!!」


 エイタはゾンビの胸を狙ってバールの先端を突き立てた。

 グシャッっと肉を裂く感触と同時にゾンビの体がビクリと痙攣し、こんどこそ完全に動きを止めた。


「はぁ、はぁ、倒せ、た・・・」


 ようやくの勝利に、エイタはその場にへたり込む。


「エイタ君っ!」


 ミカが倒れそうなエイタを支えてくれる。


「よかったよ、、、無事で」


「ハハ、大丈夫だよ。ゾンビの一体くらい、どんなもんじゃい」


 口ではそう言うが、心臓はバクバクと激しく暴れている。

 きっと支えているミカにも振動は伝わっていたのだろう。


「ごめんね。エイタ君ばっかりこんな危険な目に遭わせて・・・」


「平気だって。それより桐島さんも無事でよかった」


 ようやく一息ついた二人だったが、廊下の向こうから不気味な足音が響く。


 ズサ・・・ズサ・・・.


 二人そろって廊下の奥を凝視する。同時に最悪な予想が頭に浮かぶ。

 おそらく先ほどの戦闘音におびき寄せられたのだろう。

 どこに隠れていたのか。

 現れたのは、ゾンビ。それも両手じゃギリギリ数えられなそうな数。


「「・・・・・・・・・・・・・」」


 二人とも言葉を失った。


「くそっ!」


 すぐに立ち上がったエイタがミカの手を取って駆け出し、すぐ近くにある放送室に飛び込む。

 バタンっと扉を閉め、ロックをかけた。


 ドン・・・ドン・・・ドンッ


 すぐに扉が揺れ始める。ゾンビたちが中に入ろうと叩きつけている。


(もう、ここで終わりなのか・・・?)


 エイタの思考にじわじわと絶望が染み込んでくる。

 けれど、そのとき——


「これは・・・!」


 それは目の前の放送設備。そして微かに点滅する電源ランプ。


「もしかしてっ、これなら・・・よしっ、いける!」


 何度かコンソールを操作したエイタは放送開始のボタンを押した。


 ジジッ——


 校内に残る配線が繋がったスピーカーからノイズ混じりの放送を開始する音が校内に響き渡る。


「誰かっ!聞こえるかっ!?俺たちはここにいるっ!」


 音声はとぎれとぎれで聞いてる側からは内容すら理解できないかもしれない。だが、放送しているという事実さえ伝わればもしかしたら、外にいる人に伝わって助けが来るかもしれない。その思いだけで言葉を続けるエイタ。


「頼む!誰かっっ!」

 

が、それが限界だった。


 バチッ


 電源がショートし、黒煙を上げて故障してしまう。


「くっ・・・ここまでなのか」


 扉の外では、ゾンビたちがひたすら扉を叩き続けている。

 他の部屋よりは頑丈な扉だが、それも時間の問題。

 チラッと隣を見ると不安そうな目でミカもエイタを見ていた。


(戦うと決めたばかりなのに、俺はもう諦めるのか?)


「いいや、まだだっ!」


 エイタは震える手でバールを構える。


「もう一回だ。もう一回、あいつらをぶっ飛ばして・・・!」


 そんな諦めないエイタをみて、ミカもニコッと笑う。


「エイタ君。私も戦う。一緒にここを出よう!」


 おそらく次は、先ほどみたいにうまくは行かないだろう。

 無理を承知で、それでも戦う。

 希望はない。でも、諦めたくなかったから。


 ミカの気合を見てエイタも頬を緩める。


「ああ!行こう!」


 死地になるかもしれないが、それでも。

 そしてついにエイタが扉のロックを解除しようとした、そのとき。


 ズドドオオオオン!!!


 とてつもない轟音とともに”なにか”がゾンビたちのいる天井から降り注いだ。

 ケミカルとラメが入り混じったような光が辺り一帯を染め上げる。

 数瞬後に光が収まっていき、恐る恐る外を見ると、なんとゾンビたちの姿が消え去っていた。


「えっ・・・?」


 上を見るとぽっかり空いた天井から、一人の少女がゆっくりと舞い降りてきていた。

 まるで天使が舞い降りてくるかのように、しかも少女の背後、下から照らすアッパーライトが七色に光り、ピカピカと動いている!ゆっくりと時間を掛け地面に降り立った少女は、クルンッとその場で一回転して右手を腰に!そして左手を頭に持っていきピース!クイッと腰を曲げながら右足もクイッと上げる。


 そんなアイドルみたいなポーズを取った少女は、状況に付いていけずに口をポカーンと開けるエイタ達に向かって言った。


「やっほーー!呼ばれた気がした!くーねたんです!!!」


遂に、、きた!


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