30 山中の村 1
「ゆうさくおじさん?!」
ミカが二人の前に飛び出す。
急に飛び出してきたミカに驚いた二人は武器を構えるが、攻撃することはなく、次第に口をパクパクと開け始めた。
「お、おめぇ、まさかミカか?!お、おおおお!やっぱりミカだ!大きくなったなあ。ん?あんま変わってねえか?まあいい!今まで家にも帰らずどこほっつき歩いてたんだ?!」
クロスボウを持った人、裕作が驚きを露わにミカに近づいていく。
「あはは~。えーと、祐作おじさんこそ生きててよかったよ。」
「ミカ?ミカってまさか桐島さんちの子の事か?おお!なんてこった!帰ってきたのか!こりゃご両親もすごく喜ぶぞ!」
鉈を持っている人もミカの両親の事を知っているのか興奮を露わにする。
ミカは何をしていたのかは詳しく言えないので、と言うか何もなさすぎて言えないので頬を掻いてごまかしている。
「あの、お父さんたちを知っているんですか?」
「知ってるもなにも桐島さんは村の為にいろんな知識を教えてくれる凄い人だ!あの人のおかげで村は今でもある程度の生活を維持できているんだから!」
「そうなんだ、よかった・・・それじゃお父さんも生きてるんだね。」
「もちろん生きてるよ!お母さんもね。こうしちゃいられない!早く村に戻って桐島さんに報告しなくては!さあ行こう!」
祐作達が村の方へ戻ろうとミカを促すが、微妙な顔をしたミカはその場から動くことはなく祐作達は疑問を浮かべていた。
「ミカ、どうしたんだ?早く村へ・・・」
「あの!実は私ひとりじゃなくて、みんな!もう大丈夫だから出て来ていいよ。」
「ん?あぁ、考えてみりゃそうか、ミカ一人でここまで来られるわけないもんな。誰か大人が・・・」
そこまで言って祐作が固まる。鉈を持った人も。
出てきた俺とくーねの二人を見て言葉を失ったようだ。
「紹介するね。同じ学校のエイタ君と、いせっ、じゃない。えーっとアイドルのくーねたんちゃん。」
「どうも。エイタです。」
ミカに紹介された俺は手短に挨拶する。どうせこの後長くなるだろうし。
ちらっとくーねを見るとごそごそとポッケを漁っていた。何か出そうとしてる事からまたあれをやるんだろうな。ミカもミカで扇子取り出しているし演出する気満々だ。とりあえず一歩下がっておこう。
「アイ・・・ドル?あぁお友達かい?えーっと二人だけ?ほかに大人の方は・・・」
祐作がなにかを言おうとしたがそれは急に鳴り出した謎の音楽によって遮られてしまう。
いきなりなり出した音楽に二人はビクつく!
一歩前に出たくーねはブレスレットのような輪っかを取り出すとそれを頭上に放り投げキメポーズッ!ポスンッとスポットライトに照らされ、謎の空間さんは今日も元気に謎めいている!
ぶわっと風が吹くことによってツインテールがなびくなびく!
片足で回転したくーねは指をてっぽうの形にすると打ち抜くような動作をして叫ぶ。
「くるくるハートでヘッドショット!隕石アイドル!くーねたん!!」
例の如く「ですっ!」と占めることで背後がドーーーン!と爆発した。
あっぶね。巻き込まれそうだった。
というかやっぱり前口上違うよね?あと隕石アイドルってなんだよ。適当じゃねえか。
ぽかーーーーーん
うんうんそうだよね分かるよ。
何度も見ている俺ですらよくわかんないんだもん。初見だともう理解不能だよね。
基本キメポーズを取った後は相手からの反応があるまでピタッと止まるくーねである。
無言の空間でぺかぺかと光るライトとふんわり通り過ぎる風がシュールさを加速させていく。
だが俺はもうつっこまないぞ!この前突っ込んだ後からくーねがぐちぐち文句いってきているのだ。あれは普通に怖い。
「わん!わんわふー」
ポニーも犬なりに挨拶をする。
数十秒ほど固まっていた二人だがポニーの鳴き声によって漸く我に返った。
「はっ、今のは一体・・・」
「夢か、俺は今夢を見ていたのか?」
「夢じゃないよ!あなたの目の前にいるのは本物のくーねたんです!よかったね!」
なにがよかったんだよ。
ダメだ、このままじゃ先に進めなそう。名乗りも終わっただろうしそろそろ話しを進めよう。
「えーっと、いいですか?俺たちは三人と一匹で全員です。それでもうすぐ日も暮れそうですし話はその村?に行ってからがいいのですが。」
「あ、ああそうだな。そうか、そうだな。うん。いこう。この近くにバケモンがいるかもしれないからな。すぐにいこう。案内するよ。」
そう言って祐作が歩き出した。
(この近くに化け物?まさかさっき言っていた”白い獣”とかか?いやでもあの矢は確実に俺を狙っていたよな・・・”魔女”とか”アレ”とかも言ってたし気になるワードが多すぎる。なんもわかんねえ。まあいいや。取り合えず今は桐島さんを家に届けることだけ考えよう・・・)
まったく理解出来ていない祐作さんたちに案内され俺たちは村へと向かうのであった。




