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33 進む道

 ぽかーーーーーーん。


 村の人たちも、両親も、村長さんも、思ったことはみな同じだった。


 すなわち「この娘、なにいってるん?」である。


 それはそうだろう。なんたって生きているかどうかも分からない状態から二年ぶりの感動の再開をしたばかりなのである。なのにもう出ると言っているのだ。大型連休で久々に帰ってきた人でももっと話していくだろう。


「ミカ、何を言っているんだ?帰ってきたんじゃなかったのか?」


「うん、帰ってきたよ。お父さん達が生きてて本当に嬉しいし、よかったって思ってる。」


「ならっ」


「でもね、私は仲間と離れたくない。二人と一緒にいたいの。」


「み”みかぁ~~」


 感極まってなきだすくーねを横目に見ながらこっそりとミカに話しかける。


「お前、そんなこと言って本当にいいのか。せっかく親御さんと合えたってのに。」


「別にいいよ。エイタ君たちを敵に見てるような村だし?絶対住み心地も悪いって。そもそも住む気もないし。」


 確かに排他的なところはあるかもしれないが、まあまあ良くあることではなかろうか?そう思っているとミカは「それに、」と続けた。


「それに、エイタ君に矢を撃ったこと私まだ許してないから!」


「あっ、覚えてたんだそれ。」


「はうぅ」


「当り前じゃん!あれは故意の攻撃だった。いつまたエイタ君が襲われるか分かったんもんじゃないよ!」


 ミカがプンスカと怒りながら言う。

俺はくーねが思わぬところで反応をしたことに怪しみながらミカをなだめる。


「ま、まあまあ。あれは見たことない魔獣と間違えたらしいしさ。くーねのお陰で何ともなかったんだからいいじゃないか。な、くーね。後で知ってる事話してもらうぞ。」


「ひゃっ!ちょっと何のことかわかんないかもわかんない。」


 隠すの下手すぎかよ。絶対なんか知ってるじゃん。


「う~~、確かにあれは事故っていうか、こっちに問題があったかもしれないかな。。。」


 くーねの反応を見てミカもそれに気づいたみたいだ。


「ま、でも桐島さんがそれでいいなら俺たちに異論はねぇよ。じゃあとりあえず行くか~。完全に暮れる前に拠点建てたいし。」


「うん!今日のご飯は何にしようかな~」


「あばばば、また怒られる。やだ。怒られるのやだ!」


 三者三様なことを言いながらも俺たちは元来た道を引き返し始める。

というかくーねよ。お前はまた怒られるようなことをしたのか。。。


「ま、待ってくれ!ミカ!」


 と、まあそうはいかないよね。

ミカのお父さんが焦った様子で呼び止めてくる。その後ろには当然母親もおり、村長さんたちも状況を飲み込めてない様子。


「なに、お父さん。あっ、元気でねだけじゃ足りなかった?大丈夫だよ。私も元気でやるから」


 それに対してミカの方は若干冷たい感じで接している。


「っ、、、違う!そうじゃない!行かないでくれ!やっと会えたのに。」


「それはごめんって思ってる。私だって話したい事いっぱいあるもん。でもね、二人が村に入れないなら私も入るつもりはないし、別に無理に入れさせようとしなくても大丈夫だよ。外でも私達は生きていけるから。それだけの力を私はもっているつもり。」


