29 矢を掴む獣がいたんだよ!
「あっさだよ~~~~!!!」
ゆっさゆっさと体を激しく揺さぶられたことで強制的に目を覚まされる。
「うぁ~、あと、十分、、いや五分だけでも・・・」
「ダメ~~!!ゾンビの真似するなら頭にジオ・スパイラル打ち込むよ?
大丈夫!エイタ君ならきっと数日でキズも塞がるよ。」
ねえそれドリル状の岩の奴だよね?やめて、エイタ死んじゃう!
まだ頭に穴は開けたくなかったので、仕方なく起き上がると、ミカは次の標的の元へと行ってしまった。
ピューーンって擬音が聞こえてきそうだ。
凝り固まった体を解しながら焚火の元へと移動すると地面になにか絵が描いてあるのが見えた。
くーねとポニーが戯れている絵が地面に描かれていた。それもかなりクオリティが高い。恐らくミカが見張り番をしている時に暇で描いたのだろうが、凄いな。こんな特技があったとは。
遠くでミカがくーねを起こす声を聞きながら朝の支度を進めていく。
あれでいてくーねは寝起きが悪いからな。ミカの脅しだって実行してもくーねは何食わぬ顔で防ぎそうだし。強敵だな。
ご飯で釣ればすぐ起きそうな気もするが、流石にそこまで単純ではないか?
そんなことを思っていたら漸くミカに引きつられてくーねが起きてきた。
「うみゅ~、ミカ。怖い。」
「んもー!くーねたんちゃんが起きないからだよ!」
くーねが怖がるって一体どんな起こし方したんだ。いや俺の時も十分怖かったけど。
しかしこれでやっと出発の準備が始められそうだ。
「やっぱ水系の心核欲しいよねぇ」
道中の川で汲んできていた水でパシャパシャと顔を洗うくーねを見ながらミカが呟く。
「確かに水の入手が楽になればいろいろ助かるけど、手に入れば桐島さんも水出せるようなるの?」
「んーどうだろ。土と風はかなり自由に使える様になったけど。結局心核がなきゃ強い詠唱と大量の核力が必要になっちゃうし。」
「属性にも得意不得意はあるからね。私が光を得意なように!こればっかりは実際に持ってみないと分からないかな。でも普通得意な属性って一つだけだからミカは凄いよ?現状二つの属性を難なく扱えてるんだし。」
タオルで顔を拭きながらそう褒めるくーね。褒められたミカは「うへ、えへへ」と喜んでいる。
「基本一つ、ってことは俺はやっぱり炎が得意なのかな?」
「やっぱりって言うかエイタ君はそれしかないじゃん。」
自分でもわかってるんだからハッキリ言わないでくれ!
そんなこんなで朝の支度を終えたエイタ達は今度は山を下り始める。
「下りだし、道があるから楽だね。」
「流石に道なき道を下りたくはなかったから助かるよ。それでも草やばいけど。」
「二年も誰も通らなかったらこんなもんじゃない?エイタ君いなかったら通りたくはないけどね。」
エイタを先頭に草を掻き分けながら進んでいく。こういう時延焼しない炎は便利だよな。
そんなこんなで滞りなく下山する。
「おっしゃー!おーりたーー!!」
途中何度か魔獣にも襲われたがどれもそこまで強くなく、なんなく対処できたエイタ達はたった半日ほどで山を降りていた。
「懐かしいな~ここよく通ってた道だよ~!」
いよいよ家が近くなってきたミカがあっちこっちと視線を泳がせる。
ぐおおおおおおおおお~
「ふおっ?!」
「またか・・・」
どこか遠くの方から謎の鳴き声が聞こえてくる。
あれは一度や二度ではなく、今日山を降りているときも何度も聞いた鳴き声だ。
分かっているのは恐らく魔獣の鳴き声であることと、遠くから聞こえてくることくらいなのでとりあえずは無視する方向で進んでいた。
「あの鳴き声、結局なんだったんだろうね。」
「わからん。ま、これから町なんだし気にしなくてもいいだろ。」
「エイタ君・・・またそんなこと言って・・・」
「え?!俺なんか悪いこと言ったか?!」
「もー二人してなに話してるの?山降りたんだし魔獣の声も気にしなくていいんだから!早く行こうよ!」
山の動物に遭遇しなくて良くなったくーねがぴょんぴょん飛びながら進んでいく。
「元気だなぁ」
ミカの案内の元数時間。あとほんの少しで目的地に着きそうって時だった。
「エイタ。危ない」
「え?」
後ろでもぞもぞとなにかしながら歩いていたくーねに首根っこを掴まれて強制停止する。
しかし疑問は浮かばなかった。一寸先目の前には矢が制止していたから。
「・・・っ!!」
最近良く感じるが、今のは一際やばい。くーねが矢を止めていなければ確実に死んでいた自信がある。
「エイタ君!」
一瞬遅れてミカも反応する。
「俺は大丈夫、それより建物に隠れて警戒を!」
くーねから解放された俺はすぐに戦闘状態になり身を隠す。くーねとミカも各々で隠れて矢が飛んできたであろう方角に注意を向ける。が、次の攻撃がやってくることはなかった。
無暗に動けないまま数分が経過したころ、複数の足音が聞こえてくる。
咄嗟に目配せをしたエイタ達は陰に隠れやってきた人物を監視することにした。
「ほんとにいたのか?見間違いじゃねえの?」
「いや確かにいた。それも矢を素手で受け止めれるやつが。魔獣だ。間違いねえ。」
やってきた人数は二人。一人は鉈を持った人で、もう一人はクロスボウを構えている。会話の内容からしてもこの人が矢を撃った人物だろう。
「最近”アレ”の活動も活発だしよ、あんま外には出たくねえんだが。」
鉈を持った人はしきりに周囲を警戒し、怯えているように見える。大してクロスボウの方は殺気を放ちピリピリとしていた。
「ふん、ビビってんじゃねえよ。俺たちが魔獣を倒して村を守るんだろ。」
「それはそうだけどよ。ほんとに人型魔獣だったのか?流れ人じゃなくて?」
鉈の人が問うとクロスボウの人が立ち止まり、冷や汗をかきながら腕を擦る。
「白い獣だ、あんなバケモンみたいなやつが、普通の人なわけがねぇ。」
「そ、そうか、悪かったな。」
(会話からして俺たちを化け物だと思って撃ったってことか?見間違いにもほどがあるだろ)
さてこれからどうしたもんかと思っているとき、ミカが物陰から飛び出すのが見えた。
危ないって!しかし制止する前にミカが名前を呼んだ。
「ゆうさくおじさん?!」
あっ、お知り合いでしたか。




