35 感動の再会!
「ばあさん!いつだ!何が見えたんだ?!」
ミカのお父さんが村長を問い詰めている。しかし周りの人たちはそれを咎めるでもなく耳を傾けていた。
僅かな言葉すら逃さないかのように。
「うぅ・・・少女・・・ミカが居ないと、村が・・・滅びる・・・」
「なっ?!なんだと?!」
ミカの攻撃によりもともと弱っていた村長は占い結果だけを言うとガクッと気絶してしまった。
「うわぁ、なんかやばそうなこと言ってたんだけど。私が居なきゃ滅ぶとかその状況が嫌すぎるよ。早いとこ逃げよう?」
自分がいなきゃ村が滅ぶと聞いて嫌な顔をしながら歩き出すミカ。
「待ってくれ!ミカ!お願いだ。お前の気持ちは尊重したい。が、もう少しだけ時間をくれないか?せめてばあさんが起きて詳しい話を聞けるまでは・・・」
「・・・・・・はぁ、頭を上げてお父さん。わかったから。しょうおばあちゃんが起きて詳しい話を聞くまではどこにもいかないから。
「ミカ、ありがとう。」
「でも村には入らないよ?というか二人と離れるような事はしない。」
「ああ、それで構わない。一緒にいていい。だが外は危険だ。」
そういうとミカのお父さんは村の集団の方を向き声を張り上げた。
「ここでもう一度採決をとろうと思う!今しがた村長が言ったように現在この村には滅びの危機が迫っている!そしてそれに対抗するにはミカの存在が要となる可能性がある。だから俺は詳しい話を聞くまで三人を村に入れたい!」
既にミカの氷が解け始めている村人達はみな困惑していた。
三人を村に入れるべきか、それとも村長の教え通りによそ者は追い出すか。
「必要なのはあんたの娘だけだろう!ほかの二人は要らないじゃないか!」
村人の一人がそんなことをいうとその考えは次第に広がっていき「そうだそうだ!」といろんな人が言い出し始める。
この人たちはさっきまでのやり取りを見てなかったんだろうか?そんな事言い出したら話が振り出しに戻るぞ。
暴徒化しそうなほど熱を帯びてきた村人たちをなんとか宥めようとするお父さんを見かねたミカがすたすたと歩いていく。
「ミカ?」
嫌な顔を隠そうともせず父の隣に並び立つミカ。
村人達はやっと来てくれるのかと思いほっとしながら静かになった。
しかしミカの次の言葉で凍り付く。
「何度も言わせないで。私は村に一人で入るつもりはない。お父さんと約束したからしょうおばあちゃんが起きるまではここに居るけど、それだけ。」
「なっ?!何を考えてるんだ!お前のその我儘で村が滅ぶかもしれないんだぞ?!」
「うん。そうかもね。それが?私に関係あるかな?」
「は・・・?」
「別に私が住んでいるわけでもないんだし、滅んじゃってもどうでもいいんだよね。こんな山に囲まれた場所だし、滅んだところで誰も気づかないんじゃないかな?というか昨日までは正直滅んでると思ってたもん。ここに来るまでいろいろ見てきたからさ。だからどうでもいいの。」
ミカに言葉を投げかけていた人が、いや村の人全員が戦慄した。
彼女が今本気で話している。自分の発言に嘘偽りが一切ないかのように。それが伝わってきたからだ。
「桐島さんこっわ。こわいって。」
「いつのまにかミカの覚悟が決まりすぎてる!大戦前の戦士でもあそこまでならないよ」
大戦前の戦士を見たことはないが、確かに今のミカはそれくらい堂々としていた。
「だからグダグダ言ってないで早く決めて?私”達”を村に入れるの?入れないの?」
「ほんと、大きくなったなぁ。よし、では採決を取る。彼らを村に入れることに賛成の者は挙手を―――」
「お父さん、お母さん!ただいま!!!」
感動の再開パート2である。
現在エイタ達はミカの実家。桐島家にお邪魔させてもらっている。
多数決の結果は賛成多数だった。やはり誰もが自ら滅びたくはないだろう。それでもよそ者には変わらない俺達。受け入れ先がないように思われたがそこはミカが当然家に来るでしょ?ね、お父さん?と言う事である。
ミカの両親も元々家に招くつもりだったのか一つ返事で迎え入れてくれた。
「すっごく懐かしく感じるな~。家無事だったんだね。あの時のまんまだよ。」
「家は運よく倒壊しなかったんだよ。そのまんまなのはいつかミカが帰ってきた時のために・・・」
「そっか・・・でも二人は結構老けたね。」
「二年も会ってないんだぞ?そりゃ老けるさ。逆にミカはまったく身長が伸びてないな。今何歳だ?十八くらいだろう?」
「え?!っと~。いろいろありすぎて全然覚えてないや~」
あはは~と言いながらなんとかごまかそうとし、無理やり話題を変えた。
「それより!改めて紹介するね!ここまで一緒に来てくれた仲間のエイタ君とくーねたんちゃんだよ!」
「粒谷エイタです。」
「くーねたんはくーねたんです!!よろしくね!ミカパパミカママ!」
俺が名を名乗るとミカのお父さんが「ん?粒谷?どこかで・・・」となるが、そのあとすぐくーねが名乗り上げたことですぐにそっちに気を取られた。
「あらかわいい!私は母のリョーコです~」
「私はミカの父、桐島コウヘイだ。エイタ君だな。それで、えーとくーねた、ん?君の事は何て呼べばいいんだ?」
「くーねたんですので!くーねたんと呼んでください!」
「えっ、あ、い、いやー、それはちょっと。。。」
わかる!わかるよその気持ち。やっぱり抵抗あるよね!