「ミカ・・・」


 娘と一緒にいたい。でも村の掟にも従わなければならない。そして娘は自分と一緒にいることを強く望んでいるわけではない。

 親だからこそわかるのであろう。ミカの気持ちが本心だということに。

だからこそ、


「あなた。。。」


 ミカのお母さんが肩に手を乗せる。夫婦同士なにかを感じ取っている感じがする。


「ミカ。先ほど変わっていないといったがあれは間違えだったな。お前は十分変わっていた。おとなに・・・なったなぁ」


 肩を震わせながら涙を浮かべている。


「お前がどんな道を選んだのか。それは私達にはわからない。でも、もう決めたんだな?なら、」


ミカの父親が涙ながら言葉を投げかけている。誰が見てもお別れムードだった。実際俺もミカも、集団の人たちもみなそれを察して見守っている。少人数を除いて。


「ちょ、ちょっと待ちな!どういうことだい!ミカ、お前なに出ていこうとしてるんだ!」


 ようやく状況に理解が追いついてきたのであろう村長さんが声を荒げ食って掛かってきた。


「しょうおばあちゃん。それは間違いだよ。私は出ていくんじゃない。入らないの。だって私は部外者だから。」


「なにを言う!ミカは桐島の娘。この村の人間じゃないか!」


「うん。そうかもね。でも私は部外者であるエイタ君たちの仲間でもあるんだよ。どっちかを取るなら私はこっちを取る。」


「な・・・それじゃあ村には・・・」


「入らない。」


 なぜか苦い顔をしている村長さんはそれでも食い下がる。


「そんなにその男がいいのか?村にも優秀な男はいっぱいいるぞ?そんな軟弱そうでパッとしないのと一緒にいるよりよっぽど幸せに・・・」


 村長が言いかけた時だった。ブオンッと何かが村長の真横を通過する。


 通り過ぎていった不可視の存在はそのまま村の防壁に激突し、ズタズタに切り傷を刻み込んだ。

 村長の顔にも薄く、一筋の線がうかんでいる。


「これ以上喋るなら、次は当てるよ?しょうおばあちゃん。」


 ミカはいつの間にか手に取っていた扇子を村長へと向ける。


「い、今のは・・・ミカ、なにを・・・」


「なにって、仲間が貶されてるのに黙ってるわけないでしょ?」


「な、仲間仲間とさっきから!目を覚ましなさい!いつまでもそんな遊んでいられるほどこの世界は優しくないんだよ!わかったらさっさとその魔女共から・・・」


 ズバッーーー


 ミカが扇子を振った。術師の才によって鋭く研ぎ澄まされた風が、刃となりて村長の腕を切り裂く。

 それでも本気で当てに行ったわけではないのか腕は軽く血が流れている程度である。


「・・・っ?!」


「ちょ、桐島さん。」


「エイタ君はちょっとだまってて。」


「あ、はい。」


 この子いつの間にこんな容赦なくなっちゃった?さっきまで「しょうおばあちゃん!」って言ってたよね。やっぱ東間の件でいろいろふっきれたのだろうか。先手必勝すぎるでしょ。


 それでもまあ、パッとしない俺はまだしも(よくない)くーねを魔女呼ばわりか、これには俺もイラっと来た。てか最近よく聞く単語だが一体どういう意味なんだか。


 ちらっとくーねを見ると、こんな一触即発みたいな状況にも関わらず手に顎を乗せてブツブツをなにかを考えている。少し耳を傾けてみると「どうすればあまり怒られないか」を考えてるらしい。全くこいつは・・・


「言ったよね。次は当てるって。知ってるよ。この世界が優しくないことなんて。実際なんども死にかけてきたもん。でもね、そんな時に私を助けてくれたのはいつだって二人だった。」


「そ、そんな魔女共を信じるのか?!よく見ろ!そいつらは異常だ!私にはわかる!そいつらは人間の皮を被っただけの化け物だぞ!」


 ドスンッ!


 今度は村長が後ろに飛んだ。恐らく風をぶつけたのだろう。一メートルほどだが老体には堪えそうだ。


「ぐっ、うぬぬぬ・・・・」


「村長!」


「ババ様!」


 ここにきてようやく集団の人たちが村長の周りに集まり始める。

みな突然吹っ飛んだ村長に驚いた様子だ。


「信じるよ。私は二人を信じる。おばあちゃんの言うような魔女が何かは知らない。でも、たとえくーねたんちゃんが悪い意味での魔女だったとしても私はこっちに付くよ。

そして私も魔女になる。」


「ミカ!なんてことを言うんだ!あんたは魔女の恐ろしさをなにもしらないからそんなことを言うんだよ!あいつらは平気で村を壊滅させるような奴らだ!人間とは違う化け物なんだよ!」


 村を壊滅させる。か。確かにそんなことしてくるなら化け物と呼ばれても仕方ないだろうな。対抗する力がなければ一方的に蹂躙されてしまうだろう。でもくーねならそんくらい余裕で出来そうだよな。

学校で放っていた攻撃は村どころの規模じゃないだろうし。


 あえてそんなことをくーねがするはずないが、その力を持っているという意味では魔女の分類に当てはまることもありそう。


 そんな事を思っていると一人の女性が前に出てきた。ミカのお母さんだ。


「ミカ、あなたは、あなたの信じた道を進みなさい」


 それだけ言うと微笑み、父の元へと戻っていく。


 たった一言。しかしミカはしっかりとその意味を理解したようで、すこし笑っている。


 この笑みは何度か見たことがあった。これはそう、覚悟が決まった時にでる笑いだ。

 嫌な予感しかしない。


「っぷ、あはははは!そう!そうなんだ。魔女って”その程度”なんだ。それなら私でもなれそうだね。うん。よかった。決めたよ。私も魔女になろう!」


「は、なにをいって・・・そんな魔女になんてなれるわけ・・・」


 いきなり突拍子もないことを言い始めたミカに村長が、村の人たちが困惑する。唯一お母さんだけはちょっと笑ってるけど。やっぱり親子だわ。


「?  村を壊滅させれば魔女なんでしょ。なら私は今日ここで魔女になる!こんな村、いらないでしょ?」


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