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38 破滅の占い

「それで、言い訳は?」


「「ごめんなさい。。。」」


 腕を組み仁王立ちをしたミカの前で地面に正座する俺とくーね。どうしてこんなことになってるのかというと、


 あの後、くーねが始めた弾丸ライブは混沌を極めていた。


 観客は誰もかれもがステージに向けて石や瓦礫を投げつけ、それをくーねは歌って踊りながら華麗に避けていったのだ。しかも当てられない観客に対してぷーくすくすと煽りまで入れる始末。怒りが溜まっていった観客はどんどんボルテージを上げていき投げられるものもだんだんと殺意に満ちた危険なものとなっていった。


 終盤には刃物や矢が飛んできて、それでも当たらない攻撃に隊列まで組む村人たち。にも拘わらずその全てを避ける弾く掴む。村人たちのくーねに対する視線は化け物のそれだった。


 ただ村人たちも気づいてはいないだろうけど皆くーねの歌に合わせて攻撃していた。どれだけ怒っていても深層心理で歌にノってしまっていたのだからくーねのライブは凄いと思う。


「エイタ君聞いてるのっ!?」


「はいっ!聞いてませんでした!ごめんなさい!」


 腕を組んだミカが片方の頬を膨らませながら怒っている。俺が回想に耽っている間にいろいろと話していたらしい。なんも聞いてなかった。


「もう!どうしてあんな面白そうな事を二人だけで始めるかなぁ!私も一緒にやりたかったのに!」


 あれ、この人の怒ってる場所そこなの?それでいいのか?


「じゃあじゃあ!次はミカも一緒にね!一緒にやろう!」


「うん!」


 そしてくーねは全く反省はしてないらしい。いや、ミカは村を破壊しながらライブしたことに対しては怒ってない?!なんてこった。こいつらは無敵か?!


「話は終わったかい?」


 俺達三人がわいわいしょうもないことを話しあっていると掠れた声がかけられる。そちらを向くと杖をもったおばあさんがボロボロで今にも壊れそうな椅子をギィと鳴らしながら座っていた。


「村長さん。お騒がせしました。もう大丈夫です。」


 三人を代表して言葉を返すと村長は俺の顔を一度見ると「フンッ」と鼻を鳴らしてすぐに視線を反らした。


 そんな態度にミカが一瞬ピクッと反応するがそんなことでいちいち突っかかっていたらきりがないのを分かっているのか特に何も言わなかった。


 今この場には俺達三人と村長、ミカの両親にこの村の重鎮的な人たちが三人ほどが一同に会している。


 村の重鎮的な人たちは先ほどの騒ぎの件もあり、かなりの眼光で俺達を、特にくーねを睨んでいた。もしかしたら矢を当てれなかった人達かもしれない。どんまい!


「はぁ、そろそろいいか?ばあさん。占いについて話してくれ。」


 昨日からいろいろありすぎて若干お疲れ気味のミカパパ。先ほどの騒動の事もあって疲れた顔を隠そうともせずに目頭を揉みながら話を進める。


「ああ、そうだね。じゃあさっさと話すとしようか。」


 もう一度俺とくーねを睨みつけた村長はどこでもない天井をぼーっとながめながら話し始めた。自分が見た占いの話を。


~~~~~~


 

 異界より歩みし者、村に滅びの時招く。

 黒き獣が吠える夜、来訪者が訪ねてくるだろう。

漆黒が村を包み込む。灯る炎を絶やしてはならない。

だれもがかなわない。希望に頼りなさい。



夜明けを待ちなさい。さすれば鈍い天使が全てを終わらせるでしょう。



~~~~~~


 村長が占いを話し終えると深く椅子に座り直した。


 誰もかれもが占いを嚙み締めるかのように黙っている。


(これが占いか、ぐちゃぐちゃで良くわからないけど。とにかく村がやばいってのは分かった。)