くーねに絡まれて困っているコウヘイさんを見ているとミカが家の二階の方へと上がっていってしまった。久々の自分の家を探索するつもりらしい。俺はどうしよかと思っているとリョーコさんが話しかけてきた。
「エイタ君。改めてミカを助けてくれて、一緒にいてくれてありがとうございます。あの子が今笑っているのはあなた達のおかげです。」
「いえいえいえ。俺は別に何も。逆にミカさんには助けられてばかりですし。こちらがお礼を言いたいくらいです。」
「あらそうなの。だとしてもミカとこうして会えたことは事実。本当にありがとうね。」
リョーコさんに頭を下げてお礼を言ってくる。俺的には本当にお礼を言われるようなことはしてないんだが、わざわざ拒んでもそれはそれでよくない気がするので素直に受け取る。
そして一通りお礼を言い終わったリョーコは優しそうな顔を一変、面白がるようなニヤニヤ顔に変えて詰め寄ってきた。
「それで~~。娘とはどこまで進んでるのかしら??」
「ちょっ?!リョーコさん?!」
肩を引き寄せられ内緒話でもするかのような体制になる。
「んもー、ミカがあんなこと言うんだもの。明らかに特別な関係じゃない!どうなの!ずっと一緒にいたんでしょ!ほら!何をしたかお母さんに話してみなさい!」
「ななな、なんもしてないですからっ!安心してください!娘さんには手を出してません!」
正直考えたことがないと言えば嘘になる。俺だって立派な男の子だ。チャンスならいくらでもあったし。ただ置かれてる状況が状況すぎてそれどころじゃなかったのもまた確か。あとそんなことしたらくーねにバレそう。
リョーコは「えーつまんなーい」ととても自分の娘の事を思っているとは思えないようなことを言う。
手出されてない方いいじゃないですか。あなたの娘さん結構危なかったんですよ。
「おっ、お母さん!なにしてるの!なんでエイタ君とくっ付いてるの!」
そして戻ってきたミカが俺とリョーコさんを引き剥がした。
「あら残念。いまからミカとの進展を深堀しようとしたのに。」
「も~~~。エイタ君とはなんもないから!そういうのじゃないから」
「え~ホントかな~?でも実家と両親を見捨ててでも一緒にいたいんでしょ~?」
娘の反応が面白いのかすっごくニコニコしながらミカをおちょくっているリョーコさん。その姿がどことなくミカに似ていて本当に親子なんだなって感じる。
「おおおおおお母さん!それはその場の流れと言うか・・・いや確かに本心ではあったけど別にお母さんたちが嫌いとかじゃなくてね。もーーー!とにかく違うからね!だからエイタ君もそんな期待した目で見ないで!」
べっ、別に期待なんてしてないんだからね!
どうやら期待した目で見ていたらしい。恥ずかしくなり目を反らすとちょうどミカが持っていた物が目に入ったのでこれ幸いと話題を変える。
「桐島さん、それは?何持ってきたの?」
「ん?あ~これはね~」
指摘されたミカは持っていた布のようなものを広げるとバサッと翻しそれを羽織った。さらに無駄に上に伸びている帽子を被る。
「じゃじゃーーん!魔女っ子ミカるん!変身です!」
いわゆる魔女が被っていそうな帽子を深くかぶり、帽子と同じ色の深い紺色をしたローブをことあるごとにバサッとしていた。
その見た目はまるで物語に登場する魔女そっくりだ。
「ああ、そういうコスプ――ぶへっ!!」
ミカるんの魔法攻撃!エイタは悶絶した!
一瞬のうちに扇子を振るったミカの魔法により風の塊が生成され、エイタの腹にめり込んだ。
「ってええええ!!いきなり何しやがる!」
腹を抑え蹲りながららもミカに抗議の声を飛ばすが、
「コスプレじゃないですーーー!私は本物の魔法使いの魔女なんですーー!」
くっそこいつコスプレ扱いされたくらいで攻撃してきやがった!
口を尖らせながらぶーぶーと文句を言うミカ。ただ確かに魔法を使えるのは事実だし魔女って名乗るのも何もおかしくはないから反論ができない。
一部始終を見ていたリョーコが頬に手を添えながら「あ、あらら・・・これは・・・」と娘の躊躇いのない攻撃に若干引きつつ苦笑いをしている。
「エイタ君っ!大丈夫か?!」
今までさんざんと”くーねたん”を推されて参っていたコウヘイがくーねから逃げる様にこちらに顔を突っ込んできた。
その後ろからくーねもこちらに戻ってくる。
「おおーー!ミカ!かっこいい!冥淵の魔女みたい!」
「めめめめ冥淵?!?!?なにそれかっこいい!!詳しく教えてくーねたんちゃん!!」
くーねが発した単語に厨二心をくすぐられたミカがいつものように反応する。詰め寄り腕をつかむと、ゆっくり腰を据えて話を聞くためかそのまま家の奥の方へと行ってしまう。
この場に残されたのは蹲る俺となんとも言えない顔をしているミカのご両親お二人。
とても気まずい雰囲気が流れる。
「え、えっと、なんか、うちの娘がごめんなさいね?」
「い、いえ。」
「ささ!エイタ君も早く部屋の方で休んでくれたまえ!」
「はい、そうさせていただきます。」
気まずい三人はこの状況を脱するため、すぐにミカ達を追っていくのであった。




