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34 魔女っ子みかるん

「こんな村、いらないでしょ?」


 そういうとミカは扇子を掲げ、詠唱を開始した。


 村の人たちに動揺が走る。

村長が何かを叫びミカを止めさせようとしている。


 でもこうなったミカは止まらない。ここは好きにやらせてやろうと思い特に口出しもしない。


「氷風よ、天を覆い、大地に永久を与えよ――」


 一節唱えるだけで、ゴウゥと風が吹き荒れ始める。


「な、なんだ?!」


「冷たい・・・風?」


 ミカを止めるため、村長の指示を受けた村人数人が突然現れた凍えるような風に困惑する。


「止まるんじゃないよ!すぐ捕らえて・・・」


唯一危機感を覚えていた村長が叫ぶがそれよりもミカの詠唱の方が早かった。


「舞え、舞え、舞い踊れ、我が指揮をなぞりし風鈴の子らよ。」


 草木が凍り、ビキビキと音を立てながら広がっていく。


「雄叫びとなりて!世界を喰らえ!『ブリザード・ロア』!」


 ミカの詠唱が完了し、技名を発した瞬間。今までとは比べ物にならないほどの暴風が出現する。


 それはまさしく吹雪だった。

視界が白く染まり少し先の視界も見えないほどの猛吹雪。あられとなによりその凍ってしまいそうなほど冷たい風によって、村の人たちの中でも立っていられるものはほとんどいないだろう。


 俺だって炎を全身に巡らせることでなんとか寒さをしのいでいるのだ。なんの対策もない村人たちはまさに災害である。


「ミカの詠唱はすごいね。前よりも洗練されてる。紡ぐ言葉にしっかりと核力が流れてるよ。こりゃ魔女っ子ミカちゃんになる日も近いね!」


 この事態に流石に思考の海から帰ってきていたくーねがなんか言ってる。

特に核力を纏っているわけでもないのに平気そうだ。寒くはないのか。


「桐島さんの詠唱っていっつも違うけどそんなもんなのか?」


「大魔術師に聞いたことがあるけど、なんでも勝手に詠唱が思い浮かんで出てくるらしいよ?その場に適した奴がアドリブで。だからミカもそうなんじゃないかな?」


「へ~、意外とそんなもんなのか。」


「普通は決まってるんだけどね。好きかってに言っても術が発動するのはごく一部だよ。まあ私もノリで言っちゃうけど。」


 ブリザードが吹き荒れているにも関わらずのほほんと会話をする俺達。


 パタンとミカが扇子を閉じることによって数十秒続いた吹雪は次第に収まっていった。


 視界が開き向うの状況が分かるようになると、


「こりゃ、、、すげえ」


「おーー!流石ミカ!」


 そこにあったのはまるで鏡の中に入ったのではと錯覚するほどに凍り付いた世界だった。


 村人たちも凍り付いており、かろうじて動けそうなのは数人。

しかしその数人も悪魔を見るかのような怯えた目でミカを見ている。


 そんな世界を作り出した張本人はというと、


「ハックチョン。あーさむい。エイタく~ん。あっためてぇ~。

ふひゃ~、あったかいねえ。」


 自分で凍らせたくせに俺で暖を取っていた。


「桐島さん・・・みんな見てるよ。」


「え?わっ!ほんとだ!めっちゃみられてる!」


 暴風により乱れまくった髪を整えながら姿勢を正したミカは手を掲げると高らかに宣言した。


「これで今日から私も魔女だー!」


「おーー!!魔女の誕生だー!魔女っ子ミカ!よっ!魔女っ子ミカるん!」


「そう!私は魔女っ子ミカるん!っえ、ミカるん?私ミカるん??」


 ぱちぱちと手を叩いて祝福するくーね。勝手に名前を付けられたミカるんも恥ずかしがりながらも満更ではなさそだ。


「なんていうことだ・・・」


 寒さにより体を震えさせながらもなんとか耐え抜いた村長が、周りの惨状に地面を這いながら言葉を失う。


 村は氷に包まれ、村人たちも凍らされた。破損していない以上まだ壊滅とは言えないかもしれないがそれでもこの規模だ。それにミカにもまだ余力がありそうである。


 まさに魔女による災害


 それを見てもうかかわってこないと思ったミカはエイタ達を促しこの場を立ち去ろうとする。


「流石に今更だけどいいのか?」


「いいんだよ。というより今の術って結構見せかけだからさ、直ぐ解けちゃうんだよね。早めに立ち去らないとハッタリってバレるかも。」


「まじか。じゃあさっさとずらかるとしますか」


 急いで荷物をまとめていく。せっかくたどり着いた村ではあるがミカの心が決まっているならこれ以上いる必要もないだろう。


「ミ、ミカ。待っておくれよ・・・」


 バタバタと急いで出発しようとしている所に村長さんの消え入りそうな声が聞こえてきた。


 先ほどまでの高圧的なのとは違い弱弱しいその声にミカの足が思わず止まる。


 寒さに震えながら、それでもミカに手を伸ばす村長。

今思えばあの人は執拗にミカを村に入れようとしていた。それにこれだけの事をされておいてまだミカに手を伸ばしている。一体なぜなのか。

 ミカも同じことを疑問に思ったのか村長を見つめていた。


「しょうおばあちゃん。私はもう魔女になったんだよ。魔女っ子ミカるんなんだよ。なのにまだ私を村に入れたいの?」


「ぶふっ」


 おっといけないいけない。つい吹いてしまった。今はシリアス場面なのだ。ミカにジト目で見られてしまう。

でもしょうがないじゃん?だって魔女っ子ミカるんだよ?


「う、占いが・・・このままじゃ村が・・・」


「「占い???」」


 占い。はてなんのことだろうか。いや意味自体は知ってるんだけどね。どうして今占いの話をしだしたのかがわからない。このおばあさんはスピリチュアルな感じの人なのかな?


 しかしそれを聞いて一番に反応したのはミカのお父さんだった。


「なんだとっ?!占いが出たのか?!ばあさん!なんて出たんだ?!」


 少しずつ溶け始めている村人たちも会話を聞こえていたのか、みな村長の元へと寄り占いの結果を聞こうとしている。


「桐島さんの村の人たちみんなスピってんじゃん」


「ちょっと変な言い方やめてよ!私はスピってないからね!というよりエイタ君はそろそろこの世界に慣れた方がいいよ。普通に考えたら眼から炎出す人の方が異常だからね?君やくーねたんちゃんに比べたら占いしてるおばあちゃんの方がよっぽど現実感あるから。」


 言われてみればそうだった。いつまでも旧世界の常識に囚われていた。


「ぐうの音も出ないんだが。となると村長さんは占いで何かを知ったから桐島さんを村に入れようとしているのか。」


「察するにそんな感じだよね・・・やだな~。誰かに求められて一人だけ連れていかれるのとか若干トラウマなんだけど。」


「だろうね。」


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