 ミカを見てみるとミカも「うーーむ」と難しそうに首をかしげて考え込んでいる。


「なるほどな。ばあさん、その占いはいつ?」


「昨日の朝じゃ。」


 昨日の朝。俺達が来た日の前に見てるのか。占い当日によそ者きたらそりゃ警戒するわな。


「しょうおばあちゃん、確か私がいないと云々って言ってたけど今の占いだと私関係なくない?」


「わしにとってミカは天使じゃ。」


「あ、そう。」


 天使と呼ばれたミカがそっぽを向きながら「私魔女だもん。。。」と呟いているが、ミカパパが村長の発言にもげそうなくらい首を縦に振って肯定していた。ミカママに首を掴まれて停止する。


「それで、その占いはいつくるんですか?」


「ふんっ、もうとっくに来てるわい」


「えっ?!大丈夫なの?!」


 占いは既に来ていると言われ驚くミカ。村長はため息を吐くと枯れ木のような手でゆっくりと指をさした。


 指で指した先を視線で追っていくと、


「あ、もしかしてそれが私達?」


「異界より歩みし者、か、」


 俺の呟きに、ミカが、村長が、その場の全員がくーねをみた。

一人だけ浮いた服装に黄金色の髪色。本人はなんで見られているのか分かっていなそうな顔でアホ毛をふらふらさせている。


 これだけでもくーねがこの国の人ではないと分かるだろう。


 それに極めつけは”異界”という言葉遣い。外から誰かが来るのであればほかにもいろんな単語がありそうにも拘わらずわざわざ異界と表現する理由はくーねがほかでもない異世界から来ているからではないだろうか?もちろん俺たち以外にはくーねが異世界の人間だとは知らないはずだ。


「うぇ?!なになに!どうしたのみんなしてこっちみて!?はっ!もしかしてくーねたんの隠しきれないスター性に遂に気づいちゃった?」


 みんなに注目されたことをどう受け取ったのかキラッキラッとポーズを取り出すくーね。


 一見無害な女の子にしか見えないがもし村を滅ぼせるとしたらくーねくらいなんだよな。


「あ~、えーーっとその、、、ごめんなさいっ!!」


 だから俺は謝罪を述べながら頭を下げた。ミカも一緒に頭を下げている。だってもう確定じゃん!くーねが村滅ぼしちゃうじゃん!少なくとも滅びの時を招いてるよね!


「むー!なんで謝ってるのさ!私なんも悪いことしてないよ!」


 頭を下げた俺とミカを見てアホ毛をピンピンと立てながら両手を挙げて抗議するくーね。


「はぁ、あんた達ね・・・」


 そんな俺たちのやり取りにすっかりあきれ返った村長が額に手を当ててため息交じりに何かを言おうとしたその時だった。


「村長!大変です!」


 バンッと無遠慮に開け放たれたドアに全員の視線が集まる。そこには軽くて硬そうな装甲を纏った青年が立っていた。昨日門番が着ていたものに似ているのでこの人も恐らくは門番かそれに近い人なのだろう。


「おいっ!今は大事な話の途中だぞ!」


 コウヘイが門番を叱るように声を上げるが村長が手を挙げて制止した。


「まあ待て、なんでもやんごとなき事情がありそうだ。そのまま話しなさい。」


「実はですね先ほど村の正門にものすごく背の高い男性が来たのですが、」


「ほう、流れ人か。随分と珍しい」


「はい、、、ですが様子が少しおかしくて。いつも通り追い返そうとしたんですが聞く耳を持たず、それどころか『長を出せ』の一点張りなんです。なので出来れば正門まで来てください。」


 門番はそこまで言うと「ふぅ」と息を吐き、何かに怯える様に体を擦り始めた。言わなきゃいけないことを伝え終わったからか気が抜けたのかもしれない。そのまま心霊スポットで見てはいけないものを見てしまった人のようにボソボソと話し始めた。


「あれは、おかしい。得体が知れない。バケモンだ。あんな・・・あんな・・・」


 ガクガクと震えていた門番は遂にその場で崩れる様に座り込んでしまい、聞こえるかどうかくらいの声量でブツブツと何かを呟いていた。


 そんな門番の急変に場のみんなが困惑する。が、一人だけ、くーねだけは動き出していた。


「~~~~♪」


「くーね?」


 歌いながら門番に近づいていくくーね。


「っ?!」


 ガタガタと震えていた門番はゆっくりとくーねに視線を送ると、少しずつ体の震えが収まっていき、フッと何かから解き放たれたように晴れた顔を見せるとそのまま眠ってしまった。


(今のは・・・闇が晴れた?一瞬あの人から黄金の光、希望の力が見えた気がするけど)


「おい!大丈夫か!」


 一連の事態を見ていた村の重鎮の一人が倒れて眠ってしまった門番の元へと駆け寄っていく。その時にくーねを遠ざける様に突き放す事も忘れない。


「おい、一体何しやがった!」


 門番の状態を見て眠ってるだけと分かりホッとしながらもすぐにきつい目つきに変わりくーねを睨みつける。


 状況だけ見るとくーねが何かをして眠らせたようにしか見えないので非難を咎めるものは誰もいなかった。皆くーねの説明を待つかのように視線が集まっていく。


 突き飛ばされたくーねは特に不快に感じてる様なこともなく手に顎を乗せて考え事をしていたが、流石に全員からの視線に気づきそれをやめる。


「くーね。その人に何が起こったんだ?俺にはくーねが歌ってから何かが”晴れた”ように見えたけど。」


「お!エイタも分かるようになってきたね!そうだよ、この人は今”絶望”に飲まれていた。それを晴らしてあげたの。」


「絶望・・・?」


「よっぽど恐ろしいものを見たんだと思う。いや、それだけじゃないかも・・・」


「ふざけんな!」


 俺とくーねが話し合っていると門番の様子を見ていた人が声を荒げた。


「さっきから意味の分からんことを言いやがって。お前がこいつを眠らせたんだろ?!全員が見ていたぞ!奇妙な術を使う魔女め!」


「なんだよその態度。くーねはその人を助けたんだぞ!」


「ひっ、お前も化け物か!やはり魔女の仲間は人じゃない!」


「ちょっとエイタ君気持ちは分かるけど落ち着いて!」


 村人のあんまりな言い方につい怒ってしまい目から炎が漏れてしまった。それを見た村人が怯えたように罵ってくる。


「あんたら落ち着きなっ!」


 村長の喝が響き渡る。ついでにゴチーーンと俺とくーねを睨んでいた村人が村長の持つ杖で殴られた。


「今はここで言い合ってる暇はないさね。そこの子が言うにはその恐ろしい存在ってのが未だに正門にいることになるんだから。」


 緊張感が漂う。そうだ、門番さんが何かに怯えていたのは事実であり、その原因はすぐそこにいる。


「ばあさん、行くのか?危険だぞ。」


「向うは『長を出せ』といっている。なら少なくとも話をする余地があるとわしは思う。これ以上謎の被害が増える前に出張るとするよ。すまんなあんたら。話はまた後じゃ。ここで待っておれ」


 そういうと村長はカツカツと杖を鳴らしながら部屋を出ていった。村の重鎮たちもあわあわとしながらすぐにそれを追いかけていく。


「私はこいつをベットに寝かしてくる。少し待っていてくれ。」


 コウヘイが寝てしまった門番を抱きかかえ同じく部屋を出ていく。リョーコも手伝うために一緒についていった。


 部屋には俺くーねミカの三人だけになってしまった。


「んーと、どうする?追う?」


「そんなの追いかけるしかないでしょ!」


「私も行った方がいいと思うよ。さっきの絶望、ただ見ただけでなったとしたら相手はかなりの存在かも。」


 目を輝かせながらフンスと鼻を鳴らすミカ。扇子も構え準備万端の様子で出発を待っている。くーねの方も「むむ~」と考察を落としながら追いかけることに賛同した。


 このタイミングで来た謎の人物。俺に行かないという選択肢はなかった。そして大体みんな似たような気持ちを持っているらしい。


「よし!なら行くか!」


 なんだか興奮気味のミカと放っておいたら一人で行ってしまいそうなくーねと共に俺達も正門に向かうのであった。


